第61話/隠す可愛さもあるのだよ!
人間は15メートルくらいの高さが一番怖さをリアルに感じるらしいです。
無属性スキルの〈浮遊〉が過積載によりまさかの落下となったわけだが、オレ様はもちろんだがマルメル姉妹やリリベルちゃんも怪我をすることはなかった。
三人娘の悲鳴をBGMに、まあ一時的にとはいえ浮いたんだしもうちょっと落ちてからまた〈浮遊〉をかければ大丈夫っしょ、なんて思っていたら淡く光る緑色の風に身体が包まれて落下が止まり、宙にふわふわ浮きはじめた。
「なにやってんですか、まったくもう……」
声のする方に顔を向けると、そこにいたのは傍らに魔法の光を浮かべてこちらに歩いてくるギルド長こと、同じ転生者であり友人のエルフのエルモ。
どうやら落下が止まったのはエルモの魔法のおかげっぽい。
しかし魔法の光に照らされた顔は不機嫌を浮かべていたりする。
それにしても寝巻きなのか薄いピンクの膝上ワンピースにギルドの制服の上着を織ってるだけだなんて、なんというエロ可愛さだろうか。
ワンピースの胸元を盛り上げてる二つのスイカが作る谷間がさらに暴力的。
「助かったよエルモ。エロくて」
「どんなお礼の仕方ですか!?」
いや、その格好をみていたらつい正直が口をついて。
「誰かさんのせいで緊急事態だって寝ているとこを叩き起こされて、このまま来るしかなかったんですよ!」
「叩き起こした人グッジョブ!」
「張り倒しますよ!?」
からかったらエルモが頬を赤くさせて胸元を上着で隠してしまった。
ちぃ、やりすぎたか。
「それより早く従魔を送還してください。地面に下ろしますから」
「はいよ」
パチンと指を鳴らして未だ気絶している黒雷孔雀を送還して消すと、ふわふわ浮いていた身体がゆっくりと下がっていき静かに地面に着地する。
魔法の風がなくなったと思ったら、それと同時にオレ様の身体から重みが消えてドサドサドサと地面に倒れ伏す三人娘さん達!?
「え、なに!? どうしたどうした!?」
慌てて振り返ると、三人とも白目を剥いて気絶していたという。
うん、しかも涙や鼻水なんかもでちゃってちょっと乙女として人に見せられない顔になってたりする。
オレ様はそんな三人娘に向かってそっと両手を合わせ、
「三人のことは忘れない。ずっとオレ様の心で行き続けるから……あいたっ」
「ただ気絶してるだけなんですから、勝手にお亡くなりにしないでくださいよ!」
三人とも無事だったのでつい遊んでみたら、ぺしんとエルモに頭を叩かれた。
「この子達のことはこちらで介抱しますから。とにかくこんな時間にあんな帰り方してきたからにはなにかあったんですよね?」
そう言ってエルモが手を叩くと、どこからともなく現れた金髪碧眼の三人のメイド姿のエルフ少女達。
エルフ少女達はオレ様に片足を引いてスカートを少し摘まんだカテーシー? とかいう挨拶をして絶賛気絶中の三人娘をそれぞれがお姫様抱っこにて軽々と持ち上げると、楚々と頭を下げ、
『それではエルモ姫先生、お連れの方、失礼いたします』
と、一礼してさっさと街の方へと消えて去ってしまった。
……え、いや、なにいまの? つか姫先生ていったい?
