第一二話 せっかくいい雰囲気になったのに……
今回は短くなってしまいました。すいません。
メイドが去った伯爵邸の中庭は、雲一つない青空に咲き誇る真っ赤なバラのコントラストが現実離れした美しさを醸し出している。
ここが便所の汲み取り口だと言うことを除けば、まるでアリーと二人だけの美しい空間にいるようだ。
俺は一仕事終えた充実感に包まれ、アリーのそばへ自然と寄りそう。
もちろん、メイドが持ち去った忘れるべき大量の尻拭き布については意識の外へと排出するのも忘れない。
「アリー、なんだか二人だけの秘密の花園みたいだね」
「ふふ、コーター、突然どうしたの」
「何かふと寄り添いたくなるときってないかい。
一仕事終えたし、ちょっとバラを見ながら休憩しないかい」
「そうね……
後は回収したものを役場に持ち込めばこの依頼は完了ね。
まだ、お昼を少し廻ったところだけど、午後はどうする」
アリーはそう言いながら、バラ園の端においてあるベンチへと移動し腰掛ける。
俺もアリーの隣に座りながら話しかける。
「また、薬草採集にでも出かけようか。
よく晴れているから、街の外も気持ちいいと思うよ」
「そうね、それもいいわね」
何となくいい雰囲気だ。
俺は隣に座っているアリーの左手を取ろうと右手を伸ばす。
と……
そこで、脳内にあのアナウンスが響いた。
「スキル『うんこ』がレベルアップしました。
スキル『うんこ』はレベル4からレベル5になります。
スキル『うんこ操作』がレベルアップしました。
スキル『うんこ操作』はレベル3からレベル4になります。
スキル『うんこ変化』が派生しました」
「うそだろ……
このタイミングでレベルアップだと……
しかも新しい派生スキルまで……」
俺は嫌な予感を感じながらも、新しいスキルを確認する。
スキル『うんこ変化』レベル0
自分の周囲1メートルまでのうんこを変化させることができる。
レベル0では『硬いうんこ』『普通のうんこ』『やわらかいうんこ』の三つに変化させることがでる。
何なんだこのスキルは……
「うんこの硬さを三段階で変えることができるとか……、いったい誰得なんだ……」
俺は思わず呟く。
全く意味がわからない。
何の役に立つのかさえもわからない。と言うか、絶対ネタだろこのスキル……
神は一体、俺に何をさせようと言うのか……
俺は知らず知らすのうちにベンチからふらふらと立ち上がってしまう。
「大丈夫?
コーター」
俺を心配したアリーが声をかけてくれるが俺は反応できなかった。
伯爵邸の庭には俺の心情など全く関係ないとばかりに大輪の赤バラが咲き誇っている。
その花はあくまでも優雅で、豪華で、気高い……
俺の沈みきった心を逆なでするがごとく、その美しさを誇示しているバラの花……
こんなにも理不尽な状態にもかかわらず、何故にバラはあんなにも美しいのか……
「真っ赤なバラの…………
ばっかやろーーーーーーーー!!!!」
俺は思わず人気のほとんどない伯爵邸の庭で赤バラに向かって絶叫していた。
ふと横から華奢な腕に抱きしめられる。
「大丈夫よ、コーター
何があっても私がそばにいるから」
俺は横に立つアリーの存在に救われた気分になり、やっと正気に返る。
頬にはいつの間にか涙が伝っており、アリーは自分のハンカチで優しく拭いてくれた。
あれ……。
アリー、こんな模様のハンカチ持っていたかな。
俺はぼんやりと考えていたが、突然何か考えがつながったような気になりハッとする。
そう、このハンカチは、決して、先ほど回収したトイレの尻拭き布ではない……、と信じたい……
俺は気持ちを切り替え、役場に荷車を運ぶことにした。
リアルの仕事が多忙に付き、更新が滞る可能性があります。
ご容赦ください。