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 凄いよメリッサさん

 何で、こんな依頼を受けたのだろう。

 見渡す限り森・森・森……魔物は異様なまでに出て来るけれど、本命が全く出て来ない。

 色々素材やアイテムが手に入るのは良いよ?

 でもね、流石にこうも群れ成して襲って来られると、スゲェー苛つくんですぅ~!

 何をしているかって? ただいま冒険者スタイルで、魔王を探して配下の豚と絶賛交戦中!


『グフォ、ブヒ、ブヒヒ』

『ブフフ、ブモ、ブヒュヒ!』

「糞豚が、鬱陶しいんだよっ!! 消え失せろ、鬼神烈風!!」


 構えたゴーちゃんを無造作に思いっきり横薙ぎすると、発生した斬撃が近寄ってくるエロオークを無残な肉片へと変えて行く。

 こいつらもゴブリンと同じで、自分達の繁殖の為に人間の女性を襲う事が多い。

 取分けグラードス王国の被害は大きく、常に討伐依頼が出ているほどだ。

 しかも、こいつらは食える。

 大量に倒せば暫くは肉祭りだろうが、正直お腹一杯です。

 だって、ここは魔王での領域で、その魔王はオークから進化したのですから……。

 つまり奴の配下は豚ばかり、オークキングも二桁ほど始末しております。


「死ね、直ぐ死ね、死に曝せ、糞豚共!!」


 何ですかね。一方的な虐殺をしておりますが、正直うんざりして来るんですよ。

 草むしりでもここまで苛ついたりしませんよ?

 こいつらどんたけ繁殖してんだか……流石【色欲王】と言った所か。

 色欲魔王グモールと云うのが魔王の名前らしい。

 兎に角エロい。どうしようもなくエロに生きている魔王らしい。

 どんたけ子作りに励んでんだか……奴の性欲は底無しか?


 更に森の奥から新たに軍団規模で姿を現すオーク軍団。


「まだ居やがるか、鬼神轟雷斬撃!!」


 ゴーちゃんに纏わせた雷が、地面で扇形に拡散してオーク共を薙ぎ払う。

 一気にHPを奪われたオークは瞬く間に爆ぜ、光の球体となって俺の中へと消えて行った。

 もう、ドロップアイテムが溜まる事、溜まる事。 

 これは売り捌いたらインフレ起こしますな。


「あぁ~焼き払いてぇ~……。でも山火事になったら面倒だしなぁ~」

『ゲビュッ?!』

『ギョバッ!』


 斬りかかってきたオークジェネラルを適当に斬り殺し、周りの通常種を無作為に薙ぎ払う。

 これの繰り返しだよ。やんなるね……。


『言語解析できました。オーク語を取得します』


 覚えたくもねぇのに覚えちまったよ、オーク語……。

 まだ鬱陶しくなるんだろうね。

 金も溜まる。アイテムも溜まる。でも処分が出来ないのです。


「殺せぇ―――――っ!! 相手は一人だぞ!! 貴様らは何をしている」

「そんな事言われましても、あの娘、途轍もなく強いですぜ?」

「良いからさっさと仕留めろ!! 魔王様に殺されたいのか?」

「そんなら将軍が相手してくださいよ、俺達じゃ倒すのは無理ですよ」

「弱音は聞かん、命令に従え!!」


 あー……馬鹿がいる。

 勝てねぇなら逃げればいいのに、こいつら本当に馬鹿だね。

 特に指揮官が……。

 そんなに魔王が怖いかね。


「相手にするのが面倒になって来た……鬼神化」


 ====================


【鬼神化】

 鬼神特有の特殊スキル。

 自らを戦闘形態へと変異させて圧倒的な力で敵を殲滅する。

 同時に各ステータスが増大し、魔法攻撃すら弾き返す。

 このスキルを使った状態では物理攻撃しか受け付けず、しかも防御力も格段に跳ね上がっているのでほぼ無敵。

 殲滅戦にはもってこいのチート能力である。


『……数は力と言うけど、これは卑怯じゃね?』


 ====================


 わかってんだよっ!! いちいち言わなくてもよろしい!!


