47.受け取ってもらえるかな
今日から連載再開、第四部開始となります! 何卒よろしくお願いいたします!
また、第三部までの設定と内容で以下の点を変更いたしました!
・アウトレット商品増加数を一日五点から一日一点に
・二部で獲得した商品の大部分を三部での獲得商品に
・46話(三部最終話)で倉庫内のランキング表が消えていたという内容を残ったままに修正
異世界生活七十五日目。
「それじゃ購入させてもらうぜ。明日の試し打ちが楽しみだな」
「何度も言っておきますけれど、本当はそれらは武器じゃないんですからね? スポーツ用品と園芸用品で、魔物に向けて使うものじゃないんですからね?」
俺のしつこいくらいの説明に、ベルマーダさんは右から左に聞き流すだけ。
『硬式野球用バット』と『草刈り用小鎌』を購入したベルマーダさんは、彼を待つプリームさんやレリダさんと一緒に店から去って行った。相変わらずモテモテだけど、ベルマーダさん全然二人の気持ちに気づいてないんだな……将来刺されたりしないだろうか。
プリームさんもレリダさんも、あれだけ分かりやすい態度とっているのに、気づかないもんなんだな……恋愛って難しいね。
そんなリリネコ商店の恩人を心配しつつ、俺は腕時計の針をチェックした。
時間はもうすぐ五時を迎えようとしている。ベルマーダさんが店に残っている最後のお客さんだったから、閉店にはちょうどいいくらいかな。
俺は店内のみんなに閉店時間になったことを伝えた。
「もうすぐ五時だから、片づけを始めようか」
「分かりました」
俺の言葉にネーナはにっこり笑ってみんなに片づけや掃除の仕事を割り振っていく。
いや、本当に頼もしいね。ネーナの指示に、メルとタヌ子さんはテキパキと動いて片づけに動いてくれている。
今日はメルの復帰日ということもあり、みんな勢揃いだから賑やかだね。俺も負けじと掃除をやろうと掃除機を倉庫から取り出すと、掃除機を察したコタロが二階からダッシュで降りてきた。しっぽをぶんぶんと振って俺に手を伸ばして掃除機譲渡を要求。
「兄ちゃん、僕がする!」
「コタロは本当に掃除機が好きなんだね」
俺から掃除機を受け取って、コタロは嬉々として掃除機のスイッチをオン。
店内を楽しそうに回るコタロに、ネーナもメルも笑顔だ。女性陣の華やかな笑顔は目を奪われるね。タヌ子さんはまあ……華やかに笑っていることにしよう、うん。
そんなことを思いながら、俺は台拭きでカウンター等を拭いてまわる。
そして、店内に設置された机を拭きながら、その横の椅子に座って店内でひたすらカーラジコンを爆走させているルシエラに一言。
「あの、ルシエラさん、掃除したいんでカーラジコンで遊ぶのやめて、ちょっとどいてもらえませんかね」
「分かった」
そう言いながらルシエラは椅子から立ち上がってくれた。
でも、カーラジコンを操る手を止めるつもりはないらしい。店の隅に移動して、ミニチュアカーを店内でぐるぐるさせている。完全にハマってるよね、これ……
メルが復帰したこともあり、ルシエラは以前同様にウチの店舗警備員に戻っている。そして今日は一日中カーラジコンで遊んでいた。どこまでもマイペースなルシエラだった。
というか、コタロやリラが喜ぶかなと残していた玩具、そのほとんどがルシエラの玩具になっている気がするね。まあ、ルシエラが楽しそうだし別にいいんだけれども。
店内の掃除を終える頃には、ネーナの売上処理作業も終わっていた。
今日の売り上げは二十五万リリル弱。今日も一日良い売上だったね。メルの復帰日としても、本当にいいことだ。
俺はみんなを集めて、終礼を行う。
「それじゃ、今日のお仕事は終わりです。今日も一日お疲れさまでした」
俺の言葉にみんなが復唱するようにお疲れさまでしたと返してくれる。
一番大きな声で『お疲れ様!』と連呼するコタロと見上げてくるリラの頭を撫でながら、俺はメルに視線を向けて問いかけてみた。
「久々のお店の仕事だけど、特に問題はなかった?」
「ええ、問題ありませんわ。これまで沢山ご迷惑をおかけした分、しっかり働いて返させていただきますから」
メルの力強い言葉に安堵する。どうやらもう心配はいらないみたいだね。
今日一日働くメルの姿を覗き見……もとい、見つめていたんだけど、とても楽しそうに笑ってくれていた。
以前のメル、いや、それ以上にパワーアップしたメルが戻ってきてくれてよかった。
