第31話/鍛冶屋とエルフと錬成と。
ふふふ。ここでまた進行が遅くなる予感!!
町の中央にある広場から西にある職人通りと呼ばれる区画にある一軒の店。
剣の意匠が施された看板を掲げるレンガ造りの店の中でオレ様は今、壁に飾られた高そうな剣や槍、金属で出来た棚に置かれている大小のナイフ等を見て回っている。
マルガリーゼがサンドイッチを食べ終えた後、ギルドを出てまず姉妹の用があるという武器屋へと来ているのだ。
どうやら昨日のキマイラとの戦闘中、二人の武器が破損してしまったらしい。
それにしても意外だったのがこの店の主人。
ラノベやゲームならまず人間かドワーフなんてのが定番なのだが、ここはなんと妙齢のお姉さんだが幼く見えるたれ目のギャップが愛らしい、スレンダーなエルフの女性が営んでいた。
姉妹から聞いた話だとココレアさんという名前で、エルフにしては珍しく刀剣の類に目がなく、そんな趣味が乗じて職人にまでなってしまったらしい。
そんなココレアさんは姉妹から武器の破損の話を聞くと、二人を連れて店の奥へと引っ込んでしまっている。
なもんでただいまオレ様、絶賛ぼっちなう。
暇なので無属性スキルの<鑑定>をしながら店の商品を見て回ってる次第である。
しかしここの店の商品、<鑑定>によりわかったのだがどれも低い数値のものの魔法による強化がされている。
ゲームなら強化ができるのは最低でもCグレードからが基本だったが、ここはEグレードからでも<強化+1>が付与されている。
「あらあらぁ、気に入った物でも見つかりましたか?」
おっとしりした声がした方に振り向けば、奥の部屋から淡い緑のワンピースを着たココレアさんとどこかどよーんとした暗い空気を纏わせた姉妹が歩いてきていた。
「いやどったの、二人共」
「それがねぇアビゲイルちゃん。奥で二人の武器を見繕ってみたんだけど、どうにも手持ちの予算じゃ足りないみたいなのよねぇ」
「そりゃまたなんで?」
話を聞くと、マルガリーゼはキマイラに最終手段で杖を触媒にした爆発魔法を使用して全損しており、新しい杖を購入するには半分程足りない。
一方メルナリーゼもキマイラに武器を粉砕されており新しく購入するのだが、二刀流らしく一本は買えるのだが二本目のお金が半分足りない。
そして二人の金額を片方に当てればどちらかの武器は購入はできるものの、もう片方は武器なしという事態に陥る。
だからと言って安くてグレードの低い物を選べば、威力が足りなかったり切れ味等が鈍かったりしていざという時に支障をきたす可能性があるので買えないという。
ちなみにココレアさんの店ではニコニコ現金払いで分割やツケはなしなのだそうな。
「じゃあ、オレ様が――――」
「ストップ、アビゲイル! あなたの言いたいことは分かるけど、助けてもらったあげくに援助までしてもらうのは、なんか駄目だと思うの……。
だから、ごめんなさい」
立て替えようかと言いだす前に、マルガリーゼから止められ断られてしまった。
「すみませんアビゲイルさん。申し出はありがたいのですが、姉さまの言う通りなので私達でなんとかしようと思います」
二人共まじめか。でもそういうの嫌いじゃない。
とは言うものの二人の決意は固そうだし、ここで強く出て二人からの心象を悪くしてしまうのは御免だ。
もしそうなったらマジで落ち込む自信があるしな!
ううむ。しかしどうしようか。なにか使える手はないもんかな……。
姉妹がココレアさんと相談している中、どうしたもんかと考えながら店の商品を見ていると、店の端で投げ売りのように「どれでも一万ゴール」と書かれた札が下がる樽に入っている数本の剣や杖が目についた。
「ねえココレアさん。あそこの樽にある剣とかってどういうの?」
「ああ、あれはねぇ。色々わけありの武器なのよぉ。あ、わけありって言っても呪いとかじゃないわよぉ?
