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ネカマの吸血鬼が異世界転生しました。  作者: 隣の斎藤さん。
第一章 ネカマの吸血鬼が異世界転生しました。 
3/118

第2話/第一異世界人との遭遇。

誤字や脱字を発見したら、その都度直していきたいと思います。

ちなみに作者は真顔で無言のままドキドキする派です(´・ω・`)ドキドキドキドキドキ

あ、お金の単位をGからゴールに変えました。



「天にまします神様お願いします。どうか無事に目を覚ましますように………。マジでお願いー! 五百円上げるからー!!」


 皆様ご機嫌いかがでしょうか。ただ今絶賛錯乱中のオレ様、佐久間 貴信ことVRゲームの女性自キャラに転生したアビゲイルです。


 先程ドアから覗いている目にビックリして、思わず「チェストオオオオオッ!!」なんて叫びながら後ろ蹴りしてしまったアビゲイルです。


 いやホラーとか苦手じゃないんだけど、お化け屋敷とか全然いけるんだけど、不意のドッキリだけはダメやねん……。なんか無意識に攻撃的に手足がでちゃうというか。


 その結果が、オレ様の腕の中でぐったりしてる七才くらいの少女なわけです。


 あの時驚きに叫んでドアに後ろ蹴りを叩き込んでしまった瞬間、


ドガッ! ゴツッ! 「あきゅう……」ドサッ。


 って、人の声と倒れるような音が聞こえて嫌な予感はしたんだ。恐る恐るドアを開けてみると、ドアの前に仰向けで倒れている茶色のワンピースっぽい服の少女が一人。


 どうやら縦に目が二つだったのは、この子が顔を横にして覗いてたからっぽい。


 よく見れば淡い茶髪の短いツインテールがよく似合ってて顔立ちも可愛らしい。じゃなくて人命救助! 

 

 急いで少女を抱き起して呼びかけてみるけど、息はあっても反応がない。ていうか、おでこにドアの痕がついてて赤くなっているのが痛々しいなコレ。やったのオレ様だけど……。


 どうにか治せないかと悩むオレ様の目に、右手の中指にある白銀の指輪が映ったのは幸いだった。


 そうだ魔法! 確かこの<治癒の指輪>は中級の治癒魔法まで使えるからなんとかなるよね! むしろなんとかなってプリーズ!!


「ハイヒール!」


 祈る気持ちで少女の額に手をかざして中級の治癒魔法を発動すると、淡い緑色の優しい光が生まれ、みるみるうちに少女の怪我が治っていく。


 数秒すると怪我の痕はすっかりなくなった。けど少女が起きない。え、マジ? どうしよう! 昏睡状態とかじゃないよね!?


 第一異世界人発見からの人身事故による意識不明って罪深すぎる! 助けて神様仏様閻魔様―!!


 閻魔様だとあの世に連れてかれるからダメじゃん。と我ながらそこだけ無駄に冷静にツッコんでいると、抱き上げている少女の瞼が小さく震え、うっすらと目が開くのが見えた。


「……あれ? お姉ちゃん誰? なんで泣いてるの?」


 ありがとう治癒魔法先生! ていうか、言われて気づいたけど泣いてるよオレ様。いやでもよかった少女が気が付いてくれて。しかしまだ安心しちゃいけない。少女の具合を確かめねば。


「ごめんね、どこか痛いところはない? 吐き気とかしない? だるくない? 大丈夫? ほんと大丈夫?」


「だ、大丈夫だよお姉ちゃん。だから泣かないで? よしよし」


 なにこの子! 超優しいんだけど! バファ○ン以上の優しさ成分が含まれてるよきっと!!


