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 少女と同居が始まった

 こんばんはー、ごぶりんのレン君です。

 今、僕はマミーの実家へ来ています。

 どうもマミーは特殊スキル『鬼神聖母』の能力でボクちゃんの事を知ったみたいです。

 一人で生きて行こうかとも思っていたんですが、まだ十代前半のマミーに上目づかいでお願いされては断る訳にも行きません。

 だって僕、男の娘だから……て、誰がじゃいっ!


 で、マミーの実家なのですが……酷く荒らされてます。

 恐らくゴブリンの襲撃でこうなったんでしょうね。

 酷い有様です。扉は壊れてるし、壁をぶち破った形跡があります。

 散乱した物を見る限り、店かなんかだと思うんですがね。だってカウンターあるし。

 それにしても・・・・・・


「……ここが家?」

「・・・うん、壊れちゃった・・・・」


 そんな泣きそうな顔で見ないで、凄く胸が苦しいです。

 なんつーか、スゲェー罪悪感が・・・・・・。


「まぁ、金はあるし、修理すればいいとして……問題は寝る場所あるのか?」

「二階……大丈夫だと思うから……」

「なら大丈夫か・・・・・・あ・・・」


 一つ重要な問題がありました。

 これを聞かなきゃ、今後の生活に問題が出る需要な事だ。


「ところでさ・・・・・」

「・・・なに・・?」

「何て呼べばいいんだ?」

「?」


 キョトンとしてます。めちゃ可愛い、抱きしめたい。反則級だよ!

 おっと、口数が少ない人見知りで純粋な子みたいだから、俺が気を付けないと。

 熱いパトスの赴くままに抱きしめたら不味いでしょ?

 何せあんな目に遭ったんだから。雄に対して恐怖心を持っていても不思議じゃありません。

 自重せねば……。


「いやね? お母さんかママか、フルネームで呼ぶのか、略してメリーさんて呼ぶのか、それともお姉ちゃんて呼ぶのか、姉さんて呼ぶのか聞いているんだけど?」

「・・・・・・お姉ちゃんで・・・お願い・・・」

「マジでっ?!」


 できれば名前か愛称なんかで呼びたいんですけど?!

 前半の二つの次に難易度が高いでございますよっ?!


「・・・・いや?・・・」


 いや、そんな悲しそうで、それでいて期待のこもった瞳でウルウルされても困るんですけどっ?

 下手な事言ったら泣いちゃいそうだし、いきなり最上級の難易度がっ!!

 くそっ、俺はどうすれば……何でこんなに恥ずかしいっ!!

 今の俺は恐らく、かなり顔が赤いに違いない。

 究極の選択だよ、クッ・・・・・男は度胸・・・!!


「……お、おお……お、ねぇちゃん……!///////」


 くそっ、言っちまったよっ!! めっさ恥ずかしいっ!! どんな恥辱プレイだよっ!!

 このやっちまった感がハンパねぇ――――――っ!!

 ……て、あれ? お姉ちゃん? も~し、も~~~し?


「・・・・・はうっ♡・・////////////」

「へ?」


 何か、お姉ちゃん、胸元抑えてハァハァ言ってますけど……?

 ま、まさか…俺に・・・・・・萌えちゃったんですか?

 いやね、自分で言うのも何ですが、見た目がすんごい美少女だと思うんですよ。

 そんなのが恥ずかしながら、はにかんで『お姉ちゃん』なんて呼んだら、そらぁ~俺でも萌える自信があります。やっちまった感がパねぇス。

 それでも……そこまで破壊力があるんですか?


「・・・・・・・凄い・・・・・破壊力♡///////////」

「・・・・・・・萌えたろ?」


 何処の火炎使いだよ、俺っ?! 何言っちゃってんの?!

 スゲェ動揺してますね、自分自身の事だから良くわかります。照れ隠しにもほどがあるっス!

 ステータスが馬鹿みたいに非常識だけど、見た目だけで究極兵器である自信があるのが悲しい。

 男の中の男が、男の中の男の娘な感じですよっ!!


