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 神域は変な方向に変わっていた

 気が付けば、俺は暗い闇の中にいた。


『ここは・・・・・どこだ?』


 周囲を見渡しても闇が広がっているだけ……。

 何故か俺はベットの上に寝ており、何故かキャミソールを着ていた。

 なんでっ!?


 自分の境遇に驚き、一瞬だが思考が停止した。


『な・・・・何が起きている・・・』


 心の底から湧き上がる言いようの無い不安。

 本能が全力を挙げてこの場から逃げる事を告げている。

 その逃走本能の赴くままに、俺はベットを降りようとした


 ―――ガチャ・・・・


『へっ?!』


 手首に感じた違和感。

 良く見ると、なんと手首に枷が填められていた。

 しかもベットに鎖で繋がれている。


 俺は必死になってその鎖を引き千切ろうとしたが、鎖は一向に切れることは無い。

 ば、馬鹿な……ただの鎖で俺が繋がれるなんて、ありえない。

 焦る俺は何度も鎖を外そうと足掻く。


 ―――カッ!!


『!?』


 突如、俺の背後スポットライトが当たり、俺は思わずその方向を振り返った。

 其処には燦然と光に照らされた奴が、無駄に意味も無くセクシーにポージングをして立っている。

 コイツは・・・・・・ホモだぁ!! 薔薇の伝道師だぁっ!!


『俺様を本気にさせて於いて、逃がす訳ねぇだろ?』

『なっ?! な、なななななっ!?』


 ヤバい……この状況はヤバ過ぎる!!


『良い格好じゃねぇか・・・・・愛し甲斐が有りそうだ・・・』


 奴は獲物を見るような目で、舌なめずりしながら俺に歩み寄って来る。

 しかも・・・・


『待てっ! 何でシャツを脱ぎながらこっちに来る!!』

『わかってんだろ? これから何をするのかよぉ~』

『ヒッ!?』


 俺は必死になって全力で力を籠め、鎖を引き千切ろうとする。

 けど・・・・・・切れない。


『無駄だ。お前はこれから俺様の物になるんだ……それを望んでいる協力者もいるしな』

『き、・・・協力者?』


 奴の背後に再びスポットライトが当たり、そこに居たのは……


『えへへへ♡ ご主人様、男同士も良い物ですよぉ~? たっぷり愛されてくださいね♡』

『モーリーっ!? てめぇ、売りやがったなっ!!』

『私は此処で見学させてもらいますねぇ~♡』


 不味い、逃げ場がねぇ!?

 それ以前に、逃げられねぇ!!


『もう、良いよな? 俺様はもう、待ちきれねぇんだが』

『オッケーですよぉ~♡』

『良い訳あるかぁあああああああああああああああああああああああっ!!』


 俺の意見は通らなかった。

 意志すら完全に無視された。そして・・・・・


 ―――ジィィィィィィィィィッ!


 奴は、股間の真理の扉を開いた。

 そこで俺の目にしたモノは、神をも恐れぬ禁断の斜塔。

 何処までも高くそそり立つ、巨大なバベルの塔だった。


『ぽんぎゃぁあああああああああああああああああああああああああっ!?』


 破壊力抜群のICBMです!! 核爆級です!!


『さぁ~……お楽しみの時間だぜぇ~♡』

『く、来るな・・・来るんじゃねぇ!!』

『そんなに怯えるなよ。増々愛おしくなるじゃねぇか・・・』


 しきりに鎖を引っ張るが、どうしても引き千切る事が出来ない。

 な、何故だっ?! 何故切れない!!

 

 そして・・・・・・奴は俺の前にいた。


『今日からお前は、俺様のモノだ…』

『ひぃいっ!?』


 奴の顔が目の前に近付く……


 俺は恐怖で涙が止まらない。

 絶望が、俺の目の前にいる。


 だ、誰か・・・助け・・・・


 アァ―――――――――――――――――――――――――――ッ♂


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


『報道規制。内容はお見せできません』




「ほんぎょろもふへはんAWむ@*§ΔΓΞΘ!!」


 ハァハァ・・・・・夢?