「うえぇ、よかった。よかったよ。うえぇ…………」


 少女が無事で安心したのと心配してくれる優しさが心に染みて、オレ様は少女に撫でられながらしばらく泣き止めなかった。



★★★★★ 



「お恥ずかしいところをお見せしました」


 あの後少女に撫でられつつようやく泣き止んだオレ様は、少女に対して謝罪と羞恥による土下座を敢行していた。


 久しぶりに人前で泣いたせいか、泣き止んだ後の恥ずかしさがマックスだよ。顔上げらんないよ。


「気にしないでお姉ちゃん。私も覗いてたのが悪いんだし、怪我もお姉ちゃんに治してもらえてなんともないから」


 そろそろと顔を上げると、膝丈くらいの茶色のワンピース風の服を着た少女が女の子座りで可愛らしく微笑んでくれている。


 ええ子やぁ……。天使かこの子は。


「でもお姉ちゃんはここで何してたの? 教会跡地はあんまり魔物が来ないけど危ないよ?」


 そう言われてみれば木製の長椅子が左右に並んでるし、側にある床より一段高い壇上の背後には、背に翼を生やして祈るように手を組む女性像が飾られて、なるほど教会っぽい場所だ。


 でも少女が教会跡地というだけあって、床もところどころ傷んでいたり、窓は割れていて壁にもいくつかヒビ割れている箇所がある。使われないまま相当年月が経っているんだろう。


 うーん、それにしてもここにいる理由か。ラノベなら素直に話すか、適当にそれっぽいことをでっちあげるかの二択だよな。……ここは後者でいこう。


「えーっとね? 道に迷って歩いてたらここを見つけて? ちょっと休んでたところなんだよ?」


 アカン。考えながら話したら語尾が疑問形になってしまった。これじゃまるっきり不審者じゃないか。


「なんだお姉ちゃん迷子だったんだ! てっきり怪しい人か悪い人が隠れてるのかとおもっちゃった。――――よかった。毒袋を投げなくて」


 危うく誤解されるところだった! セーフセーフ。…………でもなんでだろう。最後の言葉の声が小さくなって聞き取れなかったけど、笑顔で話す少女に背中がゾクっとしたのは。


 ともかくこんな小さな少女がここにいるってことは、きっと人里が近いんだろう。なら少女に道を教えてもらえば、近くの村か町にでも行ける筈。聞いてみるか。


 あ、そういえば名前名乗ってなかったな。人との円滑なコミュニケーションには礼儀が大事だと思うので、まずは自己紹介。


「あー、オレ様の名前は貴……じゃなくてアビゲイルっていうんだ、よろしく。旅の迷子してます」


「あはは。お姉ちゃんってば男の子みたいな言葉遣いなんだね。私はミールっていうの! 近くの町に住んでて、今日は森に薬草やキノコを採りに来た帰りなの」


 ピッと片手を上げて元気に答えるミールちゃん可愛い。


 それにしても帰宅途中に出会えるなんてなんたる幸運! これは一緒に連れて行ってもられるチャンスかもしれない!!


 ここは誠心誠意お願いしてみるべし。


「ミールさん。野宿とご飯食べれないのは嫌なので、一緒に連れて行って下さいというか助けてくださいお願いします」


 おうふ。思った以上に正直な気持ちと卑屈な態度が出てしまった。


 誠意と願いと切なさを込めてぎゅっとミールちゃんの手を握って話すオレ様に、はじめはキョトンとしていたミールちゃんだったが、最後には笑ってこう答えてくれた。


「いいよ。案内料は500ゴールね! じゃあ早く帰ろうお姉ちゃん!!」


「え、あ、うん。わかりました」


 …………異世界人って逞しい。でもこのまま案内なしで放置されるのは嫌なので、オレ様はミールちゃんに手を引かれるまま、教会跡地を後にしたのだった。


 途中、可愛い少女に手を引かれて歩くのって…………ロリ、げふん、紳士の気持ちが少し分かるかもしれない、と思いながら。



★★★★★



 どうも。教会跡地からミールちゃんに連れられ、都会では見ることの出来ない自然や虫が溢れまくる森を歩いて、少々意気消沈気味なアビゲイルさんです。


 昔から虫は駄目なんだよ、虫は。特に小さい虫が集団でわさわさしてるのとか見ると、背中がザワザワして思わず焼夷弾ナパームで焼き払いたくなるくらい。


 それを平気で踏みつけたり、たまに飛んでくる大人の親指サイズくらいの虫を手で叩き落したりする男前なミールちゃんにちょっと惚れそうです。


 オレ様? オレ様はミールちゃんの後ろで黄色い悲鳴と声援を送ってましたよ。あのサイズの虫が顔や服につこうもんなら卒倒する自信があるわ。


 時々目の前を横切るバッタのような虫や、木の幹を這いずる細長いムカデのような虫に怯えながら歩くことしばらくして、ようやく森を抜けたらしくそこは海のように広がる草原が見下ろせる小高い丘だった。