 俺の黒い髪は深紅に染まり焔のように靡き、額の角は引っ込み第三の眼が開く。

 体は紅蓮の劫火を纏い、両目は金色に輝く瞳に変貌する。

 着ていた装備も一瞬にして半裸となり、下半身はどこかの仏像の様な衣装へと変化した。

 更に言えば両腕は龍の様な鱗状に硬質化し、頭部に二本の角が生えて来た。

 しかも身長が少し伸びるのですよ!


「鬼神転輪!!」

「ひ、ヒィィィィイイイイイイッ?!」

「そんな、馬鹿な……」

「今まで本気じゃなかったと言うのか?!」


 正直に言う、俺はこの姿の方が好きだ。

 だって、カッコいいし、何よりも男らしい姿と言える。

 でもね、使った後はすんごいお腹がすくのですよ。

 まぁ、目の前に美味しいお肉が群れでいるから良いんですけどね。


「てめぇら纏めて浄化してやらぁ!! ついでに俺は男だぁぁぁあああああ!!」


 紅蓮の炎が森を地獄に染め上げた。

 視界は煉獄の炎で埋め尽くされ、オーク共は一瞬で塵も残さず灰になる。


 不思議な事に、この炎は森を焼き尽かさずに敵だけを消し去るんですよ。

 便利ですね、途轍もなく腹が減りますけど……。

 最初から使えばいいて? 嫌だよ、空腹で倒れるなんて情けないじゃん。

 兎に角カロリー消費が激しいんでやんす。

 最早飢えると言っても過言じゃありません。

 それ程までにきついんです。


 さて、粗方消え去りましたね。では、ご飯にいたしましょう。

 今日のおかずは生姜焼きです。




 * * * * * * * * * * * *


 生姜の香ばしい匂いは最高だ。

 どうしてこんなに食欲をそそるのでしょうか?

 そして、俺が倒してきた豚さん。何でこんなに美味しいんでしょうか?

 見た目は不気味なのに、ドロップアイテムのお肉は美味で最高でした。

 

「お肉はたくさん、野菜はそこら辺に生えている。お金が掛からないのが実に良い」

「・・・・ん・・・豚さん・・・美味しい・・・」


 メリッサも喜んでパクついております。

 オークは害獣ですが、お肉をドロップ出来るので二重の意味で美味しい魔物です。

 俺が戦っている時は、メリッサは気配を消してて隠れて貰っています。

 高位錬金術師になったら使える魔法も増えたみたいで、単独で行動しても居場所がはっきり判るように互いに魔法を掛けている。

 その為、俺は遠慮なくデストロイ出来る訳だ。


「良い素材は採取できた?」

「・・・ん・・・順調・・・肉厚ロース・・・美味・・・」

「トンカツにすれば良かったか? でもソースがねぇし、作れるけど素材が足りねぇ」


 本当に幸せそうに食べるんだね。

 俺も負けてはいられない。お肉はまだ、そこに在るんです!

 お肉をとにかくかっ込む俺、矢張り○野屋のワンコインは最高♡

 実際はお金掛かって無いけどね。


「どこにいるのかねぇ~、エロ魔王……全然出て来ない」

「・・・ん・・・きっと、お楽しみの最中・・・・出て来ない・・・」

「誰に仕込まれたかは兎も角、多分その通りだろうな。奴等も馬鹿だし」

「・・・・ん・・・お婆ちゃんが言っていた・・・」

「遅っ?! てか、メリッサのお婆さんは孫に何を教えてんだよ?!」


 戦慄の婆さん。孫に性教育を教えるとは……。

 老い先短かったから不安だったのかね?

 基本的にメリッサはぼっち体質だから……マイペースだけどね。


「メリッサのお婆さんて、何者? 正直得体が知れないんだけど……」

「・・・ん・・・拳で語る・・・錬金術師・・・・」

「まさかの武闘派だった?!」


 錬金術師が拳で語るって、色んな意味で非常識じゃね?


「・・・付いた二つ名・・・【爆炎拳のマーセラ】・・・一人で百人の強者を殴り倒した」

「それはもう錬金術師じゃねぇ―よな?! 立派な武闘家じゃん!」

「お爺ちゃんは・・・・倒された内の一人・・・・」

「爺さんの方も武闘派?!」

「・・・殴られて・・・愛に目覚めたって言ってた・・・」

「それ、絶対別の扉を開いちゃったよね?! 別の何かに目覚めてるよね?!」

「・・・愛は痛みを伴う・・・そう言ってた・・・」

「やっぱりかよ! 変な趣味に堕ちたんだぁ!!」


 どんな家族だよ、両親の方も聞くのが怖いぞ?

