泥棒を突き出しました
毟れども毟れども、我が庭の雑草消える事なし。
じっと手を見る……。
え? 何をしているかって? 草むしりだ。
いやね、俺が薬剤を作ると、どうしても非常識な物が出来んじゃん。
売るには危険だし、放置するにもヤバイし……戦争を起こしても欲しがる馬鹿はいると思うんよ。
メリッサのは自分で調整が出来るみたいだけど、俺の場合は自重無しで完全にチートだからね。
こうして庭の草むしりをして生活に貢献している訳であります。
今更だけど、この店の内部を散策したところ、メリッサ一人で暮らすには広すぎんだわ。
とても少女一人で管理できるとは思えないし、俺がこうしてお手伝いしている訳だ。
勿論、錬金術で回復薬とかの製造も試みましたよ?
けどね、出来るものは全てトンデモアイテムなばかりな訳よ。
例えば……
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【神の毒消し薬】 ランク3
この世界全ての毒を浄化する解毒剤。
病人に使用するとウィルスなども浄化する夢の新薬。
更に体内の免疫機能を高め、100年は健康状態を持続させる。
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こんなのとか……まぁ、まだマシな方だね。
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【神の身体強化薬】 ランク4
一口飲むだけで極限まで身体能力を引き上げる秘薬。
効果時間も長く、10年は持続する。
追加効果で【戦意高揚・特大】【精神強化・特大】【狂人化・特大】
【経験値倍加・特大】【攻防力増加・特大】などが付加される。
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こんなのとか・・・・・・・バーサーカーが出来ます。
しかも、手に負えない危険な殺戮者が……持続時間が特にヤベェ……。
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【神の筋肉増強秘薬】 ランク3
一度服用するだけで、今日から貴方もマッスルボディ。
追加効果で【究極肉体美】【美しき筋肉への愛】【我が青春の薔薇の道】
【スーパー・ハイテンション】【戦闘時攻防率200パーセントUP】
【無敵のガチムチ】が付加される。
効果、永続。
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これって、もう呪いじゃね?
モーホーさんを製造してどうすんの?
【無敵のガチムチ】に至っては、馬鹿みたいの攻撃力が高まり、更に全ての攻撃を受け付けない鋼の肉体に作り替えるらしい。
しかも効果が永続って……、モーホーさんになったら二度と戻れないって事じゃん!
要するに、天下無敵のマッスル・モーホーが生まれる訳よ。
こんな恐ろしい物は見た事がありません。
禁忌の秘薬だと思います。ランクが低いのが救いだ。
これ以上ランクが上がったらヤバいと思う。
売れない秘薬を大量生産してしまった為に、僕ちゃんはこうして草むしりをしている訳であります。
問題は意外に庭が広く、雑草でなく薬草が生え放題でした。
しかも、何と【マンドラゴラ】や【竜眼草】と云った素材が群生してんのよ。
どうなってんの、この庭……? ランクの高い薬草が生え放題。
雑草を選別するのが面倒なのです。
普通は逆じゃね?
何故この店の庭が広いかと言うと、工業区画と農民の民家の丁度境にありまして、お隣さんはみんな農民で朝早くから防壁をよじ登って畑仕事に向かう。
何せ、門があるわけでは無いですし、一々遠回りをする位ならよじ登った方が早いんだわ。
区画整理を推進する事をお勧めしたいですね。
ゴブリンの侵入を許したとなると、明らかに防衛を基準に調整した方が良いと思いますよ。マジで……
話はズレたが、メリッサの家は広い。
何と、裏の鍛冶場があり、そこも持ち家だとか。
裏庭の門から向こうに行けるようになっています。
メリッサの話では、死んだお爺さんが細工師で、自分で工場を買い取ったらしい。
ついでにお婆さんに魔術を付加して貰い、魔導具を作っていたとか……凄い家系ですね。
どうりで広い家に住んでいる訳ですな、後で覗いて見ようかと思う。
鍛冶場は男の仕事ぜよ!