「・・・・・・メリッサで・・・いい・・萌え死に・・しちゃいそう・・だから・・・」

「そこまでかよっ!?  まぁ、いいか……メリッサな、了解した」


 良かった。妥協案をくれましたよ。

 つ-か、俺って、萌え死にさせるレベルなんですね。それは初めて知りました。

 

「それより、中に入った方が良くね? 片付けは明日からやればいいし、修理の手配もしないとな」

「・・・・・・うん♡・・・いこ・・」


 何でしょうね。この小動物みたいな感じが可愛いですよ、マミー。

 それはさておき、今日は休もう。

 夕食はギルドの方で出してくれましたし、流石に疲れが出てくるだろう。

 俺じゃないよ? メリッサがです。

 最早、俺って規格外ですから疲れを知りません。


『遅らせながら、スキルを獲得したぜ。レベルアップもな、進化はねぇよ。チッ、命拾いしやがって』


 脳内アナウンスさん、めっちゃ怒っておる様です。

 休日返上させちゃいましたしね。殺る気、満々です……。

 つーか、脳内アナウンス業界ってあるんですか?

 何にしても……怖くて進化が出来ねぇ―――――――――っ! したく無いんですけどね……。


 何にしても生後二日、正確には一日と半くらいで怒涛の展開になっております。

 明日からの生活が怖い……。


 ところで、現時点でのステータスなんですが、


 ====================


 種族 ごぶりん・鬼神 名称 レン・オーガ


 Lv54 ランク8 職業 萌え萌え戦闘執事(見習い)


 スキル


『今日の営業はしゅーりょー、別に来なくてもいいわよ?』


 特殊スキル

『成長促進・神』Max 『経験値倍加・神』Max 『神眼』Max

『超絶倫』Max 『次元超越』Max 『森羅万象』Max 『称号付加』Max

『戦神乱舞』Max 『全状態異常無効化・神』Max


『お前さぁ~……何になりたいわけ?』


 進化 32/60


 称号

『母をもやした者』


 ==================== 


 こんなになっておりました。てか、知らねーよっ!!

 本当に、何になっちゃうんでしょうかねっ、こっちが聞きたいくらいだよっ?! 

 何か、称号までついてるしさっ! 特殊スキルが増えてるっ!

 あの時称号が付いた原因はこれか、短時間で一体何が起きてるのっ? 怖いよ、マジで。


 余談ですが、職業の『萌え萌え戦闘執事』はシルクハットを被ると、『萌え萌え戦闘奇術師』に変わりました。

 精神が削り取られたので、今日は休みたいと思います。誰か助けて……。




 おはようございます……現在私は困った状況にいます。

 それと言うのもですね……我が偉大なマミーに抱き枕にされております。ベットの中で。

 誤解しないように言うけど、別に変な真似をしたわけじゃねぇ―よ?

 純粋に添い寝です。

 なんつーか、メリッサは天涯孤独の身の上らしいんだわ。

 

 昨夜聞いた話によるとですね、両親は物心ついた時には他界して、母方の錬金術師である祖母と二人暮らしだったようです。俺にとってはひぃー婆ちゃんだな。

 その婆ちゃんも先月に老衰のために身罷られ、それ以降は一人暮らしの身の上だそうだ。

 そんな時にゴブリン共に襲われ、糞親父にすんごい事されちゃって俺がいる訳なんですが……家族が出来て嬉しいと言ってくれましたよ。

 なんつーか……ちょっと泣けました。あ、また涙が……


 ただね、うちのマミーはすんごい甘えん坊のようです。

 昨夜から抱き着かれて身動きできないんですよ。


 いや、別に嫌な訳では無いですよ? 母とは言え、可愛い女の子に抱き着かれるのは大歓迎です。

 でもね? 今は良いかもしれねぇ―けど、もう少ししたらヤバくね?

 正直に言えば、メリッサって純粋で可愛いんだよ、マジでっ!!

 前にも言ったけど守ってあげたい系? んで、俺は男の娘……自分で言ってて悲しくなってきた。

 何かの間違いで、そんな関係になったらどうしましょ?

 人として最悪です。


 そして今、俺はがっちりとホールドされている訳であります。

 息子離れが出来るんでしょうか? 正直心配です。


 ところで……俺、何時迄こうしていればいいんですかね?

 誰か教えてください。




 あれから三時間、漸くハグから解放されたけどね……問題が出てきました。

 それはですね……


「……掃除は片付いたんだが、壊れた箇所を直すにしても、大工がいないと駄目だな」

「・・・・・ん・・・・でも、お金・・・無い・・」

「俺があるから問題なし、大工が何処にいるか知らね?」

「・・・・あそこ・・・嫌い・・・」


 食事を済ませて、ゴブにやられた家をある程度片づけたんだが、家の修理まではなぁ~。

 何か、大工が近くに住んでいるらしいんだが、スゲェー難色を示してるんだよ。

 そんなに嫌なの?


