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32.初めての商談かな

 



 異世界生活五十日目。



 売上競争なる催しが開かれてから今日で一週間が経過した。

 残り日数二十三日、俺たちリリネコ商店の現在の順位は八十三位だ。

 俺のいる中位グループ、七十位から百位は本当に僅差の中でひしめき合っている感じで、日々抜きつ抜かれつな感じでこの順位だ。

 それでも百位以内をキープできているのはいいことだね。まだまだ序盤、他の人たちもそこまで本気になっている訳ではなく、様子見も兼ねているんだろうけれども。


 そんな順位争いのキーマンになるであろうメルは毎日午後から大忙しの毎日だ。

 昼前にリリネコ商店を出て、色んなお店を回って話を聞いて回っているそうで、毎日コピー用紙にして二十枚以上のメモを持ち帰ってきている。

 場合によっては一度リリネコ商店に戻り、倉庫から商品を実際に持っていったりしている。商品がどんなものかを直接見てもらったり、確かめてもらっているんだとか。

 日が完全に落ちる頃に帰宅しても、メルの仕事は終わらない。

 メモや出先での会話を元に自分なりの分析をしたりしているそうで、自室で作業に没頭しているらしい。


 あまりに仕事に追われているものだから、何か手伝えることはないかと訊ねるけれど、メルは『必要な時が来たらお願いします』とやんわり拒否。

 なんでも本人曰く、今は仕事が楽しくて仕方がないらしい。忙しいけれど、大変だけどやりがいがあるそうだ。メルらしいなと思う反面、気付かない内に無理がきたりしないか、ネーナたちと一緒に心配しつつも見守ることにする。


 昼過ぎの時間帯、いつものようにカウンターで接客をしていると、メルが慌しく店の扉を開いて入ってきた。

 今日も外回りに出かけていたから、商品を取りに来たんだろうか。そんなことを考えてネーナと二人で首を傾げていると、メルは俺たちの元へ近づいて来た。

 いつもとは様子の違う、やや緊張したような表情のメルに、ネーナが優しく訊ねかけた。


「どうしたの、メル。そんなに慌てて。忘れ物?」

「ネーナ、リツキさんを少しおかりしますわよ。リツキさん、構いませんわね?」

「ああ、どうぞ……って、俺?」

「あなたです!」


 きっぱりと言い切り、メルは俺の手を掴んで早足で店を出た。

 当然、引っ張られる形で俺も外へ移動することになる。俺たちをネーナが微笑んで手を振って見送ってくれた。

 露店の立ち並ぶ大通りをメルは早足で歩いていく。

 そんなメルに、俺は歩調を合わせながら訊ねることにした。


「あの、メル。俺、何で連れてこられているのかまだ説明受けていないんだけど」

「契約締結のためにリツキさんの署名をお願いしたいのです!」

「契約? あ、もしかして例の案件の」

「そうですわ! 昨日の夜、お話していた『ラナリー商店』との取引が合意を迎えたのです!」


 そういえば、昨日の夜に言っていたな。契約合意になりそうな案件があるって。

 契約内容は『塩コショウ』の販売。量は一月に百カルラ。

 体重計で調べたら、一カルラが大体二キロだったから、二百キロということになる。

 月に一度の販売で、価格は一カルラあたり六千リリルだから、六十万リリルの収入ということになる。これが商品を渡すときの支払いという契約だ。

 契約の更新、打ち切りの判断は納品の十日前までに報告……だった気がする。こんな契約内容を必死に読まされた気がする。


 ただ、メルの読みだと早くても三日はかかると言っていた。それが早まったから、こんなに焦っているんだね……まあ、契約の署名に俺の同伴が必要だって知っていたら、あらかじめメルなら俺を連れていくよね。