「それにしても……雑草、もとい薬草が生えまくりだな、分別するのがひと手間だ」
「おう、精が出るな、レン」
「おや、バーバンさん。壁の修理をしていた筈では?」
「そっちは、もう直ぐ終わる。裏の鍛冶場の方が気になってな」
「やはり手入れは必要か? 俺はまだ見てねぇけど」
「暫く使ていないからな、人が居なけりゃ家は傷みが早い」
「なるほど……」
いい人だ、義理と人情に厚い職人だね。
信用できる人って、そう簡単には見つからないもんだよなぁ~。
息子は最悪だけど……。
「何、見てんだ?」
「いや、それにしても鍛冶場かぁ~、俺が使おうかね」
「何だ? 鍛冶仕事も出来んのか?」
「多分、ソレっぽいスキルがあるから出来ると思うぜ?」
「多才だな、羨ましい限りだ」
「そうでもないんだけどな……」
自重知らずで制御が利きません。
どうしたら良いんでしょうかね?
「メリッサは……店番か?」
「まぁね、誰かが店に居ないと盗まれるだろうし、実際に盗難に遭ったからな」
「この辺りに、そんな馬鹿な真似をしでかす奴はいないと思うがな。皆、マーセラさんには世話になった口だし……」
マーセラと言う人はメリッサのお婆さんの名前だ。
何でも、以前は槍病が蔓延した時、薬を無償で提供したとか。
人格者ですな。
そんな祖母にメリッサは憧れ、錬金術を極めようとしている。
本当にいい子です。
「一人いるじゃん……口に出したくないけど」
「・・・・・・いたな、ダーメスか……あの馬鹿なら間違いなくやるだろう」
「断言しちゃうんですね……親からも疑惑の目を向けられるとは……」
「以前やけに羽振りがいいと思って問い詰めたら、この家から金を盗んでいやがった」
「すでに前科持ちだった?! そりゃ、信用できねぇわ!」
本当に働く気がねぇんだな、しかも金が無ければ盗めば良いと思っている辺り腐ってやがる。
今度会ったらボコってやる事にしよう。
そう言えば、何て名前だったっけ? 今聞いたような気が……。
だ、ダメダメ……駄目糞野郎? おや、違うか?
僅か0歳でボケたかな?
「何だったら、衛兵に突き出してくれても良いぜ? あんな馬鹿、もう知らん」
「すでに見限ったか……その内勘当される日も近いな」
「いや、もう既に勘当した……。どこで死のうが、もうどうでも良い…」
「早っ?! 逆ギレしそうな気もするけどよ・・・・・」
「あいつは弱いから大丈夫だろ? メリッサでも倒せるんじゃないか?」
うん、レベルアップした今のメリッサには勝てないな。
今じゃ一人前の錬金術師だし、魔術も半端ないですよ?
まぁ、俺のスキルの所為なんですけどね。
恐るべし、経験値のインフレ……。
「今のメリッサなら余裕だな、ぐうたらしてっから歳下にも抜かれて行く…無様」
「ここ三日でそんなに変わるのか?」
「……ちょっとしたズルがあってね。メリッサと俺にしか出来ないが、レベル上がりまくり」
「あー……なら大丈夫だな。アイツ、まだランク1だし」
「メリッサはランク3だ。一撃だな……」
「並の冒険者より強くねぇか? どんな手を使ったんだよ」
「知らない方が良い。メリッサの事を思ってくれるなら……」
メリッサの【鬼神聖母】は俺の特殊スキルをレベル1状態で使用できる。
俺みたいなレベル爆上げにする訳にもいかんので、取り敢えず調べてみると面白い事が判明した。
どうも、必要なスキルをセット出来るみたいなんだよね。
着脱は自由だから今はセットしていない。
しかも、スキルのオン/オフが可能、何て便利な能力でしょう。
俺なんか、殆どアクティブに作動してるから自分の意志で外す事が出来ない。
暴走状態なんだよ、畜生……。
「ま、いいか。んじゃ、鍛冶場の様子でも見てくっか! 結構、古い建物だからな。」
「あ、俺も行く。中の様子も確認したいしな」
「別に良いが、壊すなよ?」
「しませんよ、そんな事。俺が使うかもしれないのに」
「本当に多才だな。メリッサを養子にすればお前さんも、もれなくついて来るのか?」
「俺はオマケか? 子供作れや、まだ若いんだから」
「そうしてぇが、確実にできる訳じゃないしな。養育費も掛かるだろ」
「モンスター倒せば? 意外に楽に稼げるぞ?」
魔物を倒すと、何故か金が手に入る世界である。
楽に稼げるのは便利なんだが、この世界の摂理はどうなってんの?
