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 馬鹿親父にケンカした?

 おはようございます。実に爽やかな朝となりました。

 今日は俺を捨てた親父に復讐しようと思います。

 準備は万全、予習もちゃんとしてますよ?


 さて、朝となれば朝食なのですが、食料がありません。

 そんな訳で森に狩りに行こうと思います。

 マップ機能がありますが、油断はできません。負ければそこで経験値ですよ?

 そんな訳でレッツゴー。



 狩りと云うのは、これで中々難しいものです。

 美味しそうな獲物はいるのですが、倒してもお肉を落してはくれない。

 俺としては食えれば何でもいいのだが、どの獲物が肉を持っているかが分からないし。

 それよりも、倒すと直ぐに消滅するような世界で、この世界の住人はどうやって生活してるのだろう?

 どうにかして、肉をドロップするしかないんではないか?

 うぅ~ん、わからん。せめて木の実でも欲しい所なのだが……。


 茂みに隠れて獲物が来るのを待つ。

 

「・・・・・・何だよ、獲物がいねぇな・・・」

「魔物寄せの粉を使う?」

「一匹ウサギでも倒せばいいんだからよ。そんなもん使うな」

「腹が減ったな」


 どうやら彼等も食事の素材を駆りに来たようだな。

 て、どっかで聞いたような声なんだが。

 ・・・・・うん、ここは狩りの仕方を学ばせてもらおう。

 

「いたぞ、静かに・・・・」


 おっ? 弓のあんちゃんが殺る様だな。

 手にした弓の弦を引き絞り、狙いを定める。

 そして、此方に背中を見せたその隙に矢を放った。


『ぎゅぴっ!』


 おおっ! 一発だ、すげぇーっ!

 ウサギのHPが一気に減ったぞ。体力ゲージがレッドゾーン一目盛だ。

 そして傍に生きウサギを捕まえると、手にしたナイフで止めを刺した。

 えっ、それだけ?

 当然ウサギは消える。


「よし、肉は手に入ったぞ。次は野菜だ」

「ここに、『ネギデッカ』があったわよ?』

「こっちは、『マンネンキャベツ』だ」


 何かをしたとは思えないけど、肉を手に入れたらしい。

 もしかして、この世界の住民は全員アイテムボックスを持っているのか?


『スキルをコピーしました……』


 へ? 何のスキルだ? つーか、今回も俺はステータスを見てないよね?

 何で勝手にコピーしてんの? それより素っ気なくね?

 どんなスキルか見る事が出来ないんだけど……いやまて、考えろ。

 先ほどウサギの体力ゲージが一目盛を残して消えた。もし、この時に何らかのスキルを使っていたとしたら、何のスキルだ?

 

 考えられるのは『手加減』だろう。

 手加減をして一撃で『瀕死』状態にして、獲物に手を触れた状態で止めを刺す事で、素材を獲得できるのでは?

 俺の『神眼』は見たスキルをコピーできる。

 つまり、発動しているスキルは全てコピーしてしまうのではないか?


 今覚えたのが『手加減』なら、俺にもできる筈だ。

 おっ? 目の前にウサピョンが……イメージしろ、手加減した俺が肉を獲得する姿を……。


「ていっ!」

「キュビッ?!」


 ゴ-ちゃんで弾き飛ばしました。

 よし、ゲージが一目盛、そこで捕まえて止めっ!!


『いま、バカンスに行ってるよ。しばらく返って来ないからご自由に……ピ~~~~~……』


 おい、脳内アナウンスっ、仕事さぼってんじゃねぇ!!

 てか、バカンスって、どゆこと?! さっきのスキル獲得の知らせは録音っ?!

 それよりも、肉は?


 ====================


 兎の肉 一羽分

 臭みの無いジューシーなお肉

 煮て良し、焼いて良しの一般的なお肉。


 ====================


「獲ったどぉ―――――――――――――――――――っ!」


 手加減スキル、スゲー! 生活に必要なスキルじゃん。

 ヒャッ―――――ッハァ―――――――――ッ! 今日は肉祭りだぜぇ!

 早速、次の獲物を……





 調子に乗って狩り過ぎました。

 食いきれないほどの肉を獲得してどうすんの?

 アイテムボックスの肥やしになってんじゃん。

 レベルも全然上がんないし、これってただの大量虐殺だよね?

