第23話/現実で猛獣と戦い続けろと言われても無理がある。つか死ねる。
説明回って書いててなんでこんなに楽しくスラスラ書けるんでしょうか。
誰か共感出来る方っていませんか!?
「それでは、アビゲイルさんの為に少々講義をしましょう。マルメル姉妹ついでにも改めて聞いておいてください」
俺が場の空気の真剣さに困惑していると、それを悟ったのかエルモが突然そんなことを言い、マルメル姉妹もそれに頷く。
「アビゲイルさんはここにきて”色々と日が浅い”と思いますので説明いたしますと、まずこの道具は魔核のレベルを計る測定器とそれを記録する記録盤というものです」
テーブルにある魔核の隣に置かれた二つの道具を指して教えてくれるエルモ。
そして不意にエルモから念話が入る。
《先輩、これからちょこっと世界での常識の違いを教えます。
ちなみに薄々気づいているかもしれませんが、この世界は私たちがやっていたゲームが現実化したものと考えてもらって構いません》
我が子をはじめ、ファンナさんから受けた説明や魔物を倒した時の魔法やスキルから、ゲームが現実化しているかもと感じはじめてはいたが、エルモの話で改めて納得することが出来た。
しかしこの世界のことを教えてくれるのは助かる。この世界に来て日が浅いどころかまだ一日も経ってないもんだし。
エルモの親切にお礼も兼ねて頷きを返しておく。
《ありがとうツーエ――――》
《次その呼び方したらギルド長権限で十日程トイレ掃除させますよ?》
《すんませんっしたー!》
エルモがちらりとこちらに視線を向けてきた瞬間、速攻で謝った。だって口は微笑んでるけど目が笑ってないんだもん……。
エ、エルモさん、気を取り直して説明をお願いします。
俺の引きつった笑いでこくこくと首を縦に振ると、エルモがようやくニコリと笑顔を返してくれた。
「まずこの測定器ですが、計った魔核の魔力がその魔物のレベルとしてこのように青い線によって表記されます。
この場合ですと、青い線が数値の三十四辺りにありますので魔物のレベルは三十四相当という事になります」
ふうむ。定規だと思っていた物はレベルを計るものだったか。こんな道具はゲームにはなかったな。
相手のレベルや状態なんかは無属性スキルの<状態調査>で知ることが出来るわけだし。
「次に記録盤ですが、これは単純に測定器で解析したものを記録し、共有させた端末から過去や現在の魔物の情報を参照することができます」
ふむふむ。これもゲームにはなかったものだ。魔物の情報なんかまとめネットのサイトとか見れば一発だったし。
だがゲームが現実化した世界ではそういう便利な物はないのだろう。
だから方法がアナログになっていくわけか。
《アビちゃん先輩。ここから重要になってきますのでちゃんと聞いておいてください》
《了解》
「それでは今回の事を事例としてお話しますが、まず討伐された魔物の強さは測定器で表されている通りレベルが三十四前後となります。
これに対し冒険者の適性ランクはCランクとなり、最低でも中級職でなければ危険です。
それに伴い――――」
エルモからの話というか情報は多くの未知があることを教えてくれた。
まず強さの事だが、魔物のレベルが五十も超えると町が壊滅するような災害レベルに相当するようなもののようだ。
ゲームだとレベル二百している俺の場合、五十なんてレベルの魔物は雑魚同然で百を超えてようやく相手になってくるくらいなもんだった。
それと冒険者や魔物にはランクというものがあり、E~Sの六段階があった。
冒険者ランクは|評価性になっており、経験や試験を考慮されて昇級していき、以下のように認識されているらしい。
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Eランク=駆け出し
Dランク=半人前
Cランク=一人前
Bランク=ベテラン
Aランク=一流
Sランク=英雄、達人
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ついでにSランクの場合は国やギルドからの複数の承認を得なければ昇級できない決まりがあるようだ。
魔物のランクも似たようなものだが、レベルがありそれに応じて色々指定があるらしく、以下の通りになる。
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Eランク=レベル一~十 害獣指定
Dランク=レベル十~二十 危険指定
Cランク=レベル二十~三十 要討伐指定
Bランク=レベル三十~四十 緊急討伐指定
Aランク=レベル四十~五十 国家対策指定
Sランク=レベル五十以上 災害指定
SSランク=レベル計測不能 即時避難指定
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魔物を討伐するには冒険者のランクと魔物のランクが同じなんだが、ただゲームと違ってソロではなくパーティー(二人以上)を基本にしているのが意外だった。
つまりCランクの魔物を倒すためにはCランクの冒険者パーティーが少なくとも一組必要であり、もしソロで倒す場合は一つ上のBランク冒険者が推奨されているらしい。
ただしAランク以上だと、同盟と呼ばれる数十人規模で挑まなければまず勝てないようだ。
ちなみに今回討伐した魔物はCランクの強さであり、それに対してマルメル姉妹はDランクで職業もまだ初級なうえにレベルも低くかった為、実は相当危険な状況だったようである。
だから姉妹は魔物のレベルを知った時に顔を青くしてたわけか。納得。
《この世界での職業レベルって、最高どんくらい?》
《私の知る限りでは剣聖や魔導王の職業でレベルが七十~八十くらいですね》
ううむ。思っていたより低いな。
《ちなみに平均的な冒険者のランクやレベルってどんな感じ?》
《そうですね。地域にもよりますが、大体Cランクが多くてレベルが中級職業の三十~四十くらいですね。
B以上になりますと極端に数が少なくなって、Sにもなると両手で数えられるくらいになります》
《…………思ってた以上にレベルが低い気がするんだけど》
《仕方ないですよ。レベルが低いのは現実世界だと、せいぜいが一日に魔物と一度か二度戦うか戦わないかくらいですからね。
ゲームみたく一日中経験値稼げれば違うんでしょうけど、命の危険がありますからパワーレベリングみたいなのもほとんどの人には無理でしょう》
おいおい。じゃあ俺みたいなレベル二百してる場合はどうなるんだよ。確かエルモだって百は超えてたろうに。
《ですから私やアビちゃん先輩のような高レベル帯が下手に力を見せてしまうと、厄介ごとに発展する可能性があるので気を付けてくださいね》
《ちなみにモーちゃんが厄介ごとにあった経験は?》
《…………同族からの求婚がモノスゴカッタデス》
うーむ。これはどうやら俺も力加減には相当気を付けなければならないようだ。
異世界物のラノベ読んだりして常々思うのが、冒険者といえど現実になったらそう一日中魔物と戦ってられないよなぁ、ということ。
普通に疲れるし傷つくし、ゲームみたく途中でセーブポイントなんてないんだし、毎日野宿なんてしてらんないしでかなり大変だと思われる。
自分がもし異世界に行けたら、、、ええ、雑魚狩り専門で細々とやっていくような気がする。
ドラゴンが出た日なんかにゃ、こやし玉を死ぬほど投げつけて逃げると思う。