第1話/我が子で異世界転生。
初投稿です!
コメディ7シリアス1ご都合主義2でお送りいたします(*´ω`*)
「相変わらず、我が子は可愛いなぁ……」
腰に両手を当て前屈みのポーズでニコリと笑顔で鏡に映る美少女に、俺、佐久間 貴信(三十五歳)は感嘆のため息を漏らした。
洋室の部屋の隅で鏡に映っている美少女は、自分だけど自分じゃない存在。すわなちVRゲーム内の自分の使用キャラクターだ。
お尻を隠すような長い白灰色のボリュームのある髪。顔は綺麗というより可愛いよりの美少女で、身長百五十五センチの華奢な体型。服装は<闇皇女の学衣>という灰色の長袖シャツにノースリーブの黒のジャケット、フリルのついた赤いスカートに黒ニーソという姿は、どこか制服を彷彿とさせつつも可愛いのでイイと思います。
いわゆるネカマというやつなのだが、特に女の子になりきったプレイをしたいわけでもなく、単純に作るなら男より可愛い女の子がいいという浅い理由だったりする。
まぁ過去にノリで女の子としてふるまった結果、男性プレイヤーに本気で告白された黒歴史があったりするんだけど。……忘れよう。
明日から五連休という前日のこの日、五年以上やっているVRRPGの大型アップデートの為に、俺はいつもなら夜十時に終わる仕事を死に物狂いで八時に終わらせ最速で帰宅した。
そして九時までに風呂と食事を済ませ、十一時半まで仮眠。深夜十二時にはじまる大型アップデートを待ちつつ、自キャラの我が子を愛でている次第である。
今回のアップデートは今までのと違うもので、かつてない程の規模でまったく新しいフィールドや魔物等が実装されるらしい。今まで焦らすように小出しにされたアップデートのPVだったが、想像以上の出来と内容にユーザーの間では期待が高まっていて俺もその内の一人だ。
<皆様お待たせいたしました。これより大型アップデート“新たなる扉”が実装されます>
様々なポージングを楽しんでいると、いつの間にか時間になっていたようでアナウンスが流れた。やばい、めちゃくちゃ楽しみで胸のわくわくが止まらないぜ☆
<選ばれし皆様に女神の加護があらんことを。それではご武運をお祈り申し上げます>
アナウンスが終わり、いつものように小さな転送クリスタルが俺の手元に現れた。これを起動すれば新しい冒険がはじまる。
「よーし! いざ新しい世界へレッツ・ゴー!!」
溢れ出る高揚感に高々と手を掲げ、俺は転送クリスタルを起動した!
★★★★★
「相変わらず、我が子は可愛いなぁ……」
腰に両手を当て前屈みのポーズで、ニコリと笑顔で古めかしい鏡台の鏡に映る美少女にオレ様、佐久間 貴信(二十五歳)は感嘆のため息を漏らした。
「――――って、遊んでる場合じゃないよなコレ」
真顔に戻って考えてみるが、どうやらオレ様は異世界転生というのをしてしまったらしい。
気づいた時に立っていた、四畳半程ある部屋の木の壁を触った際にささくれた木片で傷つけてしまった指先には、うっすらと傷跡が残っている。
その時に指先に感じた痛みと、指をかばう手の柔らかな感触に気づいたときは疑問と同時に驚いたもんだ。
いくらVRが進化し続けているとはいえ、いまだリアルと同じ感覚までは備わっていないのだから。
それをきっかけにもしやこれは、と思いオレ様は自分自身を確かめまくった。
白灰色の艶やかな髪は甘やかないい匂いがしたり、白くて細い両手を頭上に掲げて眺めてみたり、大きくはないものの形よく弾力ある胸の双丘を揉、げふん! 触れてみたりとか。黒ニーソと絶対領域を備えた華奢な足で地面を踏みしめたりなどして。
結果、なにをしてもゲームではない現実だという事実が返ってくるのみで、オレ様は自分が異世界転生をしたのだと判断することにした。
例えこれがリアル過ぎる夢だったのなら、自分だけの笑い話で終わるからいい。
だが現実だった場合、ゲームのノリで気軽に大ダメージでも食らえばそれが即、死に繋がる危険性も孕んでいるのだ。ここは現実だという判断でコマンドは命を大事にで行こう。
しかしだ。改めて鏡に映る我が子になってしまった自分だけど、なんというか、マジで美少女だな。いや、キャラクリしたのは自分なんだけど。
服も灰色の長袖シャツに、シンプルだけど細やかな装飾のされたノースリーブの黒のジャケットが見事に反映されている。フリルのついた赤いスカートからの絶対領域と黒ニーソには馳走様です。
一通り美少女な自分を堪能したところで、腕を組みながらこれからのことを考える。
組んだ腕にふよんとした胸の感触が最高です。いやそうじゃなく。
まず死に残業のブラック企業で働く元の世界に戻る気はさらさらないので、どこかの町で生活拠点を見つけねばなるまい。
次に今の自分はなにが出来るのか。ステータス画面とか見れたりすんのかな。
<ステータス>
名前/アビゲイル
年齢/15歳
種族/吸血鬼(真祖)
職業/闇の騎士Lv200
固有能力/吸血・自己再生・魔眼
スキル/闇魔法・騎士剣術・暗黒剣・眷属召喚
サブスキル/錬成・魔術・付与
見れたよ。よし! ステータスはゲームのまんまで助かった! 見知らぬ土地でレベル1からとか恐怖だしね。
あ、名前もゲーム仕様になってる。うーん……、我が子で女の子になった以上、貴信って名乗るのも変だし、これからはアビゲイルと名乗ることにしようか。よし、決めた。
ちなみにだが、言葉遣いもキャラ設定として使っていた”オレ様”に自然と定着してしまっていた。
そういえばオレ様って種族が吸血鬼(真祖)だったんだよな。元は人族の黒騎士だったんだけど、闇魔法や眷属召喚に惹かれて吸血鬼になる為に難しい条件を達成して、さらに上級の真祖になるのに百個の素材を集め十の儀式を一か月かけて頑張ったのが懐かしい。
ところでこの世界において吸血鬼ってどういうポジションなんだろうか。
ゲームでは希少で人とあまり交流のない種族、という設定だったけどまさかここじゃ人類と敵対してるとかじゃないよね?
