第13話/エロくないよ! 匂いを確認してるだけ!!(by犬サイド)
遅らばせながらようやく投稿できました。
お待たせして申し訳ありません!
騎士のスキルの中に、その場で動きを止め数秒だけあらゆる攻撃を無効化するものがある。
ゲームでは不可避の大ダメージ確定の攻撃を前に、仲間を守るべく一人立ち塞がりその一身に攻撃を受ける猛者が多いことから【漢防御】と呼ばれるスキル。
冒険者の二人を助け出すのも、ファンシーキマイラの吐息を止めるのも間に合わないと判断したオレ様は、両者の間に飛び込み迫りくる炎を見つめ覚悟を決めてそのスキルを叫ぶ。
「<パーフェクトガーディアン>!」
その直後、炎がオレ様を直撃した。
直前に思わず目を閉じてガードするように両手を顔の前で交差させてしまったが、直撃したはずの火炎の吐息は、ダメージどころか熱ささえ感じさせない。
どうなっているのか片目を開けてみてみると、青く輝くバリアのようなものが手前50センチくらいのところから完全に炎を防いでいた。
スキル<パーフェクトガーディアン>はどうやら成功したらしい。よかった。割とマジで。
ファンシーキマイラの吐息も長くは続かず、スキル効果がきれるより少し前に止んでくれた。
危ねえ。あと三秒遅かったら食らってた。あとでスキルの効果時間とか確認しといた方がいいかもしんない。
内心ちょっとドキドキしていると、吐息が防がれたことにご立腹なのかファンシーキマイラがこちらを睨んで唸っているのが見えた。
しかし怒っている表情もどことなく愛らしいのはどうにかならんものか。
魔物とはいえアレを剣で斬るとかやりたくない。やったら愛玩動物を虐待したみたいな罪悪感に襲われると思うし。
ここはやはり遠距離でサクっとやってしまうのがこちらにも気持ち的ダメージは少ないと思われる。
「ワフワフワフンッ!!」
そんなことを考えていると、ファンシーキマイラが威嚇してるつもりなのか可愛く吠えた後にこっちにむかって突っ込んできた。
あー、そこで逃げてくれたら楽だったんだけどなぁ。まあやる気なら仕方ない容赦しない。
「黒き楔よ<ヘヴィチェイン>!」
迫りくるファンシーキマイラの周囲に魔方陣が浮かび、そこから高速で発射された頭に鎖がついた黒い十字の杭が手足や胴体へ突き刺さった。
闇魔法<ヘヴィチェイン>は、ダメージこそないものの捕らえた敵を数秒その場に縛り付け、速度低下の<鈍重>を付与することができる。
高レベルの魔物なら効果は薄いのだが、黒の杭が突き刺さったファンシーキマイラは俺の数メートル手前でその動きを完全に封じられていた。
逃れようともがくファンシーキマイラだが、悪いけどこのチャンスを逃す気はない。
「死の氷獄<イヴィルフロスト>!」
魔法の発動と同時、ファンシーキマイラの足元に巨大な魔方陣が浮かび上がり、視界を遮る程の竜巻のような猛烈な吹雪が舞い上がっていく。
ほどなくして吹雪が止むと、そこには辺り一面と全身に霜を生やして凍結するファンシーキマイラの氷像が出来上がっていた。
この魔法、凍結や凍傷といった他に闇魔法だけあって一定以上のダメージを受けるか、敵が低レベルだった場合に即死させる効果があったりする。
複数を巻き込めるので群れる雑魚相手にはよく使っていた闇魔法だが、果たして効果のほどはどうなのか。
「頼むから効果発動してくれよ……」
祈りながらも油断なく伺っていると、ピシリとガラスにヒビが入るような音がした瞬間、ファンシーキマイラの氷像が一気に砂のように崩れ落ちた。
ゲームと同じエフェクトが起こったところを見るに、どうやら即死効果はあったらしい。
よかった。これで傷つけて動物虐待みたい気持ちにならずに済む。
まあ倒した時点で虐待以前の問題かもしれないけど、相手は魔物だしそこは気にしないようにしよう。
さて魔物は倒したし、あとは冒険者の二人の少女が無事か確かめれば、
「きゃあああああっ!」
そう思っていた矢先、後ろから少女の悲鳴が上がった。
まさか他にも魔物がいて襲われてるのか!?
「おい! 大丈夫……か…………?」
慌てて後ろを振り返り駆け寄ろうとしたものの、その光景を見て思わず足と言葉が止まってしまった。
「きゃあああっ! ちょ、やめなさいよ! なんで人を舐めまわすのよこの犬っころはー!!」
見れば気を失っている剣士っぽい少女をかばうように抱いている魔法使い風の少女に、眷属である影狼達がすり寄ったり顔を舐めたりしてじゃれついている。
冒険者を守れと命じた二匹の影狼なのだが、仲間がじゃれついている様子を見てどうすればいいのか仲間と俺を交互に見返しながらおろおろしている姿がちょっと可愛い。
そうこうしているうちに、影狼達のじゃれつきが魔法使い風の少女が無抵抗なのをいいことにエスカレートしていく。
一匹が背後に回り込み、立ち上がってその肩に前足をかけると魔法使い風の少女は剣士っぽい少女を抱えていて重心がとれないようで、ころんと簡単に後ろへ倒れ込んでしまった。
そこへ遊び道具をみつけたかのように影狼が殺到し、思い思いにすり寄ったり甘噛みしたりしながらじゃれつきはじめる。
「あ、あはははっ! そこくすぐったいってば! ちょ、やめて、駄目だって…………ひゃん! こ、こら、スカートの中はほんとに駄目だってばあああああっ!!」
犬とかってなぜか人の股間をまさぐってくる時があるよね?
いまオレ様の目の前で展開される、影狼にスカートの中に顔をつっこまれてフンカフンカされている内股な少女の絵面。
これはあれか。ラッキースケベという部類に入るのだろうか? しかし、いいものだ。
「ひうっ、ぐすっ…………もういやぁ…………」
あ、やばい。あれはマジ泣きだ。
もうちょっと鑑賞していたい気持ちを残しつつ、オレ様は影狼達を止めるべく、スカートの中にもう一匹追加された少女の元へ急いで向かった。
小さい頃、公園で遊んでいたら散歩していた近所の犬にじゃれつきという突撃を受けて軽く吹っ飛ばされた経験がある作者です。
今回は告知していた投稿日より遅れてしまい申し訳ありませんorz
もともとは書けていたんですが、前回の終わりにある”シンプルな方法”というのでちょっと思うところがあり、一部直しているうちに気づいたらなぜかほとんど直している状況になって遅れてしまいまして反省。
いや、直す前は魔法ぶっぱなして吐息を防いだわけですが、それだとシンプルな方法じゃなくね? と思って色々考えているうちに違う考えが浮かんでこうなりました。
なんでこう、書いているうちに違う内容が思い浮かんでくるのかちょっと不思議です。
まあ作者的に納得できる形になったんでいいかなとは思いますが。
次回は今週中に投稿する予定です!!
※寒いと思ったらなぜか下半身の寝間着だけ半脱ぎしていた朝。