 

「お婆ちゃんとの喧嘩は最高だと言ってた・・・・」

「喧嘩に託けて趣味を満喫してた?! 知りたくも無い話だった!」

「・・・将来は・・・お婆ちゃん達みたいな家庭を築きたい・・・・」

「お願いだから良く考えてぇ―――っ! それはある意味で危険な家族だよ!!」


 何て恐ろしい話でしょう。

 俺は戦慄するしかありませんよ?

 鬼神にまで進化したのに、まだ恐ろしい存在があったんだね。

 ある意味で円満とも言えるけど、正直真似したくねぇ。

 俺は殴られて喜ぶ趣味は無い。


「お母さんも言ってた・・・痛みの中に愛は確かにあると・・・・」

「物心が付いてない子供に何教えてんの?! 怖いよ!!」


 何て事だ、メリッサは自分の家族がおかしい事に気付いていないぞ?

 

「・・・少し・・・息が荒かったのが怖かった・・・お爺ちゃん達も頷いていたよ?」

「メリッサは真面でしたっ!! お願いだから、このまま正しい大人になってね!!」


 ヤバい趣味の人達の中で天使が生まれていた。

 神は確かに存在していた。


『おるぞ? お主も知らない筈ではあるまいて……』


「誰っ?! いや、気のせいだな……俺は何も聞こえなかった」

「・・・レン君・・・また声が聞こえたの? ・・・薬、使ってる?」

「何でそんな悲しそうな顔をするんだ?! ヤバい薬は使ってないからね?」


 酷い誤解だよ。

 俺はそんな物に頼る気はねぇぞ。


 疑惑の目を向けられていても、やはりお腹は減るのです。

 箸が止まる事はありません。

 教えてくれ、俺はあとどれくらいお肉を食べればいいんだ……。

 やべ、肉の味がしょっぱい。

 そんな悲しそうな目で俺を見ないでくれ。

 俺の方が悲しいよ……信じて貰えなくて……。


 結局俺は大盛り十人前を食べた。

 あの量は俺の小柄な体のどこに消えたのだろうか、不思議である。



 * * * * * * * * * * * *


 食事を済ませたので採取兼魔物殲滅作戦続行です。

 目指すは魔王のエロ豚さん。

 サーチ・アンド・デストロイだ。

 だけどね……。


「あれだけいたオークは何処に消えたんだ? さっぱり見当たらないんだが……」

「・・・ん?・・・・全滅?・・・任務完了?」

「仮にも魔王の先兵だぞ? あの程度の数じゃ足りない気がすんだよなぁ~」


 どう考えても数が少ない。

 ざっと記憶を辿っても、5000はいなかったはずだ。

 まだ何処かで動き回っているに違いない。

 マップ機能にもそれらしい影は見当たらないんだが、本当にどこへ消えたのかね? 


「静かすぎるな……。俺が倒した数はそれほど多くは無いんだが」

「どこか・・・・・攻めてる? ・・・別勢力・・・・」

「魔王に従わない魔物でもいるのかねぇ~。そこに行けば豚さんいるかもしれんが、どっちに向かうかな?」

「・・・・山と森・・・・どっちか・・・」


 方や険しい山の道、森はこのまま直進。

 どちらの選択をしたら正しいか悩みどころだな。

 別にこのまま帰っても良いけどね。けど魔王の討伐依頼が出てる以上は倒すべきだと思うんよ。

 Sランクの依頼だし、報酬も良い金額だけど、それ以上に稼いでんのよね。

 別に冒険者登録をしなくても良かったかもしんね。


「山に行くか、少し険しいけど、俺が抱き上げれば然程問題じゃないだろう」

「・・・・・ん・・・素材たくさん・・・後で庭に植える・・・」

「庭にめっちゃ群生してたぞ? 雑草が生き残れないほどの繁殖能力で……品種改良でもしたのか?」

「・・・・・多分・・・・お婆ちゃんが・・・・」


 拳で語る錬金術師は優秀な人物だったようである。

 国からの報酬は美味しいけど、魔王を倒すには冒険者の数が足りないと思う。

 何より、オークは嫌いだ。


 俺を見るなり、目を血走らせ、口から涎をたらし、股間の紳士を手で押さえながら突撃して来るんだぞ?