吸血鬼は敵だ! ってファンタジー物にはありがちだけど、町に行った途端に冒険者にハントされるとかマジで勘弁願いたい。種族の事ははっきりするまで隠す方向で行こう。
あとは武器とかどうなってるのか。今の状態だとこの可愛い服だけで特に剣を持っていたりしていない。
ゲームの時はフィールドに出る時に装備欄から装備していたもんだけど、ステータスも見れるなら装備状態も見れたり、
<装備>
武器/銀十字の黒剣☆(未)
防具/闇皇女の魔装☆
装飾/女神の指輪☆(未)
装飾/魔除けの首飾り☆(未)
しましたよ。思い浮かべるだけで表示してくれる親切設計にありがとう。あと装備もゲームの時と同じ最高装備のままだった。
装備名の横にある☆は最終強化までされている証であり、(未)とあるのは未装備ということなので、さっそく全て装備してみる。
すると腰の左側に、鞘に銀の意匠を凝らした黒い長剣が帯剣され、右手の中指には女神の横顔のレリーフが刻まれた白銀の指輪が嵌められた。
首元を触ると、黒い十字架の中央に銀のドクロというシルバーアクセサリーみたいで気に入って手に入れた首飾りがあるのがわかる。
黒剣は苦労して出現確率1%という騎士系ボスから入手した貴重なもので、服はレシピを手に入れた後に最高級の素材と多額のお金を消費、失敗しながらもやっと作成できた物。
指輪と首飾りは一ヶ月に一度しか出来ないクエストを4度目で完璧に達成して得られたレア物であり、それぞれが時間と気力と物欲センサーとの戦いを経て獲得した思い出深い品物である。
この調子ならきっと回復アイテムとかもゲームの時と同じはず。
いつもその日のゲームを終える前に、持ってるアイテムを限界数まで補充してからログアウトしているので、アイテムの数や種類は潤沢である。
ついでに昨日は売りに出していた複数のアイテムが、思った以上の金額で売れたので手持ちのお金も軽く十億は超えていたはず。
うははは、これもう働かなくてもいいんじゃないだろうか。いいよね? 異世界転生したからってチート能力使ってお金持ちになりたいわけじゃないし、元の世界では仕事に追われる毎日だったんだから二、三週間くらいスローライフしても!
…………我ながら週単位なのが小心者だと思うが、性分なんだから仕方ないということで。一ヶ月とか働かない期間が長いとなんか不安になってくるんだよ。
それでは出でよ! 我が夢のスローライフに向けた戦力(財産)達よ!!
<アイテム>
ポーション×10
ハイポーション×5
マナポーション×10
ハイマナポーション×5
解毒ポーション×5
万能薬×3
霊薬×1
30,000G
「ちょっと待てえええええっ!」
え!? なにこれ! アイテムが初期状態ってどういうこと!? しかもお金が三万ってなんでお小遣いレベルにまで減ってんの!? オレ様の十億どこいった!!
思わず叫んでしまったが仕方ない事案だろうコレ。
レベルも装備も最高状態だったのに、アイテムとお金が初期状態ってあんまりだ……。どうやってスローライフしろってんだよ。このままだとスローにライフが削れていくだけの未来しか見えないよ。
「そうは言っても種族が吸血鬼じゃどういう扱いされるかわかんないし。最悪賞金首とかにされて追われる身になったら…………いっそチート任せに魔王になってどっかの国でも征服するのもありか?」
いやねえよ。なに血迷ってんだオレ様。落ち着け、落ち着くんだ。ステイ、オレ様。
何度か深呼吸したおかげで、気持ちが落ち着いてきたので考え直してみよう。
まずお金を稼ぐために異世界でテンプレの冒険者になる、っていうのはちょっと待った方がいいだろう。吸血鬼の立ち位置がわからないまま種族がバレたらどうなるかわからない。なら別の方法で稼ぐのみ。
「幸いサブスキルの錬成でアイテム作成があるから、ポーション作って露店で売ったりできるか? いやでも、素材ないしもともと露店って開けるのか? その前に町に行かないとだけど部屋から出て安全なのか? あ、今日食べる食料もない…………あれ? 詰んでる?」
ヤバイ。転生してまだ三十分と立ってない筈なのにもう不安になってきたんだけど。どうしよう、どうする、どうすれば…………。
鏡に映る美少女な俺の顔の眉が下がり、半泣き一歩手前みたいになってる。そんな表情もまたそそる。いや違う。なに自分で自給自足してるんだ俺。
「とにかく、部屋から出てみ…………」
と、気分を変えて鏡に映る自分の顔から視線を逸らした時、気づいた。気づいてしまった。
鏡に映る背後のドアの隙間から、こちらを凝視する、“縦に並んだ”二つの目に。
気づくとオレ様は、叫び声をあげていた。
「チェストオオオオオッ!!」
作者もゲームキャラを作成する時は女の子です。
ええ、イケメンよりも可愛いが正義です(*´Д`)ハァハァ