 どーすべ? あっ、さっきの人達発見。


「何で兎一匹しかとれねぇんだ?」

「見当たらないんだから仕方ないわよ」

「これじゃ、ゴブリン討伐なんて行けねぇよ」


 済みません。この辺の獲物を狩り尽した犯人、俺です。

 ほー、ゴブリン討伐ね……あれ? 今俺が出て行ったら討伐されちまうんじゃね?

 いや、俺が殲滅する気なんですがね……仕事の邪魔になんね?

 けどさぁ~、あの人達のおかげで『手加減』覚えたわけだし、ここはお裾分けするべきだと思うんだ。

 袖擦りあうも他生の縁てね、そんな訳で行ってみましょう。


「やぁ、昨夜ぶりぃ~~~~」

「あっ!?」

「昨夜のっ!?」

「幼女ッ!? て、若干成長してないか?」

「マジでモンスターだったのか……」


 何か、驚いてますね。声を掛けられるとは思ってなかったんでしょうな。


「君らのおかげで狩りの仕方を覚えられたんで、お裾分けしようと思うんだけど……お肉、いる?」

「俺達のおかげって、兎をやった時に見てたのかっ?!」

「そ、おかげで大量にお肉が手に入ったんだけど、食べきれなくてね」


 フレンドリーに行きましょう。

 警戒されても困るし、いきなり斬りかかられるのも遠慮願いたいからね。


「くれるなら遠慮なく欲しいわ。何せ、料理は出来ないくせに大食らいが三人もいるから」

「どれがいい? 熊と鹿と豚、鳥も少しあるけど?」

「えっ? えと・・・・・・」

「まて、その子のステータスを見てみろ!」


 俺が獲った肉を選ぼうとしたとき、年配のあんちゃんが制した。


「うわ、ステータスが全然見れねぇ……」

「どんたけランクが高いの……?」

「ランク? 昨夜で8になったけど、何か?」

「「「「ランク8っ!?」」」」


 そんなに驚くものですかね?


「生まれて1日で簡単に到達したけど、そんなに凄いの? ランク8て」

「いや……魔王でもランク7が限界値らしいぞ? 逆に、何でそんなにランクが高いんだよ?」

「知らない。『神』の文字が入ったスキル三つあるからじゃね?」

「「「「!?」」」」


 四人が固まった。

 チートなのは自覚してましたがね、まさかここまで脅威的な物だったとは……。

 彼等のステータスも見てみたけど、ゲージには必ず隙間があるんだよね。

 得手不得手が簡単に分かりやすく見れる。

 全部埋まって白一色の俺が非常識のようだ。


「まぁ、スキルなんてどうでもいいから、会った序でで料理教えてくんね?」

「「「「いやいや、どうでも良いじゃ済まないから!!」」」」


 そうなの? 俺には料理の方が大事なんだが……。


 料理を教えてもらいながら話を聞くところによると、『神』スキルは伝説級で勇者すら持てない、神に選ばれた存在の証らしい。

 今、そのスキルを保有しているのは、何処かの国の聖女様らしい。

 それでも1つしか持っていないらしく、三つも保有している俺は神の使い扱いになるらしい。

 そんな気は全然ないけどね。んで、勇者連中を集めて魔王の領土に攻め込もうとしているらしい。

 表向きは『邪悪な魔族どもから世界を開放するのだ』などと言っているけど、本心は領土拡大を狙った侵略戦争である事に間違いないだろう。

 面倒な話だね。


 この世界での平均ランクは3辺りらしい。4まで行くにはどうしても困難で、勇者のみが6までランクを上げられる。強力なスキルを生まれながらに持って居るので、普通の人達よりもレベルの成長が早い。

 俺の場合は、ランダムで経験値がアップする倍加の影響と、成長促進の相乗効果により急速に進化したのだから、『努力って何でしょうね?』て話になる。

 ある意味、人を馬鹿にしてると言っていいな……ごめんなさい。


 彼等は冒険者で 戦士でリーダーのジョン、魔導士のネリー、弓兵で剣士のアレン、戦士のルノーと言う名前らしい。駆け出し時代からの付き合いで、最近上のランクに上がる為にこの依頼を受けたらしい。

