第17話/おまえの○○○は何色だ!!
はい、すみませんごめんなさいようやく更新できた作者です。
なんのかんの言いつつ、もう一月も半分過ぎてしまいました。
デスマーチは終わって正月も迎えたのになぜ更新が遅れたかと言うと、それはまあ、ええ、すべてはPS4が悪いということで……。
いやだって「運命2」がおもしろいんですもん!!orz
マルメル姉妹と町まで同行することを決めた後、アリシャちゃんとそのご両親が小屋から出てきたので事の顛末を話すとすごく感謝された。
なんでも奥さんを逃がすために、旦那さんは囮になり魔物に特効する覚悟もしていたらしい。
危ねえ間に合った。即断して駆け付けといてよかったよ。
それからすぐに町へ戻るための帰路についた。
ちなみに奥さんとアリシャちゃんは魔角馬に乗ってもらい、あとの皆は護衛も兼ねて歩いている。
帰りも果樹園に駆けつける際にゴブリンに出くわした森を通ったが、特に魔物等に出会うことなく素通りした後、しばらく歩いたところで町が見えてくる。
そこでようやく皆の張りつめた表情が少し緩んでいくのが見えた。
「んー、やっと町に着いたぁ! 今日はなんだかすごく疲れたわね」
横を歩くマルガリーゼが伸びをして身体を反らす。
元の世界で考えたら命懸けの戦いなんてまずないし、きっと疲労が半端じゃないんだろうな。
あと身体が反らされたことによって、強調された胸も半端ないです。
「仕方ないですよ姉さま。まさかあんな魔物が出てくるとは思いませんでしたから。
幸いアビゲイルさんのおかげで命拾いしましたけど」
助かりました、とメルナリーゼからにこやかな表情を向けられる。
「わたしも! お姉ちゃんがギルドでお願いを聞いてくれたから、お母さんもお父さんも無事だったの!
アビゲイルお姉ちゃん、ありがとう!!」
アリシャちゃんの満面の笑みと元気な声に続き、ご両親からも深々と頭を下げられお礼をされた。
異世界に来て一日も経ってないのにいろんな人から感謝されてばっかりな気がする。
うわぁ、慣れねえ。
「いやいや、そんな気にしないでいいよいいよ。あははは」
慣れないことに照れを感じながら返事を返していると、町の門が見えてきた。
太陽も沈み始めたこの時間帯は人の出入りがないようで、門前には二人の門番の他に誰もいない。
門の入り口側に着き、奥さんとアリシャさんが降りた魔角場を送還していると、マルメル姉妹がやってきた。
「アビゲイルさん、この後予定がなければご一緒にギルドまで行きませんか? 多分魔物に関して同じことを聞かれると思いますので、その方が手間が省けるかと思います。
ですよね、姉さま?」
「うえ!? あ、う、うん。その方がいいと思う! …………アビゲイルが、よかったらだけど」
マルガリーゼがどこか自信なさげに上目遣いなのは、断られるかもしれないと思っているからだろうか。
ははは、そんな可愛げな仕草されたら二つ返事で受けますよ?
「ああ。こっちからもお願いするよ。まだこの町にきたばかりで道に不慣れだから、案内してくれるとありがたいし」
「ほんと!? うん! 道案内とか任せて!!」
「よかったですね、姉さま」
子供のように喜ぶマルガリーゼさん可愛い。
メルナリーゼも微笑んでいるが、あの姉を見るまったく瞬きしないちょっと血走ってる目はなにかが違う気がする。
「おーい、お嬢ちゃん達」
そこへ後ろから声をかけられる。振り返ってみると、それはこちらへ歩いてくる門番はモイルのおっちゃんのものだった。
「おお、無事だったかお嬢ちゃん達。アリシャちゃんが果樹園に魔物が出たと駆け込んできたと思ったら、すぐに黒い馬にまたがって飛び出していくもんだから心配したぞ」
どこか安堵した表情をモイルのおっちゃんが見せる。
あー、確かに町から出る時は駆け足で挨拶もなしだったしな。そりゃ悪いことをしたかも。
「いやー、ごめんねモイルさん。でも魔物は倒したし、皆怪我もないから大丈夫ですよ」
「ほお。そりゃすごい。そこの姉妹もだが、お前さんもなかなかやるもんじゃのぉ」
「はっはっはっ。それほどでもありますよ?」
「はい、アビゲイルさんはすごいです。でも、残念ながら姉さまは汚されちゃいましたけど……」
なぜか突然、メルナリーゼが少し影のある表情で意味深なことを言い出した。
「どういうことじゃ?」
