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ネカマの吸血鬼が異世界転生しました。  作者: 隣の斎藤さん。
第一章 ネカマの吸血鬼が異世界転生しました。 
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第18話/穏便とは。すなわち結果的に死者が出なければよし。(諸説あり)

なんとか地の文章のスランプ?から抜け出せたような気がする作者です。


皆さんはストーブ効かせた部屋で半袖になったりしません? 作者します。そして「寒いなぁ」とか呟きます。




「アビゲイルお姉ちゃん、さようならー!」

 

 門を出てすぐ、元気に手を振るアリシャちゃんと、何度も頭を下げるご両親を見送りながらお別れすることになった。


 なんでも役所に報告しなくてはならないらしい。


 別れ際にアリシャちゃんにお礼を言われ、抱きつかれときはちょっとドキッとしてしまった。


 小さくても女の子ということだろうか。


 いや決して紳士(ロリコン)じゃあないけどね?


 ともあれ辺りもだんだん薄暗くなってきたし、姉妹を待たせてもいけないから早めにギルドへ向かうことにしよう。


 ミールちゃんの案内を思い出しながらとりあえず広場へと向かう。


 どうやら昼間の屋台は片付けられたようで、人も少なく閑散とした広場から、ギルドまで冒険者達を追いかけた方向を思い出して進む。


 うん。思い出しながら歩いたはずなんだ。なんだけど……。


「おいおいお嬢ちゃん。こんなところに一人で来るなんて危ねえなあ。ひひひ」


「そうだぜぇ。このお兄さん達が安全な場所まで連れていってやろう。ふふふ」


「ほーら、恐くないよ。お兄さん達に任せなさい。へへへ」


 途中で曲がった道が間違っていたのか、進むうちに気づくと建物に囲まれた狭い路地のような場所へと迷い混んでいた。


 行き止まりから来た道を戻ろうとしたら、そこにテンプレのように怪しいチンピラ風の男達がニヤニヤしながら道を塞ぐように現れた現在。


 もうこの手の奴らめんどくさい。


 ここに来るまでにもう三組も同じタイプの奴らを相手にしているのだ。

 

 はじめは我慢して丁寧に接していたのだが、いかんせん男の方がしつこく引き下がらなくて困るわ疲れるわ。


 自身の性別が逆転して、はじめてナンパのうざさがわかった瞬間だった。

 