 何であの屋敷に居たのかと言えば、彼等は野営をする為にあの屋敷には言った所、気が付いたら牢屋の中だったらしい。

 恐らく精神干渉をする闇魔法を使われたと推測できる。

 何故わかるのかって? あのゴースト姉妹を倒したら使える魔術が増えてました。

 そんな四人は頭を抱えて呻いています。


「生まれて間もない未熟児がたった一日で……」

「しかも神スキル……魔物なのに……」

「子供を捨てるなんて酷い親ねっ! 復讐したくなる気も良くわかるわ」

「こんな少女が魔王を超えているなんて……」

「俺、男だぞ?」

「「「「なんですとぉおおおおおおおおおおおおおおおおおっ?!」」」」


 気持ちは分かるけどね。

 これが他人だったら俺でも驚くよ。


「で、ゴブリン退治だけど、俺も行こうか? 親父を殴りたいし、母さんを助けたいから」

「いや、レンの母親って年端もいかない少女だろ? 母さん呼ばわりはちょっと問題なくね?」

「本人の前で『母さん』なんて言わねぇよ? 俺も弁えてるからな。産んでくれただけ、ありがとうて感じかな?」

「お前、本当に生まれたばかりかよ……」


 確かに、こんな0歳幼児いねーわな。

 

「できれば直ぐにでも叩き潰しに行きたいんだけど、お宅らの仕事を邪魔するのもねぇ~」

「俺達の仕事はゴブリンの集落を潰す事だけど、キングがいるとなると失敗確実だ」

「そうよねぇ~……」

「レンの話が正しいなら、相当数のゴブリンがいるらしいからな」

「正直、手に余る」


 なんか凄く落ち込んでますね。

 そんなにきついですかなぁ~、だってゴブリンですよ?

 数が脅威なだけのただの雑魚モンスターですよ? 

 無双出来んじゃないですかね?

 

「何なら俺がやろうか? お宅らは俺の後をついて雑魚を蹴散らせばいいし」

「ギルドカードで倒したモンスターの数が分かるから意味ねぇし……」

「特に、キングゴブリンはねぇ~……」

「強力な武器があれば話は変わるんだが、俺たちギルドランク低いし」

「ここでゴブリンの集落を潰せば上のランクに上がれるんだけが、俺達の武器は安物だからな」

「強い武器が必要か? あるぞ?」


 俺はあの屋敷で回収した装備の幾つかを彼等の前に差し出す。


 ====================


 大剣 フレイム・バスターソード ランク4

 炎を吹き出す魔剣。

 斬った相手を焼き尽くす効果が与えられている。

 必殺攻撃在り。


 弓 ウィンド・スナイパー ランク4

 風の魔術で命中率と攻撃力が大幅に上げられる魔弓。

 必殺攻撃在り。


 杖 隠者のワンド ランク5

 使い手の魔力と魔法の威力を大幅に上げる杖。


 盾 カウンターシールド×2 ランク4

 受けた攻撃力の二割ほどの威力を攻撃側に返す盾。


 剣 アイシクル・ソードブレイカー ランク5

 斬りつけた相手を氷結させる魔剣。

 必殺攻撃在り。

  

 ====================


「「「「これ、貰っていいの(か)!?」」」」


 四人が同時に俺に詰め寄って来た。正直、ちょっと怖かったです。


「お、おう、どうせ拾いもんだし好きに使ってくれ。同じのまだあるし」

「うひょぉ――――――――――っ!! こんな武器が欲しかった!!」

「この弓……気に入った」

「この杖、凄い。魔力が増幅されてるぅ♡」

「剣も良いが、盾も中々の物だぞ? 本当にいいのかよ?」

「背中のゴーちゃんが在れば別にどうでも良いし」


 四人ともスゲー嬉しそう。

 そんなに凄いものなのかね? 所詮は拾い物だし、惜しくは無いけど。


「これなら……殺れる…」

「何が相手でも負ける気がしない」

「害獣は処分しなきゃ……うふふふ……」

「ヒハハハハ……たっぷりお仕置きしてやらねぇとな……」


 こえぇーっ!? 何か余計な事しちまった?

 妙にハイテンションになってるけど大丈夫かよ……。

 ところで、料理スキルは獲得できたのか? 一応手伝いながらも覚えようとしてみたんですけど。


『スキル獲得』


 はい、バカンスに行っているんですね。

 別に帰ってきてくれなくても良いですよ?

 静かでちょーどえーですし。


「うっしゃぁああああああああっ! ゴブ共を血祭りにしてやんぜぇ!!」

「「「おぉ――――――――――っ!!」」」


 四人は殺る気満々です。

 俺、殺されませんよね?