俺、異常に金持ちなんですけど。
常識って何なんでしょうねぇ~……、真面に働くのが馬鹿らしくなるよ。
国一つ滅ぼせば一生遊んで暮らせんじゃね? やらないけど。
そんな馬鹿の事を考えつつ、裏門から鍛冶場へと足を運んだ。
鍛冶場は真上から見ると円形をしており、俺達が裏門から出ると真横の位置に出る事になる。
煉瓦で作られた煙突が、そこが作業場である事を主張していた。
因みに裏門は鍛冶場の横庭に繋がっているのだが、何故かここにも薬草の類が群生していたりする。
繁殖領域が広がってね? 何て逞しい薬草たち。
「何で、こんなに薬草が繁殖してんだ? 雑草を探すのが一苦労だぞ?」
「マーセラさんが実験で植えたのが繁殖したんだな。森に採取に行かなくて楽だろ?」
「まぁ、危険が無いからメリッサにはちょうどいいだろうが、入手困難な薬草はどうすんだ? あ、俺が採取に行けばいいか」
「冒険者ギルドに依頼すればいいんじゃねぇか? 危険は少ねぇぞ?」
「必要な時に手元に無いのは問題だ有るだろうし、自分で獲ってきた方が手っ取り早い」
チートな俺なら楽に採取できるだろうし、冒険者を雇う必要も無いだろう。
【真・神眼】があれば鑑定も出来るし、大概のモンスター何て雑魚ですよ、ははは……。
「しかし……暫く使ってないから、イタミが出てきてんな。壁板も浮いて来てやがる」
「日向の方が痛みが激しいようだな。あ、あそこなんか穴が開いてるぞ?」
鍛冶場を迂回するように周囲の状態を確認していくと、壁に穴が開いている箇所を発見する。
どうもこの作業場、かなり簡素な造の様だな。構造が適当だ。
多分、作業場に後から無理やり居住スペースを増築したように思える。
簡単に壁に穴が開けられそうなほどモロそうですよ?
現に人ひとり侵入できそうな穴が開いてますぜ……あれ?
壁に開いた穴を良く見ると内側に木片が散乱してるし、外側にはいくつか壁板をはがしたような形跡が……。
これって、もしかして……。
「なぁ、バーバンさん……この穴、おかしくねぇか?」
「あぁ、明らかに誰かが開けたようだな。外側の板に釘もついてるし、工具を使って剥がしたみてぇだ」
バーバンさんと意見が合いましたよ。
一見只の穴なんだが、明らかに不自然な個所がいくつかある。
綺麗に釘が抜かれてる個所もあるし、何者かが侵入した形跡がある。
泥棒のアジトになっている可能性も否定できないな。
―――ガタン!
「「!?」」
かすかに聞こえた物音に、バーバンさんと顔を見合わせた。
「中に誰かが居やがんのか?」
「泥棒が利用しているんじゃね? 暫く無人だったんだろ?」
「マーセラさんも、旦那が死んでから使ってなかったようだし……あり得るな」
「捕まえるか……どの道、このままほっとく訳にもいかんでしょ」
「だな、衛兵に突き出してやる」
意見が纏まり内部に侵入します。
穴を潜ると、そこは物置でした。
工具や作りかけの武器が乱雑に置かれ、どう見ても適当に放り込んだとしか思えない。
これは前の鍛冶師の持ち物だろうね、後で使わせてもらおう。
良く見ると部屋の隅っこにテーブルがあり、鍛冶師の工具とは思えないような道具が綺麗に並べてあった。
メリッサの爺さんは細工師だっけ? じゃぁ、これはその人が使った道具かな?