 ・・・・・・酷い夢を見たもんだ。

 最近、何度もこんな夢を見る……。

 どうやら、ギルドでの事がトラウマになっているようだ。

 まさか、あんな危険な奴等がいるとは・・・・・・恐ろしい。

 世も末だと思うぞ、深刻にわりとマジで……。


 俺は荒くなった呼吸を落ち着けると、深い溜息を吐く。

 何となく窓を見上げると、小鳥たちが幸せそうに自由を満喫していた。


「いいなぁ~・・・・・・・・・・」


 もう、俺は末期だと思う。

 あの日、ギルドに行かなければ……こんなトラウマを抱える事は無かっただろう。

 ギルド、怖い。ギルド、怖い。ギルド、怖い。ギルド、怖い。ギルド、怖い。

 あそこに来る奴等が怖い!!

 

 これでも少しはマシになったんですよ?

 あの日の翌日、俺は本気で泣きました。先ほどの夢よりも酷かったとです。

 内容? 言えません!! あまりにも悍ましい・・・・・・・・・・・・・。

 アレを喜ぶのは腐った方々だけですぜ?

 それでも知りたい? 駄目です・・・・今でも俺は涙目なんですよ?

 本気で泣かしたいんですか?


 今だって本気で泣きそうです。号泣モノです。

 俺が女だったら、世の野郎共をいちころで落す自信があるよ。

 自慢できないし、やりたくもないけど……。


 危険な人達を、周りにこれ以上増やしたくはありません。


 まぁ、朝が来たなら仕方が無い。朝食の準備をするか……。

 モーリーとメリッサですか?

 多分、モーリーは徹夜明けだと思う。メリッサは、恐らく調合中に寝ちゃってると思う。

 前者には何も言わないさ、メリッサはいつもの事だし……慣れって、怖いね。


「着替えて、朝食の準備でもするか」


 これが俺のいつもの日課です。

 俺はベットを降りると、傍にあるクローゼットを開けて着替えを取り出そうとした。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 何で、スケスケのキャミがあるの?

 口じゃ言えない内容の下着もあるけど、誰が入れたんだ?

 思い当たる奴は一人しかいない。


「そろそろ・・・・・・本気で始末しても良いような気がしてきた」


 奴は、外堀から埋めて来る事にしたようだ。

 マジで今後の対応を考えた方が良いな。



 * * * *


 軽く朝食を済ませた後、モーリーは二度寝に向かった。

 やはり徹夜明けのようで、目の下にスゲェ~隈が出来てた。

 何があいつを其処までさせるのだろうか? 俺には全然わからない。

 分かりたくも無いけどね・・・・・・。


「メリッサも、また調合か?」

「・・・・ん~・・・・採取・・・行きたい・・・」


 おや? 今日は違うパターンですな。

 実に珍しい。


「この辺で採取される薬草の類は全部持っているだろ。これ以上、必要か?」

「・・・・知らない・・・・素材・・・欲しい・・・」


 となりますと、魔の森とやらに行かねばならんが……正直お勧めは出来ないな。

 採取になると突然消えるからなぁ~……、迷子になられると困る。

 俺としては神域の様子を見てみたいし、如何したもんだろうね?


「聖域に行ってみるか? もしかしたら、知らない素材があるかもよ?」

「・・・・ん・・・行く♡・・」


 嬉しそうだね?

 まぁ、聖域は魔力濃度が高くなるみたいだし、薬草の類が成長しやすい環境になるそうだ。

 因みに、この情報は俺の保有するスキルの説明欄から得たものです。

 ステータス、最近見てない? 多すぎて表示できない程です。

 必要とした物しか表示されないんですよ。

 歩いてるだけで、他人のスキルを無意識にコピーしているみたいですから……。


 コレ、暴走じゃね?


「・・・・モーリー・・・どうするの?・・・」

「・・・・・置いて行く。夕方までに帰れば大丈夫でしょ」


 ヤオイ本を製作していた奴など知らん。

 寝ているなら置いて行きます。


「戸締りして、準備ができたら鍛冶工房に集合な?」

「・・・・・・ん・・・」


 では戸締りをしてきますかね。


 そう言えば、最近は神域に行ってないな?