「ええ。姉さまが私を守るために横から出てきた魔物に、あんなところまでまさぐられて……」
「はえ!? なに言ってんのよメリー!」
「なんと、そんなことが……」
いや汚されたっていうか、単に眷属にじゃれつかれて汚れちゃっただけのような。
しかし事実を知らないモイルさんはただ同情するばかり。
なぜそんなことを言いだしたのかとメルナリーゼを見れば、彼女は悲しむように口元に手をあて目を伏せているものの、手元の反対側が見えるこちからは微笑む口元が丸見えである。
なんかやらかす気だろう絶対。
「け、汚されてなんかないもん! ただちょっと、えと、その…………」
強く否定したものの、影狼にスカートの中に顔を突っ込まれたことを思い出したのか、だんだん顔を赤くさせて弱弱しく口ごもるマルガリーゼ。
「みなまで言わなくてもよい。わかっておる。わかっておるぞ。……大変だったんじゃな」
多分意味を盛大に勘違いしているであろうモイルさんが優しく慰める。
ち、違うの! と反論を試みるも顔を赤くしてやっぱりマルガリーゼは言い出せない。
そしてそんな姉の様子をみて、やはり恍惚とした表情を浮かべるメルナリーゼはさすがだと思う。
しかしどうしよう。ツッコミが不在で収集つかないんだけど。
「あ、でもマルガリーゼ、ちょっと気持ちいいとか言ってたような?」
なので俺もちょっとしたお茶目をしてみたりする。
「アビゲイルまでなに言ってんの!?」
「お嬢ちゃん……」
「それは初耳ですね。どういうことか最初から最後まで聞かせてくれませんか姉さま? ええ、大丈夫です私以外には聞かれないようにちゃんと個室で聞きますから、さあ行きましょうすぐ行きましょうギルドへの報告なんて明日でもいいんです……!!
息を荒くしたメルナリーゼが姉の手を引き、どこかへ連れ去ろうとする。
やべえ、なんかちょっとしたお茶目のつもりがメルナリーゼに火をつけちゃったよ。
「ち、ちょっと落ち着いてメル! 別に大したことされてないから! 大丈夫だから!!」
「お嬢ちゃん、まあ、なんだ。大変だったんじゃな?」
「ちょ、違っ! モイルさんも誤解しないで! 変な事なんかされてないから!!」
必死に弁解しようとするも、モイルさんからは娘が隠していたエロ本を見つけてしまったような気まずい顔をされる。
妹を落ち着かせたりモイルさんに弁解したりと、忙しそうだなマルガリーゼは。
ならばここは一つ、俺がフォローするしかあるまい。
「やめるんだ二人共! マルガリーゼはそんなんじゃないんだ! ちょっと新しいなにかが芽生えただけだから!!」
「そんなわけないでしょ!?」
少し悪ノリしてみたらマルガリーゼから抗議の声が上がった。
あっはっはっ。なんかオラ楽しくなってきたぞ。
しかしそこで我慢の限界が来たのか、マルガリーゼがぷるぷる震えてついに怒るように叫んだ。
「もおおおおおっ! みんな違うって言ってるでしょー! 私は気持ちよくなんてないし新しく芽生えてないの! ただ変な狼にスカートの中を舐められて下着が濡れただけなんだからあああああっ!!」
その瞬間、周りが静寂に包まれたように思えたのは錯覚なんかじゃあるまい。
さっき帰って来たであろう十代後半くらいの冒険者の青年と、その出入りの受付をしていたもう一人の門番、アリシャちゃん達ご家族、そしてモイルのおっちゃんやメルナリーゼといった俺達。
誰もが動きを止めて叫んだマルガリーゼを見ていた。
「な、なによみんなこっち見て。私なんか変なこと言った…………あっ!!」
さきほどまで肩で息をして荒ぶっていたマルガリーゼだったが、どうやら自分の言った言葉に気づいたしたらしい。
みるみるうちに顔が赤くなっていく。
そりゃまあ、そうだろうな。メルナリーゼがからかう為にわざとぼかしていたはずの恥ずかしい内容を、自分が赤裸々に語ってしまったのだから。
しかもその内容が下着を舐められて濡れたという、聞きようによっては妙にエッチィ発言とくれば恥ずかしさも天井知らずだろう。
あ、めっちゃ目が潤んできてる。これはやりすぎたかもしれない。
「え、えーっと、なんだかさっき風が強く吹いたみたいで姉さまの言葉が聞こえませんでした、よね?」
「そ、そうじゃのぉ。ワシも最近耳が遠くてちょっと聞こえてなかったわい」
これ以上はまずいと思ったのか、二人とも聞いてませんアピールをしだした。
「あー、うん。俺も、風の音でちょっとわかんかったなー?」