「・・・意地悪・・・・されるから・・・・」

「……なるほど」


 翌々考えれば、内気な子って基本的に虐めに遭いやすいよな。

 悪ガキでもいんのかね? 


「とは言え、このままって訳にも行かんだろ? 案内して欲しいんだ……けど…」

「・・・・・・・・・・・・ん・・・」


 何で、そんなに泣きそうな顔すんの? そんなに嫌なの?


「大丈夫、いざとなったら俺が殲滅するから」

「・・・・・殲滅・・・・駄目・・・」

「ですよねぇー」

「・・・・死なない・・・程度で・・・」

「そっちの方が酷くねっ?!」


 これは、殺しちゃ駄目って意味ですね。手加減しろと。

 冗談で言ったんだけど、割と本気にしちゃったんですか?

 息子を信じてくださいよ、お母さん。

 

「じゃ、案内お願い」

「・・・・ん・・・」


 そんな訳で、親子仲良く手を繋いで大工の元へ向かう事になりました。

 だけどね、母さんの握りしめる手に力が入ってるんですよ。

 そんなに行くのが嫌な場所なの?

 


 えー、大工がいる場所はアットの町外れのようです。そしてご近所でした。

 民家と言うよりは工場がかなりありますな、鉄を叩く音やら怒声を上げて叱りつける声が聞こえてきます。

 血の気が多い連中も多そうですな。俗に言う工業区と言うやつでしょうかね?

 まぁ、見た目は民家が少し形を変えた様な店が多く立ち並んでいるように見えるけど、その裏では多くの職人が毎日鎬を削って生活しているんだろう。


 意外に近くなので驚きだが、翌々考えればゴブリンが襲撃した時を思うに、被害に遭いやすい地形みたいだな。外壁が一番低いから、いつでも入ってきてくださいって、言っている様なもんだ。

 街外れって事は、万が一火事でも起きたときに、民間人の被害を最小限に抑える為の備えなんだろうけど、逆に言えば救出には後手に回りやすいって事だ。

 衛兵は基本的に街の門の傍に待機所を設けているし消火作業には従事しない。火の手が上がれば民間人の手で消火作業をするんだろうし、精々避難誘導くらいしかしないんじゃね。

 ゴブが街外れから現れれば、後手に回るだろな。現に襲撃されてメリッサは攫われてるし、無駄が多いんだろうね。



「・・・ここ・・」


 あ、どうやら着いた様だ。まさか街壁の直ぐ傍とは……よく襲撃されなかったな?

 なるほど、衛兵の待機所が傍にあるからか、この国の旗が風に薙ぎ居ているのが見えます。

 傍に街門があるんでしょうね。


 うん、見た目は普通に民家だな。芸術家気質丸出しで爆発してないし、つまらん。

 ではさっそくノックしてみますか、居ますかね?


 ダン!ダン!ダン!


「ケーブル・ガーイっ!! ケーブル・ガ―――イっ!!」

「・・・?・・・」


 不思議そうな顔しないでください。

 やってみたかっただけなんですよ、お母さん。 

 

「いないのか?」


 コンコン


「・・・ケ・・ケーブ・・」

「やんなくていいからねっ?! ちょっとした冗談だからっ!」


 迂闊な真似できねーな。意外に好奇心旺盛ですよ、うちのお母さん……。

 内気に見えて、実はかなり茶目っ気が強そうです。


『さっさと積み込めバカ息子、まだ仕事が残ってんだからよっ!』

『ウッセー! 指図するんじゃねぇ、糞親父! 俺は大工になる気はねぇんだよっ!!』

『毎日遊んでやがる奴が一端の口きくんじゃねぇ! この獄潰しがっ!!』


「……裏にいるみたいだな」

「・・・・・・・・」


 あれ? 何で俺の背中に隠れますか?

 もしかして、声の主のどちらかが嫌いなんですか?