 初めての契約成功が間近に迫っているともなれば、メルだって緊張するんだね。

 そんなメルの気持ちをほぐすために、俺はあたりさわりのない雑談をふってみる。


「ラナリー商店って、どんなお店を経営しているところなの? 塩コショウを沢山欲しがるってことは、飲食店?」

「いいえ、その飲食店に食料や調味料を卸している商店ですわ。最近力をつけてきた新進気鋭の商店で、私を門前払いすることなく一番熱心に話を聞いてくれましたわね」

「あ、やっぱり門前払いってあるんだ……」

「当然です。いきなり店を訪れて、お話をさせてくれと言ってまともに取り合う店の方が少ないですわよ。特に老舗やある程度以上の格を持つ店は難しいですわね」

「そうなの?」

「そういう商店やお店は昔からの付き合いがある、信頼のおける商人のみと取引している可能性が高いのですわ。贔屓する代わりにより低価格で商品を大量購入していますの」

「なるほどなあ……」

「ですので、私たちが狙うのはまだ入り込む余地のある商店となります。ラナリー商店はここ数年で急速に力をつけた商店ですが、その地盤はまだ盤石とは言えません。保守を嫌い、新しい物、良い物に対して常にどん欲な姿勢を貫いている、まさに私たちにとってうってつけの交渉相手ですわね」

「詳しいね。それも全部調べた情報?」

「祖父が言いませんでした? 私、小さい頃から商人になりたいという夢を持っていましたの。将来のために、この国の商会や商人の情勢を調べることは基本中の基本ですわ」


 いや、本当に参った。

 つまりメルは今回の案を立ち上げた時から、ラナリー商店との接触を狙っていたんだろうね。リリネコ商店の商品ラインナップやラナリー商店の姿勢から、ウチに一番マッチする商店だと当たりをつけていたわけだ。

 もちろん、そのラナリー商店だけではなく、広く他店も当たって情報を得ることを怠らない。

 あまりに見事過ぎて、メルが店長の方が上手く店が回るような気さえしてきた。

 そんなことを考えていると、メルが足を止め、目の前の建物を見上げた。

 俺たちの視線の先には、リリネコ商店のお店よりも三回りも四回りも大きなお店が建っている。赤レンガのようなもので作られた頑強そうな造り、武骨さを感じさせるのは店長の趣味なんだろうね。

 そのお店を見上げながら、メルは俺に最後の確認とばかりに声を紡ぐ。


「契約の話し合い自体は、私とラナリー商店の担当者で詰めていますわ。あとはリツキさんとラナリー商店の店長が契約書に署名をすることで合意になります」

「サイン……じゃないや、署名すればいいんだね」

「ただ、あちらの店長と顔合わせすることになりますので、そこで相手側の機嫌を損ねてしまえば全てが水泡に帰すこともあります。全ては互いの店長の合意次第、私たちは舞台を作っただけだと考えて下さいな」