 ミールちゃんに教えてもらった通りに、回り込むように道が続く丘を下っていく。他にも森を抜ける途中で森にある食べられる果物やキノコ、薬草等を教えてもらった。

 

 たまにミールちゃんから説明のないまま猛烈に渋いどんぐりみたいな木の実を食べさせられたり、擦り合わせるとう○このような強烈な臭いを発する葉っぱを掴まされたりして弄ばれたけど…………。


 いたずらしてきゃっきゃっと笑うミールちゃんなんだけど、可愛いと許せちゃうから不思議だよね。


 でもお仕置きでくすぐりの刑に処した時はやりすぎたみたいで、座り込んだ姿でハァハァと荒い息のまま上目遣いに涙目で睨まれてしまった。謝りながらそんなミールちゃんにグッときたのは秘密デス。


 そんなこんなもあって、ミールちゃんと少しは気安い仲になれたと思う。


 ちなみに気安くなれた証に、森を抜ける少し前くらいの所からミールちゃんはオレ様の背中にパイルダーオンしてます。


 そこからずっと背負って歩いているわけだけど、レベルカンストして身体が強化されてるせいかまったくもって重く感じないし辛くもない。


「あそこがあたしが住んでるハイドランジアの町だよ!」


 丘を下りきってなだらかな草原の斜面にさしかかった所で、後ろから腕を伸ばしたミールちゃんが元気に叫んだ。


 ミールちゃんが指してくれた方を見ると、絨毯のような草原の先に灰色の石っぽい壁に囲まれた洋風の町並みが小さく見える。


 元の世界ではまず見ることがない、まさにファンタジーな景観。


 人一人分の小さな道を歩きながら町に近づくにつれ、町を囲う大人二人分くらいの高さがある石壁や、左側だけ開いている幅が分厚い木製の門、その傍らで槍を持って佇む門番らしき人の姿がはっきりと見えてきた。


「ただいまー!」


 門番の人の顔が分かる程度まで近づくとミールちゃんが元気に手を振り、それに気づいた門番の人も手を挙げて応えてくれる。


 門番をしていたのは身長より長い槍を持ち、軽装の鎧の下にがっしりとした体格を持つ40歳くらいの渋いおっちゃん。


 途中でオレ様の背中から降りて近づいてきたミールちゃんに、門番のおっちゃんはどこかホッとしたような表情になり親し気に話しかける。


「おお、無事かミールちゃん。あのお嬢ちゃんの背中におぶってこられたもんだから、なんぞ怪我でもしたのかと心配したぞ」


「えへへ。怪我なんてしてないから大丈夫。ありがとモイルさん!」


 心配する門番のおっちゃん、もといモイルさんに元気に答えるミールちゃんを見てると、なんだかほっこりした気持ちになる。


 するとモイルさんが少し怪訝そうな顔でこっちを見てくる。アレ、なんかしました……?


「見たところ上等そうな服を着てるみたいだが。まさかお前さん、どこぞのお貴族様か?」


「いやいやいや、そんなまさか。ただの旅の、えーっと、剣士? ですよ?」


「ほんとうかのぉ……」


 即興で考えた設定に手を振りながら疑問形で答えてしまったオレ様を見て、モイルさんの目がますます怪しい人物を見るような目つきになっていく。


 オレ様ピンチ。


 ち、ちゃんと剣を帯剣してるから剣士で通じるよね? 通じてお願い。


 しかしさっきの答え方で怪しさが増したかもしんない。でもコレ、問答無用で詰所とかに突き出されたりしないよね? 一応、見た目はか弱い女の子だよ?