 でもね、行かなきゃならない時があるんですよ。今回は特にね。


「すみませぇ~ん。ここの親方、居ますかぁ~?」

「あぁ? 俺が棟梁だが、何の用だお嬢ちゃん」

「俺は男なんだけど?」

「「なにぃいいいいいいいいいいいいいいっ?!」」


 何で、そこまで驚きますか?


「家の修理を頼みたいんだけど、仕事は空いてるのか? 忙しいなら別の大工を探すけど」

「いや、今日で丁度仕事に片が付くが、お前家何処だよ?」

「えぇ~と、……どこだっけ?」

「・・・・ツエイザ・・・道具・・・店・・」

「ツエイザ道具店だ」

「何っ?!」


 親方のおっちゃんの眼が変わりましたな、何か驚いてっけど?


「メリーセリア?! 無事だったのかっ!! かぁちゃん、かぁちゃんっ!!」

「何だい、五月蠅いね、静かにおしっ! 近所迷惑だよっ!!」

「それどころじゃねぇ、メリーセリアが帰ってきたっ!!」


 ガラン!

 

 家の中から出てきた奥さんが、持っていたバケツを落した。

 何か、こっちを見ておりますが?


「メリッサぁ―――――――――――――――っ!! 無事だったんだねぇ!!」

「ひゃう!」


 すっげーはえー、一瞬で俺の背後に回った挙句にハグしとりますよ?

 この奥さん、尋常じゃねぇ……


『スキル獲得…チッ……さっさと進化しろやっ!』


 脳内アナウンス、そこまで俺が憎いのか? 休暇返上させた事、まだ恨んでいるんですね?

 それよりも、今スキル使ってたのか? 判断がつかねぇんだけど。

 母さん、めっちゃハグされ、頬擦りされ、キスされ……て、オイッ!


「かぁちゃん、いい加減にしろや……それ以上は犯罪だぞ?」

「しょうがないじゃないかぁ、凄く心配したんだから」

「それはそうだが、連れがドン引きしてんぞ?」

「連れ?・・・・・・・・ポッ♡」


 ……なんか嫌な予感がすんだけど?

 奥さん、俺見て『ポッ♡』て言ったぞ、確かに、……まさか狙われてる? 

 ま、まぁ、メリッサは嫌がってはいないみたいだから良いけど……良いのか?


「この子は誰? メリッサのお友達かい?」

「・・・・違う・・・・・娘・・・・・」

「娘ちゃうからっ?! 俺、男だからねっ!?」

「「娘? ……男ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ?!」」

「『娘』よりも、男ながそんなに衝撃なのかよっ!?」


 気持ちはわかるけど、そんなに驚く事なくね?

 地味に傷つくんだけどさ……


「ごめんね。まさか男の娘とは思わなかったから……あ、あたしはこの宿六の奥さんでジニーね。よろしく♡」

「よろし……待て、今、何か言葉のニュアンスが違く無かったか?」

「俺は大工のバーバンだ。そう言えば、お前さんの名前は何でぇ」

「レンだ。生後三日目のごぶりんだが、世話になる」

「「ゴブリン? ……ま、まさか・・・・・・・」」

「そのまさか、親父は俺と他の冒険者が始末した。ところで仕事の話なんだが……」

「「何、重要な話をサラッと流そうとしてんのっ(だっ)!?」」


 えっ? だって今更だろ?

 寧ろ、他人が同情的な目で見る方が失礼じゃね?

 そん時、俺の袖が遠慮がちに引かれた。


「・・・・・・男の・・・・娘?」

「何で、そんな専門的用語知ってんのっ?!」

「あ、それ、あたしが教えた」 

「あ、アンタか……妙に納得できた」

 

 この奥さん、母さんの教育上宜しくない様な気がするんだが……気のせいか?

 ところで、親父さんの背後でニヤケた面したドラ息子がいるみたいなんだが……。

 きっと、ろくでもねぇ事考えてるぞ? こいつ……


「何だよメリッサ、いつの間にか女になったのか? けど、傷もんじゃ嫁の貰い手はねぇな。俺以外は」


 小動物の様に『びくっ!』として、俺の背中に隠れちゃいました。

 なるほど、こいつの事が嫌いなんですね。


「・・・・・別にいい…レン君いれば・・・いらない・・」

「あはははは、いきなりフラれてやんのぉ~、だっせぇー」


 うわぁ~、当の本人にはめっちゃ嫌われてっけど、ゲスいからだな。

 あれ? 何か違和感の様なものを感じたけど……まぁ、いいか…?