私のちょっとした失敗作や、買い替えの時に下取りした物とか、引退した冒険者がお古を寄付してくれたのとかねぇ。
ただどれも修理や修繕が必要だし、そこまで手が回らないからジャンク品として捨て値で置いてるだけの物よぉ」
もちろん修理を頼まれれば有料で引き受けるわよぉ、と商魂たくましいココレアさん。
なるほど、どおりでどれもここにある同じグレードの値段よりも安いわけだ。
…………よし。じゃあ、アレやってみるか。お金を貸すより抵抗は少ないはず。
「んー、二人共。上手くいったら武器が手に入る提案があるんだけど?」
「お、お金は借りないわよ?」
「大丈夫大丈夫。そんなんじゃないから」
「それでは一体どうするんですか?」
おし。二人共お金を借りないという事で乗ってきてくれた。
「ではまず、二人共この樽の中にある武器で自分が使えそうなものを一つ買って下さい」
「え、でもこれって不良品よね?」
「まあそうなんだけど、ここは騙されたと思って買った買った。もし気に入らなかったら後でオレ様から返金するから」
「そ、そこまで言うなら、ねえメル?」
「そうですね。ここはアビゲイルさんを信じましょう」
そうして姉妹は樽の中をしばらく物色して、それぞれが選んだ武器をココレアさんへ持って行く。
「なにがはじまるのぉ?」
きょとんとしながら代金を受け取るココレアさん。まあ無理もない。
「選んできたけど、これどうするの?」
「まあまあ、見てのお楽しみ。じゃあちょっと預かるね」
それぞれ<鑑定>する。
マルガリーゼが選んだものは、所々曲がっている金属製の杖で”歪んだ鉄杖-2”と出た。
メルナリーゼが選んだものは、一本目はショートソードで形は保っているものの刃が欠けいる”刃欠けのショートソード-1”と、二本目は見た感じ大振りのナイフだがかなり錆びている”錆びた短剣-2”と出た。
ちなみにマイナスが付く武器は、切れ味や耐久性が低下補正がついてしまっている。
オレ様は二人の武器を見て、同じく樽に入っている武器の中でよさげなのを選びココレアさんに代金を渡す。
「えっとぉ、買ってくれるのはありがたいんだけど、ほんとなにが起こるのぉ?」
ますます困惑するココレアさん。その小首をかしげる姿が大人可愛くて素敵です。
「あ、ちょっとここの台借りますね? では、イッツ、ショータイム!」
まずマルガリーゼの”歪んだ鉄杖”とオレ様が選んだ”古びた杖”を重ねるように台の上に乗せ、サブスキルの錬成で取得している<融合錬成>を発動させた。
囲むように掲げたオレ様の両手の間にある杖が明るい光を放ち、段々とその姿を変えていく。
「え、なにこれ!?」
「これってぇ、まさか錬金術ぅ!?」
「す、すごい……」
三人が驚く中、光は一瞬強く発光し、それが収まった後には一つの杖が出来上がっていた。
手にもって<鑑定>を発動させると”魔鉄の長杖+1”と表示され、錬成が成功したことを示している。
おまけにわずかながらも強化値がついていたのはラッキー。
ちなみに魔鉄は微量の魔力を含んだ鉄で、ささやかだが武器の性能や、発動させた魔法の威力を補正してくれる。
その上には魔鉄を鍛えた魔鋼や、ファンタジーでお馴染みの魔銀などがある。
「はいこれ、マルガリーゼのね。さて、次いってみよー!」
え? え? どうなってるの? と目を丸くして渡された杖とオレ様を交互に見ているおもしろマルガリーゼを横目で愛でつつ、次はメルナリーゼの武器へと移る。
まずは一本目の”刃欠けのショートソード”にオレ様が選んだ”折れた剣”を重ね、先ほどと同じように錬成。
光が収まり、出来た剣を<鑑定>すると”魔鉄のショートソード”と表示され、こちらも無事に成功する。
ショートソードを脇に置き、次に二本目の”錆びた短剣”とオレ様が選んだ”未完成の短剣”を重ね、再び錬成。
こちらも光が収まって出来た短剣を<鑑定>すると、”ソードブレイカー+1”と表示され、成功を確認したオレ様は、二つの剣をなぜか呆然としているメルナリーゼへと渡してあげた。
「はいメルナリーゼ。あ、元は二人の買った武器だし、素材にした武器はオレ様が錬成を試したくて買ったやつだから、お金とか気にしないで遠慮なく受け取ってくれ」
ふぅ、うまく成功してよかった。
サブスキルは本職のスキルと違って、グレードによって武器やアイテムの成功率が落ちてしまうという仕様がある。
今回は全てDグレードだったものの、成功率は70%。
あまり楽観はできない成功率だったのだ。
「ね、ねえ、二人ともぉ?よかったらその武器を鑑定させてくれないかしら?」
お、お願いします。と、どこかぎこちない動きの姉妹から武器を受け取ったココレアさんは店の奥へと引っ込んでいく。
「ふひょおおおおおっ!?」
しばらくして、ココレアさんの珍妙な悲鳴が店の奥から響いてきた。
作中でもありましたが鍛冶屋って大体ドワーフか人間だなぁ、と思ったので思い付きでエルフ姉さん投入。
ブクマや評価が細々とですが増えていて嬉しいこの頃。
よければ感想や評価などどしどしお待ちしております!!
もしこの小説で「こういうイベントあったら面白くね?」などというのもあったら、気楽に教えていただければ作者として勉強になります!!
もちろん、できる限り反映させたいと思っている所存!!