 いったい、どんな状況になってんのかねぇ~♪



 * * * * * * * * * * * *


『『『『セイッ! ハッ! ハッ! セイッ! ハッ! ハッ!』』』』


 何だ、コレ……。

 転移ゲートを潜ると・・・・・・


『『『『イヤァッ!! ハッ!ハッ!ハッ! ツェイッ!! ハッ!ハッ!ハッ!! 』』』』

「声が小さいっ、もっと本気でやれっ!! 腕を上げろっ!!」


 其処は少○寺だった。


 何で、こんな状況になってんの?

 何やら、ウチの眷属達がそろいの道着を着て、一心不乱に武術に打ち込んでおります。

 暫く来ない間に、いったい何が起きたんだ?


 我が眷属達が整然と並び立ち、全員が同じ型稽古を取り込んでいる。

 ここから見ると壮観ですが、設定では俺の城だよね?

 まぁ、確かに鍛錬場は元からありましたが、木人なんて何処から用意したんでしょ?

 数名がいつ終わるとも知れない乱取りを繰り返している。

 

 分からん、この地で何が起きているんだ?


「おぉ! これはレン様、お久しぶりに御座います」


 白の長衣姿で両手を合わせ挨拶して来たのは、水妖族のウォードだった。

 まるでどこかの武術家の如く隙が無い。

 可成りの功夫を積んでいるようだ。


「見事なまでに鍛えているようだな・・・・」

「これも、レン様の教えによるものです」

「教え?」


 あれ? 俺、何かこいつ等に教えたっけ?


「はい。あの日、レン様が打った麺を見て衝撃を受けました」

「麺?」

「えぇ……そして悟ったのです! 料理に必要なのは心・技・体の三つの要素だと」


 あぁ! あったね、そんな事。

 あれぇ~? ひょっとして、俺の所為?


「感銘を受けた私はこの場所で、己を鍛えるべく日々修練を重ね料理に打ち込んだのです!」

「いや、どう見ても料理とは関係ないよな?」

「とんでもない! 料理とは修羅の道、食材を見抜く鋭い目は心が清く無くては為りません。様々な食材を調理するには血のにじむような修練の果てにあり、それを行うには鍛えられた肉体が必要不可欠!

 料理とは、正に戦い(食材との)の中にこそ高みへと近づく道筋が見えるのですよ。それをお教え下さったレン様には感謝の念が堪えません」

「そ、そう……なのか……」


 やっべぇ~、やっちまった。

 やらかしちゃってたよ、俺っ!


「見てください。まだ未熟ですが、鍛えられた彼等の姿を」


 ウォードが指さす方向を見ると、棒術を用いて武闘…もとい料理人が、凄まじい勢いで麺を打っていた。

 その麺生地が捏ね上がると、今度は別の料理人がヌンチャク状の包丁を振り回し、巧みに麺を切り分けている。

 他にも青龍刀で食材を解体する者や、正拳突きを叩き込み焼売の種を作る者達が目に映る。


 何よこれ、スゲェ~~~~~っ!!


 少○寺でなく、料○寺になってたよ。

 TV版、味っ子に出て来たような施設になってる?!

 その内、ロ○・コックなんて出現しませんよね?


「・・・・・・アレで未熟なのか?」

「えぇ……まだまだ功夫が足りません」


 何処まで厳しいのよ、料理道!


「私達は心身を鍛え、医食同源の極みを目指しています」

「果て無き荒野の道を行くんだな・・・・・」

「例え途中で力尽きようと、後を追う者達に秘伝レシピは残す積もりですよ?」


 凄い覚悟を決めちゃってるよ。

 アナタは何処の師夫ですか?


「牛鬼族や小狼族の姿があるが、あいつ等は?」

「彼等は己を鍛え、武の道を行かんとしている者達です。例え道は違えども、我等は須らくレン様の眷属ですから、出来るだけ助け合うようにしています。修練もその一環ですね」

「あぁ・・・・・仲良くやっているみたいね」


 予想以上に斜め方向に突き進んでいる気がする。

 燃えよ料理道。


「何か邪魔したみたいだな。鍛錬を続け……あれ? メリッサは何処に行ったんだ?」

「あの娘なら、あそこで餃子を食べていますが?」


 はずれの方で調理をしている一団の中に、メリッサが紛れ込んでいた。

 片手に皿を持って、満足げに餃子をパクついております。

 朝食、足りなかったんですか?