 はい、こちら現場のレン君です。

 ただいま実家の近くに来ているんですけどね、周りが断崖絶壁で囲まれた集落跡地の様なんですよ。

 今、潜伏して様子を見ているんですが、ゴブリンがうようよしています。

 このうちの何割が俺の兄弟なのですかね? 腹違いの兄弟をデストロイしようとしているんです、僕。

 罪深い? 何で頭の悪い奴等を兄弟と思わなきゃならないんですか?

 みんな知能が低すぎです。


『ゴブリンウィザード』の姿も見受けられますが、それでもみんな黄色ゲージです。敵ではありませんね。

 多分ですが、魔術をぶっ放すしか頭に無いんじゃないでしょうか? 

 今の俺じゃ経験値にもなりませんが、これも試練と思い挑む所存でございます。

 一匹当たりは大したことが無いんですが、これで糞親父が出てきたら能力が大幅に強化されるようです。

 奴らのステータスを見ると 魔王軍なんて文字が見受けられるのですが、僕のお父様は魔王のパシリのようです。嘆かわしい限りですね。

 これにて中継を終わりにします。


「こいつはスゲェ……しかも魔王軍て……」

「やつら、ここまで進軍して来てんのか?」

「数が多いのが厄介よね。全部始末できるかしら?」

「なぁ~に、いざとなれば・・・・・・」


 皆さん、何で僕を見るのですか?

 あれですか、ヤバくなったら全部俺に押し付けると? 何て人たちだっ!

 嬉しくて涙が出ますね、コンチクショー!


「ハイハイ、後始末は任されましょう。けど、馬鹿親父の相手は俺ね?」

「任せる」

「でも、止めは刺したいかも」

「だよなぁ~」

「ランクアップに必要だしな」


 何てご都合主義な人達なのでしょう。

 キングがいると知った時は青褪めてたのに、強い武器を貰ったら太い連中にビフォーアフター。

 これはアレですね。何事も甘やかしてはいけませんとの事でしょう。

 俺、一生の不覚。


「そう云うのを寄生て言うんじゃないんですかい? 冒険者としてそれはどうよ?」

「「「「うっ!? 何でそんな専門知識を…」」」」

「まぁ、最初は冒険者としてのお仕事を拝見させてもらおうか。けど、おいちゃんはね? 働かない人が嫌いなのよ?」

「「「「さーせんでしたっ!!」」」」


 素直な子は好きですよ?

 けどね、いい歳こいたあんちゃんに頭を下げられるのも何だかなぁ~。

 こうした年上の人達には堂々として貰いたいよね。


「そんじゃ、さっさと始めっか・・・・」


 何故か最初のテンションより低くなってますが?

 別にいいけどね……そんな訳で移動します。




 はい、現場のレン君です。

 今、僕たちは崖も岩棚に陣取っています。

 これから何をするのか、とっても楽しみで期待している所です。


「アレを出せ」


 リーダーさんが荷物から妙な袋を取り出しました。

 これはいったい何でしょう?


 ====================


 縛毒粉

 痺れ薬と猛毒を混ぜた粉末で、相手の動き封じ毒で弱らせる効果がある。

 自然界に散布されれば数時間で効力は消えるが、体内にはいれば効果時間が倍になる。

 扱いには注意が必要。


 ====================


 うん、ヤバい道具ですね。

 扱いを間違えれば自分達にも効果が及びます。

 ちょっと皆さんのステータスを覗かせて貰ったら、全員が麻痺と毒に対して高い耐性スキルを持っていました。しかもレベルがMaxです。

 これは頻繁に同じ手を使用しているという事でしょう。

 恐らく風の流れに任せてこのお薬を散布するのですね?

 耐性が出来てるのは失敗したからでしょう。


 御苦労なさっているようですな。


「ネリー、風の魔法で操作してくれ」

「任せてっ!」


 ほう、風の流れは気まぐれですが、魔法を加える事により確実に効果を上げるという事ですな?

 中々に考えられているね。

 皆さんが縛毒粉を散布したようです。


「ストーム!」


 可成り操作能力が高いようです。

 ヤバ気な色の薬が直ぐに見えなくなりましたね。

 今頃は集落に撒き散らされてる事でしょう。

 あ、言い忘れたけど、繁殖のために連れて行かれた女性達は、全員い崖を掘り貫いて作られた洞窟内に居ます。ゴブの集落より高い位置なので、撒かれたお薬の効果はあまりないと信じたい。

 

 しばらく様子を見ていた所、ゴブたちが次々に倒れて行く。

 そろそろ頃合と言った所か? あの薬は即効性が低いようだ。


「ネリーとアレンは援護を、俺達は突入する」

「その前に数を減らすわ! フレアナパーム!!」


 集落に火球が撃ち込まれ、建物が勢いよく炎上していく。

 これ、風で煽れば楽勝じゃね?