「ああ、そんなプレッシャーを……メルは意地悪だ」

「意地悪なんてしてません! 特に難しいことは求めませんので、とにかくリリネコ商店の店長として、覚悟を決めて臨んで下さいまし」

「頑張るよ……」


 小さく息をついて、俺はメルとともにラナリー商店へ足を踏み入れる。

 既に話は通っているらしく、メルの姿を見て、受付の人が俺たちを奥の部屋へと通してくれた。

 そして、立派な扉の前で大きく深呼吸。

 メルがここまでお膳立てをしてくれたんだ。俺のミスで全部が駄目になったら、それは情けなさ過ぎる。大失敗だけはしないように。

 俺は覚悟を決め、室内へと入った。あ、やばい、緊張のあまりノックを忘れた。

 扉を半分開けた後、俺は慌てて締め直して、ノックをする。それを見て、メルは絶句。後に咆哮。


「リツキさん! あなたはいったい何を遊んでいますの!?」

「ごめん、緊張のあまり入室許可を貰うのを忘れちゃって。やり直した方がいいかな、と」

「そんな必要はありません!」


 メルが怖い。目が恐ろしいくらいに釣り上がっている。

 相手の店長に対する大失敗の前に、メルに対して大失敗をやらかしてしまった。

 ただ、扉の向こうからは若い男性の大きな笑い声が聞こえてくる。笑われてる、俺、滅茶苦茶笑われてるよ。

 店長の恥は店員の恥とでもいうように、顔を真っ赤に羞恥で染めたメルは、俺に押し殺すような恐ろしい声で命令する。


「入って下さい。な・か・に、入って下さい」

「はい……」


 肩を落として、俺は相手の店長の待つ室内へと入る。

 そこには、ソファーのような長椅子に座った若い男と、その後ろに立つ女性が俺たちを心から楽しそうに笑って見つめていた。本当に恥ずかしい、申し訳ない……

 とにかく謝罪をと、俺は慌てて頭を下げて非礼を詫びようとしたけれど、その人は制止して俺に声をかけた。


「頭なんか下げなくていいだろ。俺もルシアも腹の底から笑わせてもらったしな。商品も商売も最初の印象が大事だ、そういう意味では最高の出足だぜ」

「いや、本当にすみません……リリネコ商店の店長のリツキ・カグラと申します」

「ラナリー商店のオードナ・グレッシュアだ。こいつはルシア・アーネシア」

「ルシアと申します。メルさんとの交渉を務めさせて頂きました。本日はよろしくお願いいたします」


 そう言ってオードナさんとルシアさんは笑みを零して自己紹介をしてくれた。

 オードナさんに促され、俺とメルは彼らと向かいあうように対面の長椅子へ腰を下ろした。そして、二人をさりげなく観察する。


 オードナさんは濃い茶髪と無精髭が特徴的な野性味あふれる男性って感じだ。頭に白のターバンのようなものを適当に巻きつけ、服装は動きやすさを重視した簡単なもので揃えている。

 体は鍛えられているし、商人ってよりは討伐者の皆さんに近い空気を持っているかも。そういう意味では、俺にとって接しやすいかもしれないね。

 ルシアさんは水色の髪を肩口くらいで切り揃えて、上品な白のローブを纏っている。メルよりもネーナに近いイメージかな。


 どちらも年齢的には二十五前後ってところだろうか。

 当たり前だけど、二人とも俺より遥かに年上で交渉経験も比較にならないはずだ。

 とにかく飲み込まれないように、巻き込まれないように自分の心を律しよう。

 そう覚悟を決めて、俺は口を開く。


「早速で恐縮ですが、『塩コショウ』の取引をラナリー商店様に同意いただけましたこと、心より感謝いたします。この契約が互いの商店の……」

「おう、そういうのはいいぞ。堅苦しいのは柄じゃねえしな」

「はあ……」


 飲み込まれないようにするつもりが、いきなり出鼻をくじかれた。

 いや、最初の入室の時点で挫かれてはいるんだけども……悲しい過去を振り払おうとする俺に、オードナさんは肩を竦めながら俺に話す。


「難しい話は全部ルシアに投げているんだよ。俺がやるのはこうして最後の契約時に署名をするだけさ。利益だなんだを考えるのは、頭のいい奴や才のある奴がすべきだ。俺たちがやるべきは、しっかりそいつらのケツを持ってやることと、王様のようにふんぞり返って胸を張ることだ。違うか?」