 その後、58皿の餃子を食べたメリッサを連れて神武帝城を後にした。


 長い階段を下り、漸く麓の村が視覚に入る場所に辿り着くと、俺は我が目を疑った。


「マジですか・・・・・・いつの間に・・・」

「・・・ん・・・・・賑やかそう・・・・」


 眼下に広がる雄大な景色の中に、この間まで存在しなかった城塞都市が出来ていた。

 見た所中華風なのだが、所々に非常識な砲台が見受けられる。

 明らかに文化の水準が掛け離れた代物だ。


「何処の軍事要塞だよ・・・・・」


 ほんの少しだけ目を離していた間に、いったい何があったのさ!

 この神域は大艦巨砲主義なの? どう見ても大規模戦闘を想定した建造物だよねぇ?

 この神域はデンジャーワールドなのか?

 何やら整然とした列で戦士たちが陣形を整えていますが、君達は三国統一でも目指すおつもりなのでしょうか?

 どう見ても国を相手にする陣形ですよね? 魚鱗の陣とか、鶴翼の陣とか?


 気分はもう三国志か戦国時代だよ。


 どうでも良いけど……


「何で、周りの岩山に【泰山夫君】とか【刀八毘沙門天】とか、【風林火山】なんて書いてあるんだ?」


 誰があの岩肌に刻んだんだ?

 少なくとも、俺じゃねぇぞ?

 しかも、その上に【桔梗紋】とか【真田六文銭】が刻んであるし……。

 あっ、【葵の御門】と【武田菱】まであるぞ? 基準が皆バラバラじゃん。

 他にも色々あるけど、やめておこう。俺の精神が持たん。


 誰の趣味だよ。


「やはり、デンジャーワールド化している」


 観光名所にしたら儲かるかね?


「・・・・レン君・・・・早く下りる・・・・」

「だな・・・・何か、釈然としない物があるけど」


 兎に角、麓まで下りないとね。

 俺達は採取に来たんですから……嫌な予感はしてるけど。

 

 

 * * * * * * * * * * * *



 麓まで下りると、そこは長閑な田園風景でした。

 神武帝城まで登る階段の前に、石畳で舗装された道が街まで続いている。


 周囲にトーテムポールやらホルスの神像、モアイ像が設置されていなければ良かったんだけどね。

 誰が設置したんだ? 

 上から見た時に見えた岩が、スフィンクスとは思わなかったけど……。

 風景に隠れて分からなかったんだよ、気にもしなかった。


 凄く居た堪れない気分を引きずりながら、俺達二人は街に漸く辿り着いた。

 こんな神域に誰がした!


 何とも言えない複雑な感情を押し殺し、俺達は街の門を通る。

 其処は僅かな日数で作り上げたとは思えない、かなり整備された町並みが広がっていた。

 しかも、住人は全て亜人種。

 うちの眷属達も居ます。あれ? 牛さん達の村が見当たらなかったけど、どうして?


「いつの間にこんな事に……アットの街より繁栄してねぇか?」

「・・・・・・・・・ウプッ・・・・・気持ち悪い・・・・・」


 うん、人ごみに紛れるのは苦手だったよね。

 メリッサが凄く顔色が悪い……引き籠っているのが原因だけど。

 さっきの餃子、リバースしないでくれよ。

 酸性の香りが漂うアシッド・スライムは見たくありませんぜ?


「それにしても……これは随分と………」


 凄く賑やかです。

 通り過ぎる人たちの顔に、難民であった時の陰鬱さが見当たらない。

 でもさ、これは一時的な避難なんだよね。


 そんな中、俺は見知った顔を見つける。

 一人は……あれ? あの少年、フレアランス王じゃねぇの? 何でいるんだ?