「ストーム!」


 あ、やるんだ……意見を言わなくて良かったわ。

 危うく恥かくところだった。


「「「「見ろ、ゴブが塵の様だ!!」」」」

「4人同時でそのセリフ?! やる事が悪党だな!」


 つーか、スゲェ火災になってんぞ?

 山火事になりませんかね?


 焼かれて投げ出されてくるゴブの姿が……惨い。

 何か、焼かれて死んだ連中が次々と消えて、光の球がこいつらの所に飛んで来てますが?

 自分達の位置を教えてませんか?


「うはははははは、レベルが、レベルが上がるぅうううううううううぅっ!!」

「こいつはたまんねぇな、レベル上がりまくりじゃねぇ―かっ!!」

「あぁ~~~~~ん♡ こんな凄いの初めてぇ~~~~~ん♡」

「封印された俺の力が・・・・・・・」


 うん、こいつらやべぇー……脳内アナウンスが言っていた事は真実でした。

 スキルとレベルが上がるのは麻薬と同じなんだね。

 ウザいと思ってごめん、俺が間違ってました。


「ストーム」

「「「ファイアー」」」


 うわぁ~…追い打ち掛けて火力を上げてんよ。

 火災旋風が起きたら不味いんじゃね?

 レベルアップする度に、だんだんとイッちゃってますよ?


「「「「汚物は消毒だぁ―――――――――――――――――っ!!」」」」


 仲良いな、こいつ等……あまり褒められねぇけど。

 ヒデェ……ゴブリンが哀れに思えてくる。

 問答無用で魔法をぶっ放してるけど、消費した魔力はレベルアップして回復するから限定的にだが制限が無い。しかも集落は密集地の上、ゴブの数が多いもんだから止められない。

 レベルアップも止められない。こいつらヤバ過ぎ……。

 武器をあげる必要、あったのか?


 火災の煙で光の球体が隠される所を見ると、こいつら間違いなく常習犯だな。

 放火魔の称号をお前等に。


「あれ? 称号が入ったぞ?」

「ホントだ・・・・・・・」

「何故に放火魔?」

「酷い称号だ」


 放火魔以外の何もんでも無いだろ!

 けど、何で称号が?


「「「「まぁ、火力が上がるみたいだからいいか! ファイア――――――!!」」」」


 お前ら酷過ぎるぅ―――――――――っ!!


「「「「いてもうたれやっ!!」」」」


 4人は嬉々としてゴブリンの元へ乗込んでいった。

 目の前に広がる阿鼻叫喚の地獄絵図、俺はとんでもない連中に高威力の武器を渡してしまったのかもしれない。

 彼等を止める事は誰にもできない。

 何だろね? この虚しさ……。

 

 

 正直、集落は酷い有様です。

 ゴブリンの死体が無いだけマシなんですかね?

 あいつら嬉々として殺戮の宴によってますし、どうしましょ?

 

 おっと、忘れてたけど、昨日捨てられた借りを返してあげませんとね。

 えぇ~と……確か左の階段を上って、右の洞窟だったっけ?

 何か入り組んでて動きづらいんだけど、奴は何処にいるのかな?

 奥にいる筈なんですけどね。

 今頃女性をひぃひぃ言わせてんだろうさ……

 羨ましくなんか無いからね? 僕にはこれからの人生があるんだからね?


 襲い掛かるゴブを倒しながら進んでいくと、広い空間に出ました。

 如何やらここは天然の空洞のようです。

 生まれた時は気づかなかったんですけどねぇ~。

 あ、いました。憎きパピーとマイマザー、それとその他大勢。


『ここまで乗り込んでくるとはな……どこの魔王の手の者だ?』

『別に魔王の手の者じゃねぇよ、俺が誰だか分かんねぇのか?』

『貴様の様な化け物なぞ知らん』

『悲しいねぇ~、捨てられた息子が殺しに来てやったのに、もう忘れたのか?』

『何っ?』


 驚いてますな。ようやく気付いたか?