そしてすかさず俺も便乗する。
うん、風なんか吹いていないし普通にばっちり聞こえてるんだけどね。
でもこういう時に下手に慰めたり謝ったりするのって「しっかり聞こえてました」と言ってるようなもので、逆効果な場合もあったりするんだよなあ。
ちなみに中学生の時に「ご、ごめん! きみこちゃんの子供っぽい黄色いクマパンツなんて見てないから!」と言ったら、ビンタどころかグーが飛んできましたよ。
あの時の周りの女子達からの凍てつく視線といったらそれはもう、トラウマレベルで……。
今となっては懐かしいヤな思い出である。
「ほ、ほんと……?」
泣きが入る一歩手前の我慢した表情で問いかけてくるマルガリーゼに、俺とメルナリーゼとモイルのおっさんは示し合わせたように同時に首を縦に振る。
「わ、わたしたちもなにも聞こえなかったわよね? あなた」
「う、うん、そうだね。僕たちもなにも聞こえてなかったよ?」
近くにいたアリシャちゃんご家族も空気を読んで聞こえない風を装ってくれる。
「ええー? さっきお姉ちゃんの下もがっ――」
素直なアリシャちゃんが口走る前に、そっと阻止したのはナイスファインプレーですお母さん。
誰も何も聞こえていない様子に、だんだんとマルガリーゼの表情が和らいでいく。
もちろん冒険者の青年ともう一人の門番も、マルガリーゼにそっと視線を向けられるとぶんぶんと首を横に振って聞こえてないアピールをしてくれた。
今ここにみんなの気持ちが一つになり、素晴らしい奇跡が起きた瞬間だった。
「そ、それじゃあもう日が暮れるし、お嬢ちゃん達の手続きも済ませてしまおうかの」
気を利かせてくれたモイルのおっちゃんがそう促してくれ、姉妹やアリシャちゃんご家族と一緒に歩き始めた時、それは起こった。
それは嘘から出た実というものか、それとも神のいたずらとも言うべきものだろうか。
その瞬間、割と強めな一陣の横風が門の前を舞った。
その瞬間、先頭を歩いていたマルガリーゼのスカートも舞った。
幸いローブを着ていたので後ろまではめくれなかったが、前はばっちりめくれたであろうことが後ろからみていてなんとなくわかった。
そして”こちらを見ていた”受け付けをしていた門番と冒険者の青年のギクシャクした目が俺と合う。
ここでやるべきことは分かってるはずだ、とアイコンタクトを送ると向こうも小さく頷いてくれた。
よかった。これで状況は悪化しないだろう。
女の子のマジ泣きほど手が付けられないのはないからな。
「あ、あの、なにも、見てません、よね?」
後ろからでわからないが、恐らく羞恥心でいっぱいのマルガリーゼだろう。
さあそこで「見てません」と答えればすべては丸く収まる。がんばれ二人共!
門番と冒険者の青年は一度お互いを見て頷き合い、さわやかな笑顔で、
『はい。濡れた下着は見てません!』
それ違えええええっ!!
「い、いやあああああっ!!」
砂埃が上がる程の猛スピードでマルガリーゼが門の中へと消えて行った。
「ああ! 姉さま!? すみません後を追うのでアビゲイルさんは先にギルドへ向かっててください! 姉さまあああああっ!!」
姉を負って妹も門の中へと消えていってしまった。
あーあ。せっかくみんなでお膳立てしたのに。
とりあえずその後、アリシャちゃんご家族と一緒に受け付けを済ませて門の中へと入ることが出来た。
ちなみに門番と冒険者の青年はモイルのおっちゃんから「なにをやっておるのだ」とお説教を受けている。
まあそこは年長者としてしっかり叱っていただきたいもんだ。
門を去り際にも、まだモイルのおっちゃんのお説教は続いていた。
「まったく、お前達はもっと女性の扱いを知るべきじゃな。……して、ちなみにお嬢ちゃんは何色じゃったか言ってみい」
いやあんたもなにやってんだよ。
ということで、ようやく町に戻りました。
そしてまだ一日も経ってないこの小説。
思い描いていたのだと10話くらいで三日ほど経ってる予定だったのですが。
なんですかね、こう、書いているとただの道中の会話だったり、すんなり門を通過するような場面でいろいろ付け足したくなるというか、思いついちゃうんですよね。
そしてそれを掘り下げたりしてる間に更新が遅れたりして…………。
これからも精進して執筆ペースを上げていきたいと思うので、本年もさりげなくよろしくお願いいたします。