 もう一人は当然のごとく居る豊穣の神、イネアレーゼ。

 俺の傘下に加わった先輩なんだけど、残念臭が漂う女神さまどす。


 あっ、目が合った……。


 彼女は俺を発見すると、満面の笑みを浮かべ彼女は此方へと走り出す。


「…………………」


 うん、何を言っているのか聞こえない。


「………ま………………す……………」


 走りながら、彼女は両手を背後に手を隠した。

 なに? 嫌な予感が増大中。


「・・・・・・・れを・・・・・・ぐ・・・・・・・・い・・・」


 彼女が取り出したのは、深紅のゴスロリドレス。フリル倍増……?!

 いや、もう片方はチャイナ服?! それを俺に着ろというのかっ!!


「これは、きっと似合いますよぉ~~~~~っ♡!!」


 即行で走る俺。

 誰がそんな物を着るかっ!!


「何で逃げるんですかっ、折角似合いそうな服をご用意したんですよぉ~~っ!」

「誰だって逃げるわっ、単にあんたの趣味だろっ!!」


 何故どいつもこいつも女装させたり、薔薇の道に落とそうとするんだっ!!

 お前等には、人の人権を無視してまでそんな物を押し付ける権利があるのかっ!!

 断る、断固として断る……あっ?!


 ―――びたぁあぁん!


 こけた。

 何故……て、俺の足に絡みつく銀色の糸。

 ま、まさか……


「・・・・・レン君・・・着て・・・見せて・・・むふぅ~~~っ♡」


 メリッサ?! お前もかっ!!

 どこぞの皇帝が裏切られた時の気分が良く解る。

 俺の周りは敵ばかりだっ!


「追着きましたよ、レン様♡ 観念してこれを着て見せてください」

「こ、断る!! 俺には男としての矜持が…」

「そんな物はありませんっ!!」

「おぉいっ!? 何を勝手に決めてんのぉ? 俺の自由意思は尊重されねぇのっ?!」

「そんな物は、可愛いの前には無力です!!」


 ―――ズバァ――――――――――――――――ン!!


 だ、断言しやがった。

 しかも、何気に俺の人権すら完全否定しやがった。 

 何でこんなのが女神やってんの? 明らかに人選をミスしてんじゃん!!

 神よ、あんたの人選は間違っている!!


「この二つが駄目でしたら、狐耳尻尾眼鏡スクール水着赤リボン白装束が有りますよ?」

「カオス!? それは既に混沌の領域だっ!!」


 何故に、全てをファイナルフュージョンさせるんだっ!

 属性が二つあれば充分だろうし、三つ以上は明らかにドン引きモノだろ!!

 そんなに属性を融合させたら、シンプルな魅力が破壊されるだろうが!!

 俺はそんなに大量の属性力は持っていない!!


「・・・・黒髪・・・・褐色・・・赤目・・・・角・・いっぱい・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」


 あ……属性力、かなりありました。


 だが、其処に狐耳や尻尾、スクール水着などを融合合体させろと?

 凄く際物になるだろう。

 傾奇者もびっくりのドン引き生物になるぞ?

 君は、私に道化に為れとでもいうのかね?


「大丈夫、きっとお似合いになりますよ?」

「・・・・ん・・・・見たい・・・・」

「何より男の娘ですし、きっと素晴らしいと思いますね」


 ―――プチッ!


 その時、俺の中で何かの切れる音がした気がした。


「し……神力開放、プラス鬼神化!!」


 この時の記憶を、俺は覚えてはいない。



 * * * * * * * * * * * *


 気が付けば、俺の周囲は瓦礫の山だった。

 俺の周囲200メートル圏内が焦土と化し、周りには人っ子一人存在しなかった。

 いや、どうやら攻撃範囲から逃れたようである。

 