 こいつ、メリッサに気があるのかね? 目の前でフラれてやんの、ぷはははは!


「黙れよ、カマゴブリン!! ぶっ殺すぞっ!!」

「お前にゃ無理、魔王とドツキ合いが出来るなら別だけどな。後、ごぶりんな」


 今の俺、尋常じゃねぇから、万に一つも勝ち目はねぇぞ?


「ふかしてんじゃねぞっ!! ゴブリンなら何匹もぶっ殺してんだからよ!!」

「あんな雑魚どもと一緒にすんなや。それに、お前の様な親の脛を齧ってダラダラ生きてる、将来性も人としての価値観も全く無い、どうしようもなく愚かで自分勝手で人の迷惑にしかならない屑ニートを、俺はお義父さんと呼ぶ気は更々無い!!」

「今日、初めて会ったが餓鬼に、何でそこまで言われなきゃなんねぇんだよっ!! テメェーに俺の何が分かるってんだっ!!」

「少なくとも、『俺はこんなつまらない存在じゃねぇ、もっとデカい事が出来る人間なんだっ!』なんてほざきながら、何の確証も無い妄想を抱いて現実を見ない馬鹿だという事は分かる!」

「「うん、見事なまでに完璧に当たってる」」

「それが親の言うセリフかっ?!」


 あー…実の親からもそう思われてんのね。

 筋金入りのドラ息子なんだぁ―……ご両親も大変だなぁ~こんなのが息子だなんて……

 きっと、似たような屑とつるんで朝から晩まで遊び呆け、そっちこっちで粋がって喧嘩して、補導された挙句に呼び出し食らって、頭を下げてもまた同じことを繰り返すような毒にも薬にもならない馬鹿なんだろうなぁ~……ご両親、苦労してんね。


「何で居た堪れない目で親父たちを見てんだよ? そんで、何で親父らはハンカチで涙をぬぐってんだ?」

「ダーメス……その子は全部お見通しだ。……口にしなくても分かってる」

「つけた名前が間違ってたのね……。こんなダメな子に育っちゃって……」


 きっと、この後俺に喧嘩吹っかけて、ぼろ糞に負けて自棄になって酒場で酒をかっくらい、酔った勢いでヤバイおじさん達に喧嘩吹っかけて、集団で袋叩きにされた挙句殺されて森で獣の餌になるんだろうね。

 典型的な雑魚の道を真っ直ぐに進んでますよ、ご両親。

 物語の冒頭で主人公にいちゃもん付けてぼろ糞に負け、次の話で真っ先に死ぬようなそんな人だよね?

 頑張って子供作りなよ、まだ若いんだからさ。

 こいつは直ぐに何かやらかして死ぬか、物語の片隅にも出てこない街角の隅で酒瓶抱えて、若い頃の自分の馬鹿さを後悔しながら彷徨う人生を送るよ? 間違い無く。


「いや、分かってはいるんだけどよ……」

「こんな……どうしようもない雑魚な子だけど、私たちの子供なのよ……」


 馬鹿な子でも可愛いてやつか……親って奴は割り切れないものなんですね。

 せめて他人に殺されたり、何かの犯罪で使い捨ての駒にされない事を祈りたいですね。

 人に迷惑が掛からなければ、どんな生き方をしてくれてもいいと思います。


「せめて、そうしてくれるならいいんだけどよ……」

「でも……この子、馬鹿だし……」

「ちゃんと会話しろよっ!? 何、眼で語り合ってんだよっ!!」


 親の心、子知らずか……何て頭が不憫な奴なんだろう。

 哀れ過ぎて同情すらしたく無いよ……そりゃフラれるよね、自分が一番可愛いんだから。


「昔から調子のいい奴でよ、煽てられたら直ぐその気になって……」

「何度も騙されてるのに気づかないで、自分が人に頼られる優秀な人間だと思っているのよ」


 そんな訳ないじゃん。

 捨て駒にしかなりませんよ? こいつ……あれ?

 こいつ、どう見ても十代後半~二十歳くらい、若しくは二十代前半ですよね? 