『お前、女ではないのか?』

『そっちかよっ!? まぁ、いいさ。お前にとってはその程度の話だったんだろうからさ』

『ま、待て、俺の子供なら、何故俺を殺そうとする?!』

『お前だって俺を殺そうとしたじゃん。昨日、生まれた俺をさ』


 あ~…答え言っちゃったよ。

 もう少し伸ばす気だったんだけど、馬鹿すぎるし思い出すとも思えん。


『昨日? 何かあったか? ……思い出せん』


 ほらぁ~…昨日の事すら忘れてんだよ?

 どんたけ馬鹿なのゴブリンて……俺、本当に悲しくなってきたよ。


『そんじゃぼちぼち始めっか、後が閊えてるからよ』


 本気になっても良いよね?

 何かこいつ、スゲぇーむかつくからさぁ~全裸で森に捨てられたんだぜ、わかるだろ?

 えぇ~と、本気でやるのは……あ、わかった。とりあえず魔力を解放すればいいんか!


『解放』


 DGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGG!!


 アレ……何かスゲェーヤバくね?

 力解放しただけで、洞窟内がもの凄く振動してんだけど、崩れたりしないよね?


『ひぃっ?! ば、馬鹿な……魔王様よりも強大な力だとっ?! 本当にオーガなのかっ?!』

『あ、俺はごぶりんらしいぞ? その後ろに鬼神て付いてんだけどね』

『ゴブリンであるくせに我等を滅ぼすというのかっ!!』

『違う、ごぶりん。読み方は同じでも別の存在と思えばいいさ、どうせあんたは死ぬけどね』

『ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!』


 ありゃ、なりふり構わず逃げたよ……。

 逃がす気は無いけどね。

 隠し通路なんてあったんだ。初めて知ったよって、当たり前か。


『待ちやがれっ!』

『くるなぁあああああああああああああああああああっ!!』


 俺は手加減して思いっきり蹴りを入れた。

 幸いこの通路は真っ直ぐ一方通行のようで、吹き飛んだ親父はそのまま外に……ありゃ、崖だったらしく真っ逆さま。これは死んだか?

 とりあえずこの力抑えとこう。崩れたらヤバイし、母さん潰しちゃう訳にもいかんでしょ。


『封印』


 さて、そんじゃ助……あ…今行ったら逆に怖がられないか?

 他のレイプ被害者もいるし……俺、親父と話しているところ見られてんだよな?


『限界突破条件をクリアしました。これよりレベルアップを開始します。同時に進化……よくも俺の休みを……恨みを思い知れ』


「みゃみれぇぇぇえええええええええええええええええっ?!」


 済みません、脳内アナウンスさん。休み返上させちゃったんですね。

 怒る気持ちもわかります。

 でもこれって仕方ないじゃない。あんたのスケジュール知らないもん。

 怖くてステータスが見れません。

 暫くは大人しくしていたいと思います。


 あ、何か光の球が俺の中に……


『いい加減にしろよ……進化……』


「ひょみゃああああああああああああああああああああああああっ?!」


 な、何で? 何が起きたのさ?

 俺、何もしてないよね?

 レベルアップするような事してないよね?


 その原因はと言うと……





「え? レベルアップした? いい事じゃん」

「そうなんだが、条件をクリアするまで経験値が入らない筈だったんだよ」

「いや、レン。お前、俺達とパーティー組んだろ?」

「んな覚えは無いぞ?」


 パーティーの言葉にいやな予感を覚えた。


「特定内の人数で何かをした時、その人数分に経験値が入るんだよ。今回がゴブ村の壊滅だな」

「だから?」

「俺達が倒した経験値が、少しだがおまえにも流れ込んでたんじゃないのか?」

「まさか・・・・・・」


 この世界にあるパーティーシステム。

 仲間と共に行動して何かの試練を乗り越えると、働きに応じて俺にも経験値が入る事になる。

 その経験値が俺のスキルで増加し、しかし特殊な条件下でレベルアップを出来なかった為に、その経験値は持ち越しとなっていた。

『限界突破』のクリア条件は、俺が自分の手で父親であるキングゴブリンを倒さない事。

 そう考えるとレベルアップした理由が納得できる。

 その後に、瀕死のキングゴブリンがジョン達の手で倒されたために、大ダメージを与えた俺に経験値が入り進化した。

 そういう理由らしい。


「なるほど……おれ、暫くおとなしくしてるわ。ジョン達はどうすんだ?」

「俺達はこれからギルドに向かて報告だ。レンこそどうすんだ?」

「風の向くまま、気の向くままにかな?」






 今、俺達はアットの町に来ていた。

 元々とこの街がゴブリンの襲撃に遭い、ギルドの依頼でジョン達が討伐に向かった。

 依頼の内容はゴブリンの盗伐と、連れ去られた女性たちの救出だ。

 依頼を達成させるとギルドで分かるようになっており、その連絡の合図が反応した為にギルド所有の飛行船で迎えに来た。俺はそこに便乗しただけなのだが、考えてみれば俺にはこの町に用は無い。