 見た所、俺は多分だがキレたんだろうと思う。

 どんな攻撃をしたのかは覚えていないが、其処をイネアレーゼが全員避難させたみたいだと予測する。

 何故なら焦土とした場所からすぐに結界が張られており、そこから先が全く被害が無いからだ。

 周囲の状況がそれを柔弁に語っていた。


「酷いですね。そんなにお嫌なら、きちんと仰って下されば良いのに……」

「聞く耳、持たなかっただろうがっ!! どの口でほざくっ!!」

「ただの冗談ですのに……」

「嘘だ。完全にマジだったろ、アンタ……」


 こんなのが女神で良いのか? 重責から逃れたら自重しなくなってんじゃねぇか。

 しかも、その重責を俺に押し付けやがったし……かなり太い性格をしてんぞ。

 駄女神の分際で……。


「申し訳ありません。昨夜は徹夜だったものでして、今朝がた此処に帰って来たので気分が高揚していたようです」

「徹夜? 何で? 女神ってそんなに忙しいの?」

「いえ、知り合いから本の制作の手伝いを頼まれたのです」


 なんだろ、何かが引っ掛かる。


「スクリーントーンからベタ、コマによっての集中線などを描いたり……」

「待て、それってまさか……道具店の牛幼女の手伝いか?」

「良くお分かりに。彼女の新刊は凄く刺激的ですよ?」


 女神よ……何故アレを始末しない。

 アンタも腐ってしまったのか?

 それより、ちょくちょく来てたの?! 全然気づかなかった。 


「少し、テンションがおかしくなっていたようです。申し訳ありません」

「女神も堕ちたか・・・・・・恐るべき腐敗速度・・・・」


 何処まで感染が広がったんだろう。

 これはもう、ソドムとゴモラの街の如く、メギドの焔で熱消毒するしかないのではないでしょうか?

 たった一個の腐ったリンゴがエチレンガスを発生させ、周りのリンゴを熟成させるどころか急速に腐敗を加速させる如く、腐教活動は広範囲に広まっているようだ。

 まさか、その先兵に豊穣神が加わっているとは信者達も思わないだろう。


 あぁ…神は、死んだ・・・・・・。


「さぁ、行こう。カンパネルラ・・・・・・世界は邪悪な腐教によって汚染され、汚らわしくも悍ましき教義に満ち溢れている」

「ちょ、レン様? 目が正気ではありませんよ?」

「今こそ立ち上がる時、聖戦の時は来たれり! 集い来たれ強者共よ、悪しき輩を排すべく邪悪な信徒共に正義の鉄槌を下さん!! 歩みを止めるな、突き進め、邪心を叩き潰すまでぇ~♪」


 フフフ・・・・汚物は消毒だぁ!!

 穢れた信仰は排除すべきなのだよ、戦争です! 皆殺しです!!


「あぁ!? レン様が、レン様がギアスに掛かってしまいました!?」

「我は修羅、全てを破壊する修羅でござる!」


 さぁ、始めよう。愚か者共に死の終焉を!!


「・・・・えい・・・」


 ―――キュッ!


 その時、俺の首に何か締め付けられた感覚があったようだが、記憶が飛んだ俺には何が起きたか分からなかった。


 意識が闇に落ちる・・・・・。


 

 * * * * * * * * *


 意識を取り戻すと、そこは見慣れぬ部屋のベットの上だった。


「知らない天上だ・・・・・」


 必ず一度はやるネタ。

 ところで、ここは何処? 

 