 うちの母さん、十代前半頭の方の様な気がするんですけど……まさか……


「そいつ……幼女趣味なんだよ。親として世間に出すのも恥ずかしい」

「初めにちょっかい掛け始めたのも、メリッサが七歳の頃だし、その時この子は十四で成人してた……街外れの廃墟に連れ込もうとして……補導されて……」

「うぁ~……最低だぁ~…フラれて当然だわ。何で自分に振り向くと思ってんのかね? 力尽くでモノにすれば靡くと思ってんのかね? 多分『自分は間違っていない、俺を認めない世界が間違ってるんだ』とか思ってんじゃね? いい加減に現実を見ないと落ちぶれて行く一方だと思うけどなぁ~、いつまでも若いで済ませられる歳ではいられないのにね」


 違和感の正体はこれでした、予想通りの屑ですね。

 もう親子の縁を切った方が良いんじゃね?

 成人してんだし、何かあれば自己責任でしょ。

 いつまで親に甘えれば気がすむのかね、俺生後三日で自立してんだけど?


「メリッサが家の娘だったら良かったんだけどねぇ~……あ、養女として引き取ればいいんだ」

「だな、こいつに財産渡したら三日で使いこんじまうし」

「「早速、手続きをっ!!」」

「理解がある親だな……無様過ぎて涙が出てくらぁ、……同情の余地ねぇし、愚か過ぎて」

「ふざけんなぁあああああああああああああっ!!」


 逆切れして俺を殴りに来ました。

 粗方予想通りの展開です。つーか、養女にされたら結婚できないからじゃね?

 俺は繰り出されたパンチをミリ単位で避け、素早く腕を取ると勢いを利用し、内側に引き込む様にして体勢を崩させ、倒れた瞬間に額を指先で弾いた。


「ぎゃぼっ?!」


 指先一つでダウンしたよ……やっぱり雑魚でした。


「おい、ダーメスの奴、大丈夫か?」

「気絶してるだけだから、問題なし。それより見積にどれくらいかかる?」

「一度、メリッサが心配で店に行ったから程度は分かる。大体十万リル位だな…払えんのか?」

「前金で払っても良いぞ? 金なら俺が持ってるし」

「気前がいいな、だが…何分古い家だから気になる箇所があったら直す事になるが?」

「ある程度なら納得できるまで直してくれてもいいよ? その分は予算に応じて出すからさ」

「随分しっかりしてんな……明日からでも作業に掛かれるぜ?」

「専門家に任せるよ」


 商談成立、明日から修復作業をしてくれるようだ。


「凄く頼もしい息子を生んだわね……羨ましいわ」

「・・・・・ん・・・・私の・・・自慢・・・・・」


 何か得意げに胸を張ってますよ。

 可愛いから良いけどさ……ところで、バカ息子忘れ去られてますよ? 

 親からも見捨てられる馬鹿さって……最早何も言えん。


「ところで、肉が大量に余ってんだけど、いる?」

「良いのか? 肉なんてそう簡単には購入できねぇんだぞ?」

「捨てられて二日目で狩りを覚えてな。調子に乗ってたらいつの間にか食い切れないほどになってた。貰ってくれると助かる」


 アイテムボクスの肥やしになるくらいなら、有効に消費してもらった方が良いしね。

 

「遠慮なく頂くわ。お肉なんて本当に久しぶり」

「大量に置いて於くから近所にでも配ってくれると有り難い。俺が回っても良いんだけど、警戒されそうだしなぁ」

「任せておいて、レン君だっけ? 君、いい子みたいだから直ぐに受け入れられるわよ」

「だと良いけどね。それじゃ、修理の方お願いします」

 

 とりあえず修理の方は片付いた。

 俺達は大量の肉を置いて、大工夫妻の元を離れる。

 次は何を……


「なぁ、メリッサ……用事はこれだけか? 他に何かいる物は無いのか?」

「・・・・ん・・・・機材・・・錬金・術の・・」

「店は何処にあるの? 必要なら買っといた方が良い」

「・・・・そこ・・・角・・左・・・」

「了解、じゃんじゃん行きましょう!」


 うん、うちのママン、機嫌が宜しいようです。

 大工一家の家に行く時は、繋いでいた手に力が入っていましたが、今は率先して俺の手を引いています。

 ですがね、歩くたびに俺の背中に背負っている獄煉刀ゴーちゃん、ズルズル引きずっているんですよ。

 もう少しゆっくり行きませんか?


 その後、大量の機材を買い込み、帰宅したのでありました。

 錬金術ですか、少し楽しみであります。

 

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