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旅立ちの街、ルーラン

戦闘シーンがあります。

苦手な方は注意してください。


人々の声が騒がしく響く街。世界樹に旅立つ世界中の冒険家たちの始まりの街、ルーラン。


「人だらけだ…」


他人と関わることを制限されてきたナティーシャには珍しいことこの上ない。

活気に溢れたこの街は、見ているだけで心が暖かくなる。

不意に、どこからか悲鳴が上がった。


「に、逃げろ!!魔獣が現れた!!」


はっと顔を上げると、広場のような開けた場所から、黒い靄のようなものをまとった獅子がこちらに向かって走ってきているのが見えた。

あわてて逃げ惑う人々。


「あっ!!」


大人たちに押されたのか、幼い少女が魔獣の前へ倒れこんだ。それを見たとたん、考えるより先に体が動いた。

怯えて我先にと逃げ惑う人々を飛び越え、魔獣の前へと降り立つ。同時に少女を掴み、剣を引き抜く。


「誰かこの子をキャッチしてください!!」


そして、小さな少女を人混みの中へ投げた。


「おわっ!?」


誰かが抱き留めてくれたと信じて、激昂した魔獣に剣を突き刺した。


「グフゥッ!」


さすがに一撃では倒せないが、やや魔獣が怯んだ。一瞬の隙を見逃さず、修行で培ったその足のバネで飛び上がり、上から剣を突き刺した。が、最後の悪足掻きのように魔獣が体を捻って、ナティーシャを振り落とした。とっさに受け身をとって衝撃を逃すが、隙ができてしまった。

狙ったように魔獣が爪を振り上げたのが見えた。


(まずい!)


避けられないっ、と目をつぶる。

不意に心の中で声がした。


『怯むな。剣をとれ。敵に剣を』


それが声だと、言葉だと理解したとたん、無意識のうちに剣を突き上げていた。

剣を握った右手を魔獣の爪が霞め、ナティーシャの剣が魔獣の心臓を貫いたのはほぼ同時だった。

ナティーシャの右手から鮮血が流れる。


「くっ!」


痛みをこらえ、更に奥深くまで突き刺す。


「ぐ、がぁぁぁぁっ!」


魔獣の断末魔の叫びが響き、やがて霧となって魔獣は消えた。


「…………………」


不気味なくらいの静寂が訪れ、次の瞬間歓声に変わった。


「わあぁぁ!!」


「ありがとうございます!!」


先程の少女を抱いて、母親らしき女性が頭を下げた。


「頭をあげてください。とにかく、助かってよかったです」


ナティーシャは右手をかばいながら立ち上がった。


「本当にありがとうございます!!」


感極まったように涙を流す母親の後ろから、突然顔立ちの整った青年が現れた。


「ずいぶんと剣の腕がいいんだな」


「あ、ありがとうございます…」


行きなり現れた青年にやや警戒する。

そんなナティーシャの様子を見て、青年は苦笑した。


「俺は怪しい者じゃない。実はお前に頼みたいことがあってきたんだ」


「頼み事?」


そして彼は、驚くべき事を口にした。


「一緒に世界樹へ入ってくれないか」

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