 まあもちろん、その三組には穏便にお引き取り頂いたのだが。


「恐くて声もでないのかい?ひひひ」


 俺がうんざりして俯いていたのを、勘違いして勝手なことを言うチンピラAがうざい。


「大丈夫だぜぇ。俺らがちゃんとめんどうみてやるから。ふふふ」


 親切なふりをして下心が見え見えなチンピラBがめんどい。


「なんならお兄さんが迷わないように手を繋いであげようか?へへへ」


 なんてこと言いながら、こちらに手を差し出そうとしてくるチンピラCがキモい。


 あーもういいや。どうでもいいや。


 今までなら最初に「やめてください」だの「大声出しますよ」なんて、外見通りに女の子のマネして断っていたわけだが。


 うざい・めんどい・キモいの三種類が揃った瞬間、俺の中の我慢の緒が切れた。


「黙ってどうしたんだいおじょう――――」


 俺は無言のまま右足を軽く上げ、チンピラAの言葉を遮るように叩き付けるようにして地面へと振り下ろした。


 どめごぉっ! と、右足が地面に少しめりこむような感覚と共に辺りに亀裂が走る。


『……………………ひぃっ!!』


 ちょっとストレスを発散できたことで気持ちが落ち着き、すっと顔を上げた俺と目があった瞬間、チンピラ達が揃って悲鳴を上げる。


 酷いなぁ。こんな美少女を見て怯えるだなんて。


 まあ、ちょこーっと目が笑ってないかもしれないけど。


「めんどいからかいつまんで言うけど。これ以上しつこくするなら、言葉じゃなく物理的に話し合う事になるけど、どうする?」 


 殺意、もとい誠意を込めてにこりと笑顔で問いかけると、一も二もなくチンピラ達は高速で顔を横に振って答えてくれた。   


 うん。どうやら俺の気持ちは伝わったようだ。


「じゃあそこを通してくれると嬉しいんだけど」


『は、はいいいいっ!!』


 俺の言葉にすぐさまチンピラ達は壁に張り付かんばかりに左右へ避けてくれた。


 ありがとうと一応お礼を言いながら通り過ぎると、後ろでチンピラ達が安堵の息をつくのが聞こえる。


 いや、つい脅し気味になっちゃったけどそんなに怖かったか? こんな非力でか弱そうで可愛い我が子だというのに。


 しかしまあ、これからどうするか。


 マルガリーゼとメルナリーゼの姉妹と待ち合わせした冒険者ギルドへ行きたいのだが、いかんせん迷ってしまっている。


 一度漫画のように壁を蹴り上がって屋根伝いに探してみようかと思ったのだが。いや、アレだね、案外家の壁って脆いもんだね?


 だけどこのまま迷いっぱなしっていうのも困りもんである。


 どっかで通りすがりの人でも見つけて道を聞いてみよう…………って、ちょうどいいのがいるじゃん。


「ねえ、ちょいとそこのお兄さん方」 


『!? な、なんでございましょうかお嬢様!』


 俺が振り向いて声をかけると、三人ともシャキンと背筋を伸ばした姿勢になって揃って答える。いやお嬢様ちゃうしな?


 そしてその顔に大量の汗をかいていたりするのはなぜか。別に取って食おうってわけじゃないんだし。


「あー、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」  


「はい! 俺たちにわかることならなんなりと!!」


「はい! 俺たちにできることならなんでもします!!」


「はい! 俺たちにやれることならどんなことでも!!」


 そこまで言うと男たちは顔を見合わせ、さん、はい、と音頭を取り、


『だから命だけは勘弁して下さい!!』


 ハモったあげくに頭を下げてきた。


 いやそこまでしないし、俺はいったいどういう風に見られてるのか。


「別に命とか取らないから。ただ冒険者ギルドまでの道を聞きたいだけだから」


『え? そんなことでいいんですか?』 


「そうだけど?」


 俺が頷くと、チンピラ達は力が抜けたように息を吐き出し、


「よ、よかったぁ。俺はてっきり「やっぱり締める」とか言われてボコボコにされるのかと」


「俺も「有り金全部よこせ」とか言われてボコボコにされるのかと」


「俺なんか「悪人に人権なんかない」とか言われてボコボコにされるのかと」


「はっはっはっ。いますぐその全部を叶えてやろうか」


 冗談めかして言ったのだが俺の言葉を聞いた瞬間、チンピラ達の顔が絶望に染まる。


 いや冗談だからね? ほんとに。


 というか俺はどこの天才美少女魔導士だよ。そんなことしないっての。これからは保証できないけど。


「はいはい冗談だから。あんまりゆっくりできないし、ちゃっちゃと案内してくれたらお礼もするから」


「わかりました! どうぞこちらですお嬢!!」


「足元にお気をつけて!」


「おらおら、見せもんじゃねえぞ!!」


 いや先導してくれんのはありがたいんだけど。なにゆえヤクザの娘のような扱い?


 でもとりあえずはこれで冒険者ギルドまで行けそうだし、まあいいのかな?


「どけどけ! お嬢のお通りだ!!」


「あーん? てめえお嬢のどこみてんだぁ!?」


「こらてめえら! さっさと道を開けねえか!!」


 ……やっぱりよくない。


 尚もヤクザばりに周りを威嚇しながら先導する三人を落ち着かせるため、俺はこぶしを握って近寄ったのだった。



ということで、18話をお送りします!


それにしても話の進行が遅くてほんとすみません。


この話も構想ならとっとと冒険者ギルドに着いて話が進んでたはずなんですが。


作者はよくリアルの仕事しながら構想を練るんですが「ただ進行するだけじゃつまんなくね? もちょっと面白い話になんないかな?」とか考えてるうちにどんどん細かくなって、一話で進む筈の話もその一歩手前で終わっちゃったりするというのがよくあります。


ええ、よくあります。大事な事なので二回いいました。


そんなんで物語の進行が無駄に遅かったりしますが、ぬるい目で読んでいただけたら幸いです!!


※チーズをのせたパンをオーブンから出そうとしたら、のっかってたチーズが滑り落ちてきて親指がじゅっとした今朝。




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