 これ以上の恐怖は存在しないと思う。

 アレは消毒するべき汚物だ! 肉は旨いけど、其れと之とは話が別だ。

 俺の精神衛生上の都合で殲滅させてもらうぞ。

 あー……何でこんな依頼を受けたんだろ。


 Sランクは強力な魔物を定期的に倒さないと直ぐに剥奪されます。

 現在俺が倒したのは【オーク】【ハイ・オーク】【オークジェネラル】【オークウィザード】【ヘルハウンド】【エビルオーガ】【キングオーク】【オークライダー】【フォレストサイクロプス】【テラードラゴノス】等々、Aランク級の魔物がゴロゴロ。

 数も多いんで何を倒したのか分からないけど、少なくともかなりの数の魔物を殲滅しております。

 切りが無いんだよ。まぁ、一生遊んで暮らせるだけのお金は確保しましたけどね。

 やはり、いきなり魔王討伐は無茶だったか?



 山を目指して進むと、糞豚さんの一行が御出ましだ。

 ゴーちゃん振り回して、無双状態でデストロイに励んでおります。

 その間、メリッサには安全な場所に隠れて貰い、俺はせっせと殺戮の宴ですよ。

 単調作業なので早い事、早い事。

 一振りで10匹近く葬れるんだから俺ってどこまで異常なの?


「ごぁああああっ!! 奴を止めろ!!」

「無理で…ギャァァアアアアアアアアっ!!」


 ここまで一方的だと普通罪悪感が湧く筈なのですが、逆に殺意が湧くは何故でしょう?

 多分豚さん、君たちが悪いのだよ。

 だってさぁ~……


「俺が最初だぁあああああああああっ!!」

「ふおおおおおおおおっ!! 幼女ぉおおおおおおおおおっ!!」

「俺のガキを孕ませてやんぜぇええええええっ!!」


 これだよ。


 群れで襲い掛かって来る性犯罪組織だよ。

 見逃してやろうかなぁ~と思った傍から、別のエロ豚が襲ってくんの。

 わかるだろ? 倒さなきゃ俺の身が危険に曝されるのよ。


「俺は男だぁあああああああああああああああああっ!!(魂の叫び)」


 思いっきり斬撃を飛ばして殲滅する。

 もう嫌だよ、変態共の相手をするのはさぁ~。

 こいつら下半身だけで物事を考えてね?

 それ以外はゴブリンと大差がねぇ―でやんの……つまり頭が悪い。

 こいつらの脅威って繁殖能力だけなんじゃね?

 いや、俺が強すぎるだけなんだろう……。ハァ・・・・。


 

 どれだけ倒したんだろうか……周りに動く豚さんはいなかった。


 この豚共、何でこんな山の方に進軍していたんだろうね?

 殆どが一撃で死ぬから大して手間は掛からないけどさ、ウザいんだよこいつ等。

 だが、軍団規模で動くとなると、何らかの目的があるとしか思えない。

 倒しながら進んだ結果、いつの間にやら山の中腹まで来てしまった。


 メリッサは……うん、大丈夫。

 せっせと薬草の類を採取しているみたいだ。

 多分ステルスの魔法を使ってる。あ、オークが傍に……反応が消えた?

 如何やら倒したようだ。

 メリッサはどうやってオークを倒しているんだ? 肉弾戦が得意には思えないんだけど。

 少し覗きに行ってみるか。


 俺は、一度メリッサと合流すべく走る。

 身体強化しなくても速いんです。

 直ぐにメリッサを見つけた。

 あ、またオーク。


 姿を消してるメリッサに、オークは気づいていない様だ。

 俺? 【真・神眼】があるから見える。ハイクオリティーに!

 ただ、オークは鋭い嗅覚で匂いを辿っている様に思える。

 現にオークはメリッサの近くまで迷うことなく来てるし、て、ヤバイ!

 メリッサがオークに気付いた。


 静かに背後に回り込み、身体強化で体力を底上げしてオークの首に飛びつき、そのまま【鬼神のコンバットナイフ】で首を引き裂いた。

 て、えぇぇぇぇぇええええええええええっ?!


 どう見ても暗殺者の手口だよね?!

 しかもクリティカルで必殺してるし、何処の特殊部隊の人?!