つーか、ここがその人の作業場なら、こんな広い家は要らなくね?
何で、こんな無駄に広い家を購入したのか謎だな。
誰かと同居でもしてたのかね? 職人仲間とか……わからん。
「音がしたのは奥の部屋か?」
「物置の隣は煙突を見るに作業部屋かな? そんな所に金目の物は無いだろうし、多分その隣だと思う」
「そんな事が分かるのか?」
「ちょっと待ってくれ、調べてみる」
そう言えばオートマッピング機能がありましたね。
うっかり忘れてましたよ、機能を作動させて…と、あ?
「誰かいるな……数は一人。作業場を挿んだ先に部屋が二つ、右側の部屋だ」
「レン、お前凄いな……そんな事も分かるのか?」
「無駄に能力があり過ぎてね。正直、持て余し気味」
「……なるほど、器用貧乏てやつか。馬鹿息子にも少し分け欲しいぜ」
「そんなところ、んじゃ奥へ行きますかねぇ~♪」
「何で、そんなに嬉しそうなんだ?」
物置を出て作業場へ出ると、この家の殆どが仕事する事を前提とした造なのが良く解る。
家の殆どが作業場で占められており、溶鉱炉や蹈鞴、作業抱いた鉄を熱する炉、少なくとも数人で作業する子が前提とした構造だ。
俺一人で使ったとしても広すぎる……まぁ、文句を言う筋合いはないけどね。
「あの部屋だな……場合によってはタコ殴りにしてやんぜ」
「バーバンさんの方が嬉しそうじゃね?」
腕をポキポキやってますけど?
なに? こういう喧嘩祭りに血が滾るタイプな訳?
職人さんは血の気が多いですなぁ~、献血に貢献しなさいよ。
あれ? 献血って何?
それは兎も角、俺達は僅かに開いたドアからこっそり様子を除く。
中では若い男が壁と一体化した金属製の扉に工具を差し込み、しきりに抉じ開けようとしていた。
かなり難航しているみたいだけど、どうやっても開かないぞ?
だって、その扉………
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【魔法式金庫】
金属製の金庫に強化魔法と封印魔法を付与した製品。
この金庫を開けるには、対となる鍵が必要。
多くの商人が好んで使用する一般的な代物。
耐火魔法も組み込まれているので、火事でも安心。
解除魔法で開く事も出来るが、金庫としての機能は失われる。
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鍵自体も魔法が掛かっているから、どうやっても開ける事が出来ないんだよね。
はっきり言って無理。
傍から見れば無駄な努力だよ。馬鹿ですねぇ~、凄く滑稽で笑えて来る。
ピエロも笑い転げる馬鹿っぷりだ。
……あ?
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種族 駄目人間 名称 ダーメス
Lv14 ランク1 職業 ニート駄目人間
スキル
【剣技】Lv1【盾技】Lv1【口八丁】Lv2
【下着窃盗(女性限定)】Lv5【性犯罪】Lv4【逃走】Lv4
【恐喝】Lv3【密売】Lv2【器物損壊】Lv3
【強盗】Lv3【覗き(女性限定)】Lv5【詐欺】Lv3
【追跡(女性限定)】Max
特殊スキル
【超不運・神】Max【変質的少女愛】Max【怠惰・神】Max
【無能・神】Max【傲慢なる糞野郎】Max【偉大なるパシリ】Max
【どうしようもない屑野郎】Max【異常なる性愛】Max
【哀れなピエロ】Max【金の亡者】Max【咬ませ犬・神】Max
【役立たず】Max【粘着質・神】Max【負け犬】Max
【不屈の調子扱き野郎】Max【超絶馬鹿】Max【永遠の小物】Max
称号
【ドラ息子】【根性なし】【チキン野郎】【サゲ○ン伝道師】
【懲りない性犯罪者】【ペド野郎】【何をやっても失敗する男】
【裸族の称号を持つ男】【社会の屑】【子供に負けた漢】
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別の意味でスゲェ―――――――――――っ?!