メルの笑顔に安心しながら、俺はネーナに視線を向けた。以心伝心、ネーナは微笑んだまま、カウンターの下から用意していた袋を次々に取り出して行く。それを見て首をかしげるメルたち。
みんなも揃ったし、メルも元気になったし、やっと『アレ』を実行できるね。
全員分の袋を揃え終え、俺はみんなに早速とばかりに口を開いた。
「それじゃ、皆さんに今月分のお給料をお渡しさせていただきます」
俺の言葉に驚く面々。
うん、そうなんだ。メルとタヌ子さん、うちに来てからもう一カ月経つんだね。
ルシエラに至っては二カ月。本当に月日が流れるのはあっという間だね。
本当はもうちょっと早く渡したかったんだけど、メルの一件等でごたごたしてたからね。全てが無事解決した今、こうして胸を張ってみんなに渡せるという訳だ。
それじゃ早速とばかりに、俺はまずルシエラに向かってお金を渡そうとしたのだけれど。
「以前も言っただろう。私の給金は全てそっちで管理してくれと」
「えええ……」
ルシエラさん、受け取り拒否。
そうなんだよね……ルシエラ、給料の受け取りをこうやって拒むんだよね。お金を持ち歩くのは面倒だから、店側で管理してほしいそうなんだ。必要な金があったら、その時に言うからその際に渡してくれというのがルシエラの希望。
魔物討伐斡旋所でもそうだったらしく、ルシエラとしては大金を自分で管理したり持ち歩いたりするのが面倒で仕方ないらしい。ルシエラらしいと言えばそれまでなんだけど。
そういう訳で、ルシエラのお金は店側で『ルシエラ貯金』として貯めている。今回は受け取るかと思ったんだけど、どうやらこのお金もルシエラ貯金に回るみたいだね。
俺は袋を引っ込めて、ネーナへ渡した。最初からこうなることを予測していたのか、ネーナは驚くこともなく給与袋をしまっていった。
気を取り直して、次はメルの番だね。
俺は自信満々に給料の入った袋をメルへ差し出して労いの言葉をかけたのだけれど。
「メル、お疲れさまでした。これがメルの初任給になります」
「私も特に使い道はありませんから、ルシエラさんと同じようにそちらで管理して頂けると助かりますわ」
「ええええ……」
メルさん、ルシエラ同様受け取り拒否。
……というか、あれだよね。ルシエラもそうだけど、メルもお金に困ってないから早急に受け取る理由もないんだろうね。国内でも有数の八階級討伐者に領主の娘だから、困るはずもないだけど。
まあ、メルがそういうなら、メルのお金も『メル貯金』として新たに貯蓄に回そう。
必要になるときがあるかは分からないけれど、必要になったら言ってもらえると思うしね。ルシエラの時と同様、ネーナはメルの給与袋も片づけていく。
ルシエラ、メルと受け取り拒否されて、残るはタヌ子さん。
タヌ子さんまで『タヌ子さん貯金』を希望するのだろうか、なんて考えていたら、タヌ子さんは違った。俺からの給与袋を嬉々として受け取ってくれた。
『ありがとうございますー! 初給与! 私の初めてのお給金です!』
「う、うん、おめでとう。ここまで喜ばれると、こっちも嬉しくなるね」
『うふふー! 早速次の休みにパーっと使いますよー!』
給与袋を両手で持って、クルクルと踊るように回るタヌ子さん。
天高く翳すように袋を持ち上げる様は見ているこっちも楽しくなるね。そんなタヌ子さんに俺は笑いながら訊ねてみた。
「ちなみにお給金でほしいものとかあったり?」
『はい! メリレーリ通りにある服屋さんに欲しい服があったんですよ! お日様のような色でキラキラふわふわした服で、とっても可愛いんです! お給金が入ったら、絶対に買おうって決めていたんです!』
「そ、そうなんだ……」
嬉しそうに語るタヌ子さん。
ただ、俺は脳裏を過ったある不安を口にできなかった。
……その服、タヌ子さんに合うサイズなんてあるんだろうか。
どう見てもマスコットじみたタヌ子さん、その体型は普通の女性のそれではなく、見事にファンシーぬいぐるみ体型。
今の服は魔法で用意しているから着れるみたいだけど、果たして普通の服は……うん、考えないことにしよう。喜んでいる中で水を差すのも可哀想だ。
そんなことを考えていると、俺の隣に立つネーナが小声でそっと呟いてくれた。
「大丈夫ですよ。大きさが合わなくても、私が直しますから」
……驚いた。考えていたこと、ネーナにはお見通しだったのか。