 探索するが如く周囲を見回しながら部屋を出る。

 何と言いますか、かなりファンシーな家だった。


 部屋の至る所にぬいぐるみと、やけに可愛らしい服の数々。

 時折目に入る腐敗の聖書は見なかった事にしよう。

 どうでも良いが、全く落ち着けない家だ。


 廊下を進むとリビングに出た。

 やはりここもファンシーワールド。ピンク一色です。

 良く見ると、ひとりの少年が落ち着きの無い仕草で紅茶を飲んでいた。

 ・・・・・・フレアランス王その人です。

 以前上げた神薬で、えらく若返ったようですな。


「おぉ! レン様、お気づきになられましたか」

「元気そうだな、王様。所で、この家の持ち主はまさか……」

「えぇ、イルモール神様の持ち家ですな」

「やっぱり・・・・・・」


 思いっきり趣味に走ってやがる。


「落ち着くのは無理だな・・・・・・男が住める部屋じゃない」

「・・・・・・・そうですな」


 例外もいそうだけど、それは極めて少数派だろう。


「しかし、何でこの神域にいるんだ? 仕事があるだろうに」

「イルモール神様との会談中、この神域に迷宮があると聞きましてな。何とか責務を片付けて挑戦しに来た次第です」

「男なら冒険は憧れるものだからな、若返って血が滾ったか?」

「お恥ずかしい限りで…。ですが、今の己を試してみたいと思い至り、逸る気持ちを抑えられませなんだ」


 体が若返って、心まで若返ったんだろうね。

 まぁ、気持ちは分かる。


「パーティーメンバーは如何するんだ? 神域は【加護】持ちでしか入れんだろうに」

「眷属の方々が手を貸して下さると言ってくれましたぞ? 彼等も強くなろうとしているようでして、快く引き受けてくれました」

「獣人の連中もいるし、前衛は事欠かないな」

「案内役としてセネア殿が加わってくださるようですからな、後衛を任せて安心でしょう」


 あいつ等か……少し不安があるけどな。


「イネアレーゼ達はどうしたんだ? 姿が見えないんだが……」

「レン様のお連れになった少女と共に、そちらの部屋に入って行かれました。なんでも、神域を歩き回るには防御能力が低いとか。迷宮で手に入れた装備を与えるとか申しておりましたぞ?」

「そこまでこの神域は危険地帯なのか? 全然知らんかった」


 気軽に来て失敗だったか?

 もう少し装備を強化すべきだった様だ。

 俺、適当な装備でうろついているんだが?


「あら? レン様、お目覚めになられたのですか?」

「おう、寝ている間に着せ替えしなかったのには驚いたが……」

「また街を焼き払われては困りますからね。もう少し考えて力を使ってください」

「俺を精神的に追い詰めたアンタが言うのか?」


 悪びれしてねぇ。

 全然反省してねぇよ、この人。


「それよりもレン様? あのような装備で神域を散策するのは命に係りますよ? 正直に申し上げて、自殺行為に等しい事です」

「そんなに魔物が強いのか? 増々楽しみだ」

「この世界の人々では、流石に複数で相手にしないと返り討ちに遭います。ランクが異常に高いのですよ」

「へぇ~、どのくらい?」

「最低でランク3、最高で魔王クラスの7ですね。異常ですよ、この神域」


 

 Ohー、最初からデンジャーワールドだったんですね。

 弱肉強食の野生の王国でした。


「ですから、メリッサさんの装備は私からのプレゼントです」

「どんな装備だよ?」

「そろそろ武器も装備した頃ですし、出て来るかと……」


 ―――ガチャ。


 完全武装のメリッサさんが出て来られました。

 ピンクの忍び装束で……。


「・・・・ん・・・・ちょっと・・・恥ずかしい・・・」


 忍んでない。

 寧ろ目立つ色だろ……。


「可愛いは正義ですよ?」

「見た事のない装備ですな。東方の戦装束ですかな?」


 錬金術師の格好じゃないだろ。

 つーか、魔物に集中的に狙われないか?


「コレ……何処で入手したんだ?」

「神域の迷宮ですよ? 何故かこうした物が大量に手に入るので、皆が挙って挑戦しています。おかげでレン様の暴走に巻き込まれずに済みましたが……」


 マジで? どう見てもテイ○ズ初期のキャラ衣装だろ。

 迷宮か……その内に調査する必要があるな。

 ところで、最後の方が少し棘があるよ?

 自分の暴走はシカトですか?


「因みに迷宮の階層は1000、私達は53階層までしか行けませんでした」

「何それ?! どんな巨大ダンジョンだよ!!」


 鬼畜仕様? どんな無理ゲー?

 魔王と互角に渡り合える神ですら53階層て、無理難題も良い所じゃねぇか。


「・・・・レン君・・・採取・・・・・」

「あ? あぁ・・・・・・じゃ、俺はその辺で採取して来るわ」

「メリッサさんはお気をつけて」

「儂もそろそろ行くと致しましょうぞ、フフフ……血が滾りよるわい」


 王様、燃えてるね。


 俺達二人はこうして採取へと向かった。

 別に、ファンシーな家に何時までも居たくなかった訳じゃないぞ? ホントだぞ?



 正月の長期休暇も終わり、投稿はまた不定期になりそうです。

 生きる上では仕事は必要、けど働きたくないでござる。

 一週間以上何もしないでいると、簡単に駄目人間に為るものですね。


 こんな奴の作品ですが、楽しんでくだされば幸いです。

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