何、こいつ。マイナス方面の神スキル、五個も持ってやがる?!
つーか、このステータス、こいつの犯罪履歴?!
下着泥棒の常習犯で性犯罪者?! 異様にレベルが高いぞ!
そのスキルを【超不運】と【無能】が見事に打ち消してるよ。
犯罪起こしても失敗して、直ぐに捕まる訳だ。
だって、【哀れなピエロ】が入ってるし、こいつの人格が丸判り。
それより種族が駄目人間て、人間と分別されてんの?
全部マイナス方面なのに【不屈の調子扱き野郎】と【傲慢なる糞野郎】【どうしようもない屑野郎】【超絶馬鹿】があるから反省しないんだね。
【偉大なるパシリ】て、完全に捨て駒じゃん。
自分でステータスが見れるのに、何で自分を改めないのかね?
ステータスゲージもめっちゃ低いし、子供でも勝てんじゃね? あ、負けたんだ…。
てか、ダーメスって……。
「ダーメスっ! お前、ここで何してやがるんだっ!!」
「げっ?! お、親父ッ?!」
そう、バーバンさんの一人息子でした。
ステータスがあまりに酷くて名前に気付かなかったよ。てか、ダーメスって名前だったんだね。
バーバンさんに同情しちまうぜ……こいつ、最悪だ。
「い、いや……俺はこの家を借りたから、住み易いように整理しようかと……」
「嘘ならもっとマシに吐け、メリッサの持ち家だぞ? お前に貸す訳ないだろ!」
「あいつは俺の物だ! メリッサの物は俺の物、俺の物は俺の物っ!」
酷いジャイアニズムだ……。
あの傲慢な少年は、あれでも一応男気はある。
こいつと一緒になんかされたくも無いだろうなぁ~、……敵は討つよ、た○し君。
「んな訳ねぇーだろっ!! 心底メリッサに嫌われてんのが、分からねぇのか?」
「アレは照れ隠しに決まってんだろ、俺はあいつの夫だぜ?」
「本人は思いっきり否定してるけどな。ところでバーバンさん、半殺しにして良い?」
何でこんなに自信満々で言えるの? あ、【傲慢なる糞野郎】か!
「衛兵に突き出して鉱山送りにしても構わねぇ……心底こいつには愛想が尽きた」
「OK、丁度半殺しにしたいなぁ~て、思ってたんだよねぇ~♪」
俺は手をパキパキ鳴らしてダーメスに近付いて行く。
「ふん、この間はまぐれで勝てたからってチョーシに乗んなよ。俺は神のスキルを持つ男だぜ?」
「あー…確かに持ってるな。【超不運】と【パシリ】と【怠惰】、あと【粘着質】と【咬ませ犬】だろ? そのマイナス・スキルを誇ってんだ。死んだ方が良いよね? 人としてもう駄目でしょ」
「うっ……何故それを……」
「何やっても上手く行かないのは、性格がそんなんだからスキルに反映されたんだろ? 下着泥棒と性犯罪で何回捕まってんだよ、反省を全くして無いって裏付けだろ?」
「な、バラすなっ!! 何で知ってんだよっ!?」
「ダーメス……俺はその話、初耳だぞ?! んな事してやがったのか!!」
「ひ、ヒィィっ!?」
バーバンさん、マジギレ寸前。
そりゃ、息子が性犯罪に手を染めていたと知れば、誰でもキレるよなぁ~。
「あ、そう言えば俺に指一本で負けたんだっけ? 【指先一つでダウンした漢】の称号をプレゼントしよう」
「要るか、そんなも……ああっ?! 称号が入ってる?!」
スキルはゲージステータスの増減に影響を与える物が存在する。