「……では歩きながらで構いませんので、ギルドへ戻る道すがら話を聞かせてもらえますか?」
と、街へ歩き出すエルモなんだけど振り返ったその顔に、聞かれたくない言葉を聞かれてしまった、という羞恥っぽい表情と、やめてキカナイデ、という雰囲気を滲ませていたのを見逃すオレ様ではない。
だがまあここは空気を読んで聞いたりせず、オレ様はエルモの隣を並んで歩きつつ今まであったことを話す。
「――――というわけで、妙なダンジョン喰らいだったわけだ、姫先生」
「ぐっ……そ、それは、悠長にしてる暇はありませんね。詳しくはあとで話しますが、そのダンジョン喰らいは普通じゃない上に厄介ですから。
このままギルドへは寄らずに領主様の館へ直行しましょう、ええすぐに向かいましょうとも」
二の句を告げさせない勢いでエルモの歩みが早くなっていく。
ははは、しかしオレ様からは逃げられない。
「それにしてもさっきのエルフ娘達は可愛い子達ばっかりだったな姫先生」
「しかもロングスカートの純正メイド服かと思いきや、スリットが入ってるとは意外だったよ姫先生」
「ところでここの領主様ってどんな人なんだ姫先生?」
などとオレ様が話していると、エルモがガックリと肩を落として、
「わかりましたから教えますからお願いですから往来でその呼び名はやめてくださいませんか……!?」
と、ついに心が折れて、もとい快く話してくれる気になったらしい。
「おい聞いたか? あのギルド長が姫とか呼ばれてたぞ?」
「いやまさか、ギルド長は姫っていうよりむしろ女王様だろう。ムチ的な意味で」
「だよなぁ」
そしてこちらをチラみしながらひそひそ話す冒険者達からのまさかの追撃。
それを耳にしたエルモがさらに肩を落として「あぁ、やっぱり私ってそんなイメージなんだ……。確かに出来るクール美人に憧れてキャラ作ったけどさ、でもさ、私だって可愛げの一つや二つあったりなかったり――――」なんてネガティブキャンペーンをはじめてしまった。
さすがにちょっぴりかわいそうだと思ったので、その肩に優しく手を置いて爽やかな笑顔でサムズアップし、
「どんまい☆」
「誰のせいだと思ってんですかバカー!!」
元気付けたら怒られてもーた。てへ☆
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不機嫌になってしまったエルモを宥めつつ、街の通りを抜け広場を過ぎてしばらく歩いていると、街の住居とは違ったどこか学校を思わせるような武骨な建物が並ぶ通りへ出た。
通りには等間隔に街灯が並び、その下で時たますれ違う姿は冒険者とは違って装備が統一されているものばかり。
あ、なんか見覚えあると思ったら門番のモイルのおっちゃんの装備と一緒だし。
てことは、多分この街の兵士ってとこでここは兵舎みたいなとこか。
ついでに言うとすれ違う人みんながエルモのミニワンピに生足という姿に、顔を赤くしたり手を合わせて拝んだり鼻から出血サービスでぶっ倒れたりとすごい人気っぷりである。
「ここでスカートめくりとかしたら全員死ぬんじゃなかろーか?」
「あははは。その時は一番最初がアビちゃん先輩ですからね?」
「ヤダナー。ジョウダンデスヨー?」
やだこの子。笑いながら目がマジだよ。
とりあえず今度お高いお菓子を御馳走するということでエルモの不機嫌を収めた頃、今までの飾り気のない兵舎とは違いお金持ちが住んでそうな三階建てのお屋敷みたいな建物の前でエルモが足を止めた。
「ここが領主館です。今から領主様にお会いしますけど、なにがあっても寛大な心でお願いしますね?」
お? それはあれか? もしかして貴族以外は見下したり高圧的なパターンなやつ?
「まっかせなさーい。大抵の嫌味や嫌がらせなんぞ軽くいなしてみせるわ」
「だといいんですけどね……」
なぜかため息なエルモが建物の門番に話しかけると、すぐに門は開かれ中へと入ることができた。
もし嫌味なんか言ってきたらどんな揚げ足を取ってやろうかなんて考えつつ、オレ様はエルモの後ろをついていくのだった。
体験談。20メートル上からロープ降下したことありますが、シューッとか言ってるロープの音と迫ってくる地面が嫌に怖かった。