「前半は同意します。ただ、私もオードナさんのように姿勢で店員に安心を与えてやれればいいのですが、私がふんぞり返っていても滑稽なだけのような気がします」

「男の姿を語るには少しばかり年齢が足りねえか。リツキ、お前歳は幾つになる?」

「十五になります。今年で十六を迎えます」


 俺の言葉に、オードナさんは少し驚いたような顔をする。

 そして、興味深げに俺を見つめながら口元を吊り上げた。


「十五で商店を立ち上げているのか。有望だな、外見は頼りねえ子どもにしか見えねえが」

「ありがとうございます。外見はもう時を重ねた先の未来を信じるほかありませんね」


 そう言葉を返した俺をオードナさんは一度言葉を切り、じっと見つめ始めた。

 まるで俺を値踏みするかのように眺めて、楽しそうにしながら、ルシアさんに声をかける。


「ルシア。契約書出してくれ」

「既に用意は終えていますよ、オードナ」


 そう言って、ルシアさんは二枚の書類をオードナさんに渡した。

 そして、その二枚を俺たちの間にあるテーブルに置き、机上の羽ペンのようなものを走らせた。

 自分の名前を書き終え、ペンと書類を俺に渡して告げる。


「ほれ、契約書だ。書面の条件はそこのお嬢ちゃんとウチのルシアで決めた内容だから、確認する必要もねえだろ。さっさと二枚に署名しな」

「えっと、それはつまり……」

「合格だ。その年齢で、俺の粗暴さにそれだけ返せりゃ取引相手としては十分だ。そこのお嬢ちゃんが売り込みに来た『塩コショウ』、しっかり取引させてもらおうじゃねえか」


 そんなオードナさんの言葉に、俺は一瞬何を言われたのか分からなかった。

 ただ、それが商談成立を告げる言葉だと分かると、歓喜が心を埋め尽くしてしまった。そして、その場で頭を下げてお礼を言う。


「ありがとうございます! メル、やったよ! 取引成立だって!」

「ま、まだ取引先で話し合いの最中ですわよ!? 恥ずかしいから最後までしっかりしてください!」

「あ、そ、そうだった。いや、本当にすみません……」


 嬉し過ぎて舞いあがり過ぎてしまった。メルにしこたま注意された。

 そんな俺にオードナさんは隠すことなく大笑い。もうこれは馬鹿笑いってレベルだと思う。散々笑い飛ばした後に、オードナさんは意地悪な笑みを浮かべて話しかけてくる。


「ま、誰だってそういう初めてはあるもんだ。嬉しいもんだよなあ、初めて取引を勝ち取ったときの喜びは俺も忘れてねえよ。確かシシリー肉の取引だったよな、ルシア」

「アズメラ果実の取引ですよ、オードナ」

「最初の取引なんて時間が経てば呆気なく忘れちまうもんさ。それくらい、これからお前たちの待つ道は目まぐるしいほどに忙しい取引の日々ってこった」


 オードナさん、一瞬で言っていることを掌返ししたぞ。凄いな、この人。

 喜ぶ俺たち……というか俺に、オードナさんはニヤニヤと笑いながら、言葉を続けた。


「とりあえず、この取引は『試し』だと思ってくれていい」

「『試し』ですか?」

「俺たちゃ商人だ。この先も売れると判断したものは全力で売り込むし、売れねえと判断したものは容赦なく切り捨てる。そこに情は挟まねえし文句は言わせねえ。今回、『塩コショウ』の取引を行った理由は『可能性』を買ったと考えてくれていいぜ。これを扱って、一カ月色々試して、使えると思ったら契約続行だ。売れなきゃコレだけどな」


 そう言ってオードナさんは首元に手を当てる仕草をして笑う。

 いや、リリネコ商店にとっては笑い事じゃないんだけど、オードナさんが言っていることはまごうことなき正論だ。

 物を売ることは結果が全て、売れるか売れないかにかかっている。それは商売初日に痛いほど思い知った一番大切なことだ。

 『塩コショウ』を扱うことで、オードナさんたちは相応のリスクを背負っているし、事実リリネコ商店にその売り上げとは関係しない買い取りのための額を払っているのだから、その判断は至極当たり前のことなんだね。


 つまり、オードナさんが試している可能性というのは『塩コショウ』のことだけじゃない、『リリネコ商店』の力ことも含めてなんだろう。

 俺たちが推してきた商品が売れるようなら、この先も新たな取引を持ちかけるに値する商店とみなし、売れないようならハイサヨナラってことなんだと思う。シビアだけど、それがこの世界だ。