俺が与えた称号が他のマイナス・スキルと相乗効果を発揮し、今のダーメスのゲージは真っ黒です。
つまり……子供でも一撃で殺せるほどに弱いのだ。
特に、【怠惰】【無能】【負け犬】【咬ませ犬】【役立たず】【永遠の小物】のコンボが見事。
どれもステータスをマイナスにする効果の様だ。正直、要らねぇー。
レッドゲージが僅かにあったのが、俺が与えた称号【指先一つでダウンした漢】により完全に消えたのだ。
しかも、全スキルがアクティブに作動しているので解除する事が出来ない。
鉱山で強制労働をしたら、間違いなく死ぬね。
思わずニヤニヤする私、悪人ですか? いいえ、ごぶりんです。
「何て事しやがるんだ、てめぇ!!」
「ただの親切だ、礼には及ばん」
「迷惑だ、取り消せよっ!!」
「無理」
称号の消し方なんて知らないモーン。
出来るなら俺がやってる。
「いやぁ~、良い事をした後は気持ちがいい」
「トンでもねぇ―事をしたんだよっ!!」
「お前にとってはな、俺はただの親切心だ。糞野郎に対する教訓だな」
「いや、レンよ……胸を張って満足そうにするのは良いが、可愛いだけだぞ?」
親父に可愛い言われても嬉しかねぇ―やい。
別に女の子に言われたいわけじゃないですよ? 俺は男なんです!
自分の見た目が美少女なのが悲スィ……。
「因みバーバンさん、こいつの罪歴なんですが、【窃盗】【恐喝】【密輸】【詐欺】【覗き】だそうです。ストーカーもしてるみたいだな、しかも【密輸】以外はレベルが高い。常習犯だ、多分…全部失敗してると思うけど」
「何でわか…てめぇ、【鑑定】か【看破】持ちかっ?!」
「残念、当たらずとも遠からず。両方の特性を持ってんよ? スゲェだろ?」
【鑑定】の能力は、アイテムや人物の情報を読み取るが戦闘では使えず、レベルに応じてするエル情報が多くなるのが特徴。対して【看破】も似た能力だが、これは戦闘で使えるので罠などの有無を調べる事が可能。然しながら知り得る情報は少なく、大まかに胆略化した情報しか見れないのが特徴である。
俺の場合【真・神眼】はその両方の良いとこ取りだけでなく、スキルの複写や罠など隠された物を問答無用で暴き出すのだ。詳細な情報込で……。
しかも固有スキルの部類に入るので普通では覚える事が出来ない。
迂闊に使うと周囲からとんでもない情報が脳内に流れ込み、とても処理できないのが難点。
幸い待機状態にする事は可能なので、齎される情報量の所為で脳みそがパンクする事は無い。
だが、待機状態でも自動的に情報を読み取り、処理しているので、俺の潜在意識内に蓄積され続ける事になる。
スキルが見れないのはこの為だ。
コピーしたスキルが大量に蓄積され続けるので、脳みそがシャットアウトしているのです。
考えてもみてください。見ただけで膨大な情報が飛び込んでくるんですよ?
待機状態にしておかなければ脳が破裂します。
「……待て、俺も参加させてもらう。馬鹿息子に引導を渡すのも親の務めだ」
「どうぞ。あ、息の根は止めないでくださいよ? こいつは、あっさり死ぬぜ?」
「手加減は出来ねぇな、コイツの性根を叩き直してから地獄に行ってもらう」
「それが親のする事かっ?!」
「親だからこそ、殺らねばならんのだ!!」
「殺すの前提っ?! 息子だぞ?!」
「最早、親子の情は無い……死ねっ!」
―――ボグッ!!