 同じ手口で別のオークを始末してるし……怖いよ、おかぁちゃん!!

 いつの間にマーダーライセンスを取ったの?

 やけに手慣れてますけど、裏家業でもやってるんですか?

 まさか、生活費を必殺で稼いでいませんよね?


 オークジェネラルが接近中、これは拙いか? 俺が行か…へ?


 メリッサがワイヤーの様な物を引っ張ると、周囲から無数の糸状の物がオークジェネラルに絡みつき動きを封じる。


「あ、アレは……神鉄の鋼線? 装備に使った余り物だった気がするが……いつの間に?」


 チャーシューみたいになったジェネラルをめった刺し……怖い。

 更に迫る三匹のオークを無駄の無い動きで躱しつつ、擦違い様に致命的な一撃を加えてすり抜けた。

 オークのHPが一気にレッドゾーンに落ちる。

 もがいているオークに一匹づつ止めを刺し、やり遂げたかのように満面の笑みを浮かべた。


 笑顔だけなら可愛いのですが、前の戦慄な戦闘を目撃すると恐ろしい物があります。

 三匹の豚さんは、無事狼さんに美味しく食べられたのでした。

 

 凄いよメリッサさん……あなたの家系は何処まで武闘派なのですか?

 そもそもゴブリンに何で捕まったの? めっちゃ強いやん。

 どう見ても戦場の狼ですよね?

 豚さんを食い殺してますよね?

 どこぞの渋いおっさんも真っ青の戦闘能力ですよ?

 そのうち段ボールで潜伏するんですか?


 あ、俺に気付いて、手をブンブン降ってます。

 笑顔が実にキュートですが、今の俺には恐怖しか感じません。

 メリッサさん……恐ろしい子。


「メリッサ……あんな戦い方、誰に習ったの? 凄い手馴れていたけど」

「・・・・ん・・・・お婆ちゃん・・・」

「また婆さんかっ?! 本当に何者だよ、底知れない恐怖があるんだけど!?」

「・・・ん~・・・前に来たお客さん・・・・【ブラッディ】て呼んでた・・・」

「どう考えてもその人、裏の職業だよね?! お婆さん、裏でコードネームで呼ばれてたの!?」

「・・・わかんない・・・でも・・・たまに夜に出かけてた・・・・」

「裏でどんな仕事してたんだ……恐ろしい婆さんだ……」


 もしかしてだけど、国の諜報員だったんじゃないの?

 でなければあんな技術、仕込む訳ないよね。

 謎ばかりが残るな。あ、メリッサの職業が【必殺錬金術師】になってる……。 

 

 それよりも魔王は何処だよ。

 魔王なのに定住先を持たず移動ばかりしているから捕捉し辛い。

 元々オークは軍団で移動を繰り返しながら周囲の獲物を襲う習性がある。

 そんなオークが魔王になっても習性自体は消える事なく残り、放浪を繰り返しながら各地で多大な被害を齎しているらしい。

 飽くまでギルドの情報を集積した結果だが、恐らく間違いはないだろう。

 どんな種族の雌からでも繁殖は可能だが、オークの雌はどうなんでしょうか?

 俺が男だと知ったら襲ってきませんかね?

 嫌ですよ、豚さんハーレムなんて。


 何としても殲滅して……ん? 何か臭うぞ? これはオーク共の体臭か?

 ここまで臭うとなると、相当数の数がいると思う。


「・・・ん~…くちゃい・・・」

「いるな、豚共が……しかし臭いな。豚は本来綺麗好きな筈なんだが、あいつらは不潔すぎるぞ」


 風向きが変わってオーク特有の臭いがこちらに流れて来たんだろう。

 臭いで居場所がバレるって……本当に馬鹿なんだなぁ~。

 まぁ、種族特有の体臭なんて俺達ではわからないし、奴等にとっては良い匂いなのかもしれん。

 フェロモンだっけ? 多分それも交じってるんだろう。


「依頼は果たしてこそ冒険者。魔王豚さんいますかねぇ~?」

「・・・暫く・・・・お肉に困らない・・・」


 そうだねぇ~、食い切れないほどに有りますからねぇ~。

 ギルドで肉買ってくれるかな?

 魔石も大量にありますし、最早左団扇で笑いが止まりません。

 けどね、この世界で金って重要なの?