 どこかで宿でも取って旅する事になりそうだ。

 そう思っていたんだが……


 ふいに手を引かれて振り返ると、そこには一人の少女の姿があった。

 甘栗色の少しウェーブのかかった髪に大きな青い瞳、ギルドから支給されたのだろう白いブラウスに、薄緑色のワンピースを着ている。

 そう、俺の母親である少女だ。


 その少女は何処か不安げに見つめながらも、震える手で俺の手を握って離さない。


「・・・・・・駄目…一緒に帰るの……」

「帰るって、どこに?」

「私たちの……い、家に……」

「何で?」

「・・・・か、家族だから・・・・」


 へ? 今、何て? 家族?! ちょっと待て、この子、自分が……俺を生んだ事に気づいてる?!

 何で? 俺、昨日生まれたばかりだけど、もの凄く成長してるよな?

 てか、何で俺の事が解るんだ?


「気づいてたのか? 俺の事…」


 こくりと少女が頷く。


「何だよ、いつの間に彼女なんか作ったんだ? 手が早いな?」

「そんなんじゃねぇよ、この子は……」


 俺が言う前に、少女は先に呟くように言った。


「分かるよ・・・・・だって、お母さんだもん」

『『『『『なにぃ――――――――――――――――ッ‼‼‼‼‼‼‼』』』』』


 その場で見ていた事後処理中のギルド職員を含め、全員が一斉に驚いた。

 一番驚いてるのが俺なんだけどね……


「ど、どうして……分かったんだ?」

「私の………ステータスを見ればわかる……」


 その言葉を聞き、俺は慌ててステータスを確認した。

 すると・・・・・・


 ====================


 種族 人間 名称 メリーセリア・ツエイザ(愛称 メリッサ)


 Lv16 ランク1 職業 錬金術師(見習い)


 スキル

『錬金術(初級)』Lv2 『四元魔法(初級)』Lv2

『家事』Lv9 『剣術』Lv1 


 特殊スキル

『鬼神聖母』Lv1


 進化 50/50


 ====================


 鬼神聖母? 何このスキル?


【鬼神聖母】

 新たなる神の雛形を産み落とした女性に与えられる。

 能力は子供である鬼神の特殊スキルをLv1の状態で使用できる。

 レベル上がるに連れて使用出来る数も増えるが、現時点で使えるスキルは三つのみ。


 ====================


 つまりこの子は……


「・・・・・『神眼』使ったの・・・・」


 まじっすか? チートになっちゃいましたよ、この子……

 こんなスキルがあったんじゃ…この子、権力者とかに利用されないか?

 当面は俺が守る必要があんじゃね?


「・・・私と暮らすの・・・嫌?・・」

「・・・・・マジっすか……てか、俺、人間じゃねぇよ?」

「関係ないよ? そんな事……」


 これはマジでいかんがな、仕方がない。


「住む場所がねぇからな……暫く世話になります……」


 さらば自由なる日々て、二日しかなかったけど……


 こうして俺はめっちゃ若い母親と暮らすことに相成りし候……なんてこったい。


 話の内容が適当です。

 ランダムで経験値が倍加する特殊スキル、一般のスキルが閲覧不可能なエラー。

 主人公を弄り回す脳内アナウンスとステータス。

 どんな状態でレベルが上がっているのか分からないシステム。

 そんでいきなり限界値。無茶苦茶です。

 まぁ、実験的に書いている小説だし、無茶苦茶でも良いかと思っていました。


 『そんなんで良いのか? お前、その内誰からも見放されるぞ?』


 そんな御達しをレン君から受けた夢を見ました。

 その通りなだけに何も言えない。

 これは警告? 誰かに見られてる? まさか・・・・・・


 そんな訳で、最近挙動不審なまでに怯えています。

 

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