第10話/身も蓋もない魔物との初遭遇。
ちょっと遅くなりました!
最近仕事が微妙に忙しくなって帰って夕飯食べると執筆しようとする時間にいい感じで眠気が……。
ほんと毎日のように連載する他の作者さんたちはすごいです。
「アビゲイルさん!あの森を抜けたらあと少しで果樹園に着きます!!」
「了解!果樹園に着いたら俺はそのまま救援に向かうから、アリシャちゃんは避難しててくれ!」
頭の左右に悪魔のような捻じれた一対の角を持つ黒毛の馬を駆りながら、オレ様の前に座るアリシャちゃんの背中に答え、行く先を遮るような森の中へと突っ込む。
日の光が少なく薄暗い森の中は、意外にも大人が三人くらい並んで歩けそうな整備された道があり、そこをひたすらに馬を走らせる。
無属性スキルの<騎乗>のおかげか、元の世界ではやったことのない乗馬も難なくこなせている。よかったスキル取っといて。
出発間際にファンナさんが貸してくれた鞍と手綱の乗馬セットのおかげで、お尻もそんな痛くないし安定して乗れるのはありがたいことだ。
ギルドで魔物倒します宣言をしたあの後、ファンナさんに心配されたり冒険者達から止められたりはしたものの、最後はアリシャちゃんに判断が委ねられ、その結果救援に向かうことになった。
ちなみに乗ってる馬は闇魔法で召喚した〈魔角馬〉という、闇属性の馬型の魔物だったりする。
果樹園まで行くのに足はどうするのかと聞かれたのでこの馬を召喚してみせたところ、なぜか全員が唖然とした顔をしたのが不思議。
レベルもそう大したことない魔物なんだけど。
そんなことを思い出していると、道の先に遠く小さな人影のようなものが見えてくる。
馬の早さもあってどんどん人影へと近づいていき、かなり遠目ながらも高い身体のスペックのおかげかその正体がはっきりとみてとれた。
それは子供のような体躯に全身が緑色で、顔面に皺が寄った顔つきに大きな耳を持ったファンタジー物の定番ともいえる魔物、ゴブリンだった。
数は三匹だが、手にはこん棒や小ぶりのナイフを持って武装している。
多分レベルカンストしてるこの我が子の力ならたやすく屠れるだろうけど、今は急ぎの目的がある上に非戦闘員であるアリシャちゃんが一緒にいるわけで。
ゴブリン達がこちらに気づいたようで、なにやらゲギャゲギャと武器を振り回しながら騒ぎ始めた。
その奇声にアリシャちゃんも気づいたようで、こちらに慌てて振り向いて悲鳴のような声をあげる。
「ア、アビゲイルさん! どうしようゴブリンがいま――――」
ドゴグシャッ! パカラッ、パカラッ、パカラッ――――
アリシャちゃんの言葉を遮るように一瞬でゴブリンを蹴散らし、何事もなかったかのようにそのまま走り続ける魔角馬。
「うん。ゴブリン、”いた”ねえ」
「…………えええ?」
それに対し身も蓋もなく返したオレ様に、理解が追い付いつかないのか小首をかしげるアリシャちゃん。
いやだって。どうしようか考えてたら魔角馬が思念みたいなので「蹴散らしていい?」と聞いてきたので、「いいよ?」と気軽に返してみたら有言実行になっただけなんだよ。
というか異世界魔物初遭遇の場面がまさかのひき逃げみたいな形になるとは。ラノベとかだったら戦闘シーンに突入とかなんだろうけど、現実は厳しいということだろうか。
ともかくも事故(?)があった後、一分も経たないうちに森の出口が見えて来た。
「えーっと、森を出て左に進んだ先が果樹園になります」
さっきの理解しがたい現状に頭がいっぱいなのか、どこか棒読みで道案内をしてくれるアリシャちゃん。
諦めろアリシャちゃん。現実なんて得てして理解しがたいこともあるもんだ。
しばらく進んでいると森の木々がまばらになっていき、日の光が零れる量が多くなると共に低い草木が増えてくる。
その先には草を刈り地面を踏み固めただけの荒く整備された道が左右に伸びていて、アリシャちゃんの言う通りに左へと向かうように馬に指示を出す。
指示を出すと言ってもさっき馬から思念のようなもので話しかけられたので、試しにこちらからもやってみたら思ったことが伝わったようで手綱を操作しなくても馬は左へと進んでくれた。
ゲームの時にはなかったことだけど、これは便利だな。
「…………すみませんアビゲイルさん」
「お? 急にどうした?」
馬を走らせてる最中、急にアリシャちゃんに謝られた。なんだろう……あれか。お手洗いにでも行きたくなったか。
「冒険者じゃないアビゲイルさんに、こんな危ないことを頼んでしまって……」
違いましたよ。恥ずかしい。滅びろ、五秒前のオレ様。
それにしても、そんなことを気にするなんてアリシャちゃんはなんて律儀で可愛いんだ。
「んー、気にする事ないぞ? オレ様が決めたことだし、なによりアリシャちゃんみたいな可愛い子が泣いて困ってるのを見過ごすなんて、漢が廃るしな!」
元の世界では言えないようなことが、異世界に来てからなぜか言えてしまう不思議。まあ言えないだけで思ってることは本当だけど。
「あはは、アビゲイルさんは女の人なのに何言ってるんですか」
弱々しいながらも振り向いたアリシャちゃんは笑顔を見せてくれる。この笑顔をまた泣き顔にしない為にもがんばらねばなるまい。
女の子は笑っている顔がなによりも可愛いのだから。
「お願いします、アビゲイルさん。どうかお母さんやお父さん、お姉ちゃん達を助けて下さい…………」
俯きながら震える小さなアリシャちゃんの両手が手綱を握るオレ様の手に添えられ、縋るような声で頼まれた。
ふっふっふっ、これで燃えないのは漢じゃないね?
「任せろ!」
オレ様は手綱を操り、段々と見えて来た果樹園に向けてさらに馬を加速させた。
ええ、プロットでは馬から降りて一方的ながらも戦いらしい戦いをしてましたとも……。
そしていざ書き始めると脱線どころかひき逃げという現実。
過去と現在が一致しない作者の小説デス。
※寝ぼけながらマーガリンを塗ったパンに砂糖をかけたつもりがお隣の塩だった今朝orz。