 魔物を倒して大金が手にはいったら、そもそもインフレ起きるんじゃない?

 造幣局でお札を擦る訳でも無いし、増えたら増えたで金の価値が落ちるんじゃね?

 物価も上昇する可能性もあるし、そこん所どうなんでしょ?


「ま、俺にはどうでも良いか。いざと為ったらサバイバル生活でもやっていけるし、今は魔王を倒す事に専念しよう」


 そうなると山登り再開ですかね。


 メリッサを抱き抱えて俺は疾走する。

 岩場を飛び、急な坂を駆け上り、木々の隙間を縫うように走り抜ける。


「ひゃっほぉー♡」


 何故か上機嫌のメリッサさん。

 これはアレだな、絶叫マシーンに喜んで乗るタイプだ。

 それも何度も乗りまくる重度の絶叫マニア……以外に胆が太いでんな。


 高く飛び跳ね岩場に着地すると、そこに見えたのは魔物の村であった。

 その村の周囲を蠢く尋常では無い数の魔物の群れ。

 恐らくは、これが色欲魔王グモールの軍勢なんだろう。


「んじゃ、ちょっくら行って来るな」

「・・・ん・・・・頑張って・・・」

「魔王の肉って旨いのか試してみるか、『ステルス』」


 姿を隠し、出来る限り情報を得るために内部へと侵入する。

 出来る限り状況が解り易方が良いよな。

 村の直ぐ傍にまで行ってみるか。


 木々を飛び跳ね、村の直ぐ傍に来てようやく状況が見えた。

 魔王軍は軍門に下って無い集落を包囲し、武力で引き入れようとしていた。

 対する村の魔物は正面から迎え撃つ覚悟のようである。

 ただね、その村の魔物っていうのがミノタウロスのようです。

 牛と豚の戦いなんですが、豚さんが戦力的に有利ですな。

 モーモーブヒブヒ……ここは酪農家ですか? どこかのカントリーファームですか?


『ミノタウロスの言語を覚えました』


 oh……また魔物の言語を覚えちゃいました。

 バイキンガルですな。……あれ、違ったっけ?


 魔王さんはいるかなぁ~……いた。

 一際馬鹿でかい豚さんが、トロールが担いだ神輿に乗ってふんぞり返っていますよ。

 素早い動きは出来なさそうなんですがね、野生の豚さんは結構小回りが利くんですよね。

 見た目で判断するのはいかんね。


 それにしても……神輿の上でお盛んです事。

 周りにも人間だけでなくエルフや獣人の女性の姿が見えます。

 誰もが全裸でこの魔王さんの玩具にされているようですな。

 下のトロールさんにはいい迷惑だろ。


「お前たちに猶予をやろう。偉大なるグモール様に従えば、貴様ら牛共の命だけは助けてやろう」

「汚らわしい豚共に媚びるくらいなら、死んだ方がマシだ!!」


 何とも……あのオークジェネラル、説得する気あるのかね?

 そして牛さん、そういう潔い所は好きですぞ。

  

「オノレ……グモール様の手前大人しくしておれば、つけ上がりおって……」

「ふん、魔王の豚になるくらいなら誇り高く戦って死ぬ!」


 oh……何という武人ぷり。だけどね、他人巻き込んじゃイケねぇよ?

 ミノさん、血の気が多いんでしょうかね?

 鼻息、めっちゃ荒いんですけど……。


「いいだろう。雄共は皆殺し、雌は苗床にしてくれるわっ!!」

「ふん、貴様ら一匹でも多く道連れにしてくれるわっ!!」


 ミノさん……何処まで戦闘民族なのですか?

 お子さんたちも此処で死ぬんですよ?

 雌は皆エロい事されちゃうんですよ? 見たくねぇけど。


 う~ん……ここは武力介入しますかね?

 ミノさんには悪いけど、魔王は俺の獲物なのですよ。

 では行きます。


「忍ぶどころか、暴れるぜっ!!」


 俺は真っ先にオークの先方に向かって思いっきりゴーちゃんを振り下ろした。

 斬撃で発生した衝撃波が無数のオークを天に吹きっ飛ばす。


「狼は生きろ、豚は死ねっ!!」


 何て現状にぴったりな言葉なんでしょうね。

 エロ豚性犯罪者連合軍はここで歴史から消えて貰う事にします。

 俺のお肉になれ!







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