あとがき
雪がちらちらと降ってきた。家にある一番分厚いコートを使う程ではないが、本格的に寒くなってきていた。冬の女王様が村からいなくなって6が月が過ぎた。春の女王様が事の次第を夏、秋の女王様に伝え、少しずつ季節の時期をずらしていき、数年はかかるが、最終的にはもとの四季のめぐりに戻していこうという事になった。1月に冬が来るのはやはり調子が狂うが、ちゃんと四季がめぐり、徐々に戻っていくならばと、村人および国民もおおむね認めている。
「...聞いた?秋の女王様が、きのう大樹から出られて、冬の女王様と交替したんだって」
アンちゃんはすっかり板についた編み物の技を存分に発揮し、瞬く間にケンちゃんの手袋を編んでいった。
「聞いた聞いた。とうとう来たって感じだよね」
ケンちゃんは座りなれたソファに横になり、暖炉の火を眺めながら、ミカンを剥いていた。二人はケンちゃんの家で集まって、何かをするでもなく、まったりとしていた。
「ねぇ、いつ冬の女王様の所に会いに行く?」
「なるべく早くに会いに行きたいなぁ。でも、冬の女王様、交替したばっかりだから、色々と仕事があって、邪魔になったりしないかな?」
「仕事って、なに?」
「う~ん、外を寒くしたり、雪を降らせたり」
「なによそれ。それって仕事なのかしら?」
「冬の女王様なんだから、きっとそういう事をするのが役目なんだよ」
「まぁ確かに役目って言われれば役目かもしれないけれど。仕事って言われたら、なんかちょっと違う気が...」
すると突然、コンコンとドアをたたく音が聞こえた。
誰だろう、お父さんは秋の仕事収めと同時に仕事仲間と飲みに出かけている。お母さんもいま買い物に出たばかりだ。
「ご、ごめんくださいぁい」
弱々しい声だが、かろうじて聞こえる。聞き覚えのある声だ。
「ごめんくださぁい、だ、誰かいませんかぁ?」
まさかこんなに早く、そして向こうから来てくれるなんて。
「ケンちゃんの赤い帽子を、返しに来ました。あ、あれ、このお家だと思ったんですけど。ケンちゃん、いませんかぁ?」
ケンちゃんとアンちゃんは嬉しそうに顔を見合わせ。ドアに向かって駆け出していった。