「だいじょーぶ!」


 自分でも分かるような引きつった笑いでモイルさんの疑いの眼差しを誤魔化そうとしていると、隣からミールちゃんの大きな声が上がった。


 フォローしてくれるんだねミールちゃん! マジ天使!!


 ミールちゃんはふんす! と、腰に手を当てぺたい胸を張り、大きく元気な声で、


「このお姉ちゃんは森で迷子になってたから拾ってきたの! だからだいじょーぶだよ! 多分!!」


 フォローになってない上に、野良猫拾ってきたみたいな言い方はどうかと思うよ!?


 ほらなんかモイルさんが顎に手を当てて難しい顔しながら考え始めたし!


 これは最悪尋問とか受ける覚悟しといた方がいいかもしんない、と思いはじめたオレ様だが、モイルさんの答えは至って軽いものだった。


「まぁいいか。ミールちゃんが懐いてるくらいだし、怪しいもんでもないだろうよ」


 それでいいのかおっちゃん、と思ったけど下手に言って「じゃあ尋問」とかになっても困るので、ここは何も言わずにおく。


「よかったねお姉ちゃん!」


「うん。ありがとうミールちゃん」


 ニコニコ顔で可愛く笑うミールちゃんに思わずオレ様もにへらっと笑顔になってしまう。ちょっと心臓に悪い場面もあったけどよしとしよう。可愛いは正義。


「ミールちゃんはいいとして、ほれ、お前さんはなにか身分証持っとるか? なかったら五千ゴール必要だぞ?」


 身分証ってなんぞや? と首をかしげていると、その様子を見たモイルさんが察してくれたようで、それが何かを教えてくれた。


 身分証いうのは三種類あり、通行証、ギルドカード、滞在証というものらしい。


 通行証そのままの意味で、主に市民権を持つ商人や町から町へ移動する人が携帯する国から発行されるパスポートみたいなものらしい。


 ギルドカードはその名の通り、冒険者ギルドや商人ギルド等に加入した者が持つ身分証代わりのもので、町にあるギルド支部に行けば簡単に作れるのだとか。


 最後の滞在証というのは、定められた税金を払えば一ヶ月という期間だけその町の出入りが無料になるもののようだ。


 その三つのどれかを持っていなければ、期限付きで臨時証という木の札を購入しなければならないようで、しかも期限が三日しかなく結構なお値段もする。


 これは証明のない人間が不法滞在しないようにする為の処置で、いずれかの身分証を作ればその場で半分が戻ってくるのだという。


 まあ戻ってくるなら半分は遊園地の入場料みたいに考えれば安いもんだけど。


 選ぶなら市民権は持ってないし、吸血鬼という種族のことがあってギルドカードも迂闊に作れないから滞在証がベストだろうか?


「あー、とりあえず臨時証をお願いします」


 どれを作るかは後でよく考えるとして、モイルさんに五千ゴールを渡して臨時証の木の札と交換した。


 お金は懐から出すふりをして、試しに五千ゴールと念じてみたらいつの間にか手の中に鉄色の硬貨が五枚握られていた不思議。これがラノベ御用達のアイテムボックス機能なんだろう。

 

 さりげにアイテム欄のお金を見てみたらしっかりと五千ゴールが減ってましたよ。


「それじゃお姉ちゃんいこっ!」


 木札を懐に入れるふりしてアイテムボックスに入れると、待っていたミールちゃんが笑顔で俺の手を握って歩き出す。


 モイルさんの見送りを受けつつ、一番最初に出会えたのがミールちゃんでよかったと思いながら町への門をくぐったのだった。


「ミールちゃん可愛ええのぅ…………ハァハァ」


 去り際に聞こえた、モイルさんの小さな呟きは聞かなかったことにして。




モイルさんを通報しないであげて下さい。

あとレベルカンストのアビゲイルさんの蹴りがドアもミールちゃんも破壊しなかったのは、無意識による軽い打撃だったから……だと思うよ?(;´・ω・)

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