「金は商品と引き換えに渡す。遅くとも一週間後までにウチに塩コショウを渡してくれ。結構な量になるからな、分割して持ってきてくれても構わねえし、言ってくれれば荷車をうちから出そう」

「分かりました。可能な限り早急に納品いたします」

「あとは……そうだな。一応、店主のお前に訊いておこうか。『塩コショウ』、売れると思うか?」

「売れます。それだけ良い物だという自信があるからこそ、ラナリー商店に売り込ませて頂きました」


 はっきりと返した俺の解答に、オードナさんは今日一番の笑みを浮かべた。

 それはどこまでも気持ちのいい、人としての魅力を感じさせる笑顔だった。

 ……いや、自信満々に言い返しちゃったけど、売れると判断したのはメルなんだけどね。

 メルが言うんだからという自信でよければ、いくらでもあるんだよね。

 自分の商売に関する直感は微塵も信じられないけど、メルなら信じられるよ。あんなにデータとにらめっこして、分析に分析を重ねていたんだ。メルの努力を信じることなら負けないぞ。


「言うじゃねえか。だが、良い答えだ。物を売るってことは、そういうことだ。この商品は絶対に売れる、自信をもって客に届けられる良い物だと胸を張れなきゃ話にならねえ。その気持ちを忘れるなよ、リツキ」

「はい。胸にしっかりと残して商売に励みたいと思います」


 頭を下げる俺とメルに、オードナさんは満足そうに笑って話を終えた。

 そして、俺とメルはルシアさんに案内されて部屋を退出する。二枚の契約書のうち、一枚だけを持ち帰って、俺とメルは店を出た。

 店の外まで案内してくれたルシアさんは、やんわりと微笑みながら話してくれた。


「あんなに楽しそうなオードナを見るのは久しぶりです。リツキさんにとても興味を持っているみたいですよ」

「本当ですか? それだと嬉しいのですが」

「オードナはあんなふうに怖がらせていましたけれど、塩コショウは私たちが責任を持って販売いたしますので安心して下さいね。メルさんが熱意を込めて、こんなにも素晴らしい商品を当店に売り込んでくれたのですから、それを無駄にする訳にはいきません」


 そう言って、ルシアさんはメルの方へ視線を向ける。

 突然目を向けられて驚くメルの反応を楽しみながら、ルシアさんは語ってくれた。


「私もオードナも売れる商品だと判断したからこそ取引をいたしましたので。あとは私たちラナリー商会の力を信じて頂ければと思います」


 そう言って一礼し、ルシアさんは店内へと消えて行った。

 全てが終わり、店の入り口に残る俺とメル。そんな俺たちの胸の中にじわじわと溢れてくる感情、そして、その感情は我慢していた分、俺より先にメルが爆発した。


「リツキさん、やりましたわっ!」


 室内で我慢していた感情――喜びが抑えきれなかったらしく、メルが俺に飛びついて来た。

 そう、メルは見事やり遂げてみせた。リリネコ商店として、初めての契約を勝ち取ることを。

 俺の胸の中で歓喜するメル。それは普段の凛とした姿を忘れさせる、年相応の少女の顔だった。本当に綺麗で、とても可愛い笑顔。


「よ、良かった。本当に頑張ったね、メル、おめでとう。そして、ありがとう」


 途切れ途切れになりながら、俺は必死に伝えるべき言葉をメルに伝えた。

 労いと、そして感謝。メルの頑張りが実を結び、こうして結果となったのだから。全てはメルの力による賜物だ。

 喜び過ぎて、俺の言葉が耳に入っていない様子のメル。俺は彼女の耳にその言葉が届くまで、何度も途切れ途切れの震える声で感謝を伝えるのだった。メル、本当にありがとう、と。



 ……声が途切れ途切れで震えているのは、まあ、ねえ。

 メルが抱きついているってことは、つまり、俺の胸にメルの胸が押し当てられているってことで……メル、本当にありがとう、色々と。




 

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