驚いて彼女を見つめると、そこには見惚れるほどの綺麗な笑顔が。うーん天使だ。
そんなネーナと見つめあっていると、メルの咳払いが一つ。慌てて背筋を伸ばし直して、俺はみんなに口を開く。
「それじゃ、これで給料の支払いは終わります。また一カ月、みんなで頑張っていきましょう」
「ネーナへのお給金はどうなっていますの? 既に受け取っていますの?」
気になったらしく、メルがネーナへの給金の存在を確認してきた。
ネーナと自分の給料、存在してないんだよね……さて、何と説明したものか。
少し考えていると、ネーナが代わりにメルへと説明し始めてくれた。
「私とリツキ様のお給金は決まっていないんです。店を立ち上げてから、商売がどの程度の規模になるか分かりませんでしたので、軌道に乗るまではと」
「まあ、特に俺たちも個人で使うことはないからねえ……店主とその家族って感じで、売上金から生活費だけ使ってる感じかな」
家族。そうネーナのことを口にした瞬間、メルの空気が変わった。
いや、なんか怖い。プレッシャーを感じる。メルが不機嫌になった気がした。なんでさ。
眉を少し吊り上げた状態で、メルは淡々と自分の意見を述べていく。
「それはいけませんわね。そのような曖昧な線引きをしていては、後々問題となる可能性があります。リツキさんは店主ですからともかく、ネーナは一店員としてしっかり給与を払うべきですわ」
「いや、確かにその通りなんだけど、ネーナは給与を受け取らないし、何よりお金の管理は全部ネーナに任しているわけで……」
「それを決めて指示するのも店長のお仕事でしょう。何をネーナに甘えて適当なことを言ってますの」
「はい、おっしゃる通りです、すみません」
いや、怖いから。メルさん怖いから。仕事中の笑顔はいったいどこへ。
でも、メルの言うことも一理あるんだよね。というか百理くらいあるんだよね。
ネーナと一緒に店を立ち上げ、今まで家内扱いで給与未払いだったけど、これがいつまでも続くのは本当によくないことで。他の店員も増えたことだし、このままってわけにもいかない。
みんなにお給金を払っている以上、ネーナにもしっかり払わないといけないね。
俺はネーナに向き合い、頭を下げて口を開く。
「ごめん、ネーナ。メルの言うとおり、確かに俺はネーナに甘えてた。ネーナのお給金もしっかり払わないと駄目だね」
「私は本当に構わないのですけれど……メル、見逃してもらえませんか?」
「駄目です! 貯金という形だけのお給金でも構いませんから、しっかりもらいなさいな! こういうところは最初にきっちりしておきませんと、店が大きくなった後で問題になったら目も当てられないでしょう?」
上目遣いでメルにお願いするも、メルはネーナの頼みを一蹴。
凄いな、メルは。俺は駄目だ、あんな目でネーナに頼まれたら何でもうなずいてしまいそうだ。結局、メルの意見が通ってネーナもメルたちと同額の給金をもらうことになった。
新たに『ネーナ貯金』が無事に設立され、これで一件落着だと思ったんだけれど。
俺をじっと見上げる二人の視線。コタロとリラだ。
何かを期待するような目で見つめ、しっぽを右に左に振っている。
……あれかな、みんな何か貰っていたから、自分たちももらえると思ったのかな。
可愛い二人の視線に耐えらえず、俺は視線をネーナに向けてアイコンタクトを試みる。そんな俺にネーナから笑顔のゴーサイン。以心伝心、ネーナに感謝して俺は二人に提案する。
「二人も頑張ったからご褒美をあげないとね。今日はみんなで一緒に美味しいもの沢山外に食べに行こうな。どれだけ食べてもいいから、好きなだけ食べるように」
俺の言葉に二人は大喜び。
家で食べるのもいいけれど、やっぱり外食に子どもはわくわくするものだよね。
こうして俺たちはみんなで夕食へと夜の街に出かけるのだった。
あの、ルシエラさん、夜の街路でカーラジコン走らせるの流石に勘弁してもらえませんかね。どれだけハマってるんですかね。
・七十五日目入荷商品
電子体温計
本日より無事アウトレット更新再開となりましたが、何卒よろしくお願いしますー!
また、試験的に第四部ではその日の獲得アウトレット品の記入を行ってみようと思います。
色々また試行錯誤を繰り返して、皆様とともにより素敵な物語を描ければと思います。これからもアウトレットをよろしくお願いしますっ!




