仔猫が喋った!
橋の土台となっている石壁が、ガラガラと音を発てて崩れた。
丁度、小さな子供が通れるぐらいの大きさ。
魔子は仔猫を、しっかりとダッコしてトンネルの中へ入った。
遠くの方に出口らしき明かりが見える。
魔子は小走りに駆け出す。
どれくらい走っただろうか……
出口の明かりは見えるのに距離が縮まらない?
入って来た入り口の方を振り向くと、かなり走ったことが分かる。
トンネルの中程まで来た魔子はペタンと、その場に座り込んでしまった。
仔猫に語り掛ける魔子。
『仔猫ちゃん、なかなか、出口に着かないね…まるで出口が逃げていくみたい~』
その時、どこからともなく声が聞こえた。
『ここは、仔猫トンネルだよ!』
魔子はビックリして辺りを見回し一言、叫んだ!
『だれ!』
すると声の主が答えた。
『あなたの、手の中にいる、わたしよ!』
『え!』魔子は驚き仔猫を見つめる。
『あなたなの、今、喋ったのは?』
仔猫は得意気に答えた。
『そうよ!わたしよ!』
魔子は不思議そうに仔猫を見っめて言った。
♪
『あなた、話しができるのね~♪』
仔猫は首に下がっている鈴を3度鳴らすように魔子に言った。
魔子は言われた通りに鈴を3度鳴らした。
チリンチリンチリン♪
すると出口が、みるみる近づいて来た。
『仔猫ちゃん、あなた、もしかしたら、魔法猫なの?』
仔猫は魔子の方を向いて答えた。
『わたし、魔法猫じゃないわよ。あなたが魔法少女なのよ~*』
魔子は仔猫の答えに驚いたが
『そんなわけ、ないわよ~☆』と笑って打ち消した。
『仔猫ちゃん、出口は、もうそこよ!』
そう言うなり、魔子と仔猫は出口を過ぎた。
その時、魔子は自分の目を疑った。
きれいな茜空の夕焼け
遠くの方から聞こえる『トーフ、トーフ』屋台ラッパの音。
高いビルが、どこにも見当たらない。
見たこともない景色。
三つ網の小さな女の子や学生帽を被った小さな男の子。
縄跳びをしたり、お手玉をしたり、メンコをしたりビー玉をしたりして遊んでいる……