「ぎゃぼらっ!」
バーバンさんに殴られて吹っ飛んだよ、馬鹿野郎が……。
見る見るうちにHPが消えて行きます。
よほど腹に据えかねたんだね……手加減無しだわ。
あ、不味い……このままだと死ぬ。
「ライト・ヒール」
「おい、何でこいつを治療すんだ?」
「へへへ……助かったぜ。おい、この糞親父を何とかしろ!!」
うん、彼は何か勘違いしてますね。
「回復させたので、もっと殴ってやりましょう。徹底的に腐った性根を叩き潰すまで……」
「な? 助ける積もりじゃなかったのか?!」
「誰が助けると言った? 俺、一言もそんな事言ってないよね? それに、何で助けなければなんねぇ―の?」
「・・・・・・・ま、まさか・・・」
「生き地獄って奴を教えてあげるよ。死んだ方が幸せと思えるほど徹底的にね。お前、反省しねぇーし」
「良い考えだ。この糞餓鬼は身の程って奴を知った方が良いからな」
「たすけ、ふぎゅらべほぉあぁぁぁぁああああああああああああああああっ!!」
しこたま無間地獄を味わって差し上げました。
更生させてあげるんだから親切だよね?
やりすぎ? 倫理観? 人権? 何それ、おいしいの?
馬鹿は死んでも治らないんだから、体で解らせるしかないよね?
だってコイツ、【不屈の調子扱き野郎】なんだから。
反省なんてする筈がないのだよ。HaHaHaHaHa!
人間て、あんなに薄っぺらになっても生きていられるんだね。
生命の神秘を見ました。
あ、スキルに【G並みの生命力】が加わってる。
その後、日が暮れるまでボコり、廃人になった馬鹿野郎は衛兵にドナドナされ、無事独房送りへとなりました。
衛兵さんの話では余罪を含め、恐らく鉱山送りになるとの事…どうでも良い事だな。
「……何処で教育を間違えたんだろうな……」
バーバンさん……背中に哀愁が見えてるよ。
糞野郎が衛兵の連行されて行くのを悲しそうに見ている。
お世話になっていますし、何かしてあげられませんかね? うーん……。
あ、良い物がありましたよ!
「バーバンさん……良かったら、これを使ってみてください」
「ん? なんだ、コレ……」
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【神の精力剤】 ランク3
身体能力を一時的に上げる秘薬。
副次効果で【性欲を持て余す】が付与。
男女二人で服用すると、受胎率が80パーセントUPする。
効果が一週間持続する。
効果時間中は一切体力の消耗は無くなるが、性的興奮が収まらなくなる。
夜がマンネリな方にお勧めの商品。
子供が出来ない人達の強い味方。
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うん、これはもう媚薬だよね。
しかも、ほぼ確実に子供が出来ますよ。
何でこんなのを作ったのかって? 偶然落ちてきた薬品が混入した結果です。
数もそんなにありませんよ? 作り方は覚えたけどね。
「・・・・・・何で、こんなものを持ってんだよ?」
「偶然できちゃったんです。これを使って跡取りを作りましょう」
「そんな気分じゃないけどな。まぁ、貰っておく……」
あ、興味津々ですね?
既に馬鹿息子の事を忘れてますね?
口元がぴくぴく動いてますぞ?
「使うなら、仕事が無い時の方が良いですぜ?」
「ここが終わったらしばらくは暇だ。家具の内職でもするさ、割と有名なんだぜ?」
「お~、じゃあ、何か必要な物が在ったら注文しますよ」
「おう、任せな。にしても……仕事が進まなかったな…。悪いな、工場の穴は後で塞いでおくからよ」
「いえいえ、明日も頑張ってください。 何もお構いできませんで」
「んじゃ、今日は上がるぜ」
「御苦労さまでした」
バーバンさんは工具を片付けた後、自宅へと帰って行った。
その足取りはもの凄く軽いように見えたんだけど……今夜にでも使う気だな、アレ。
俺も店の中に戻ったのだが、そう言えばメリッサはどうしたんだ?
気になったんで探してみたら、店のカウンターでぐっすりおねむです。
いつから眠っていたのでしょうかね? 昼見たときには起きてたんだけど……。
あれ、て事は……夕食は俺が作るのか? まぁ、別に良いけどさ。
「平和だねぇ~」
俺は仕方なく厨房へ足を向けた。
食事は大事ですからな。さて、何を作ろうかねぇ~♪
アットの街の一日は、こうして何事も無く終わるのでした。
明日は鍛冶に挑戦だ!