表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

母親の死

街の喧騒から逃れるようにしげる、森のなかにひっそりと暮らす親子がいた。


「母様、母様!!しっかりしてください!!」


木造作りの小さな家で、今一つの小さな命が消えようとしていた。


「やだっ!!死なないで!!」


すがり付く手を母―サファイア―はそっと握った。

その手はすでにもう力がまともに入らなくなっていた。


「ナティーシャ、ねぇ私の愛しい娘…聞いて…」


今にも消えそうな小さな弱々しい声で、彼女は必死になって言葉を紡ぐ。


「お願いがあるの…私が死んだら…このペンダントを世界樹に持っていってほしいの…

ナティーシャは巫女として世界樹に行かねばならないから、これを託すわ…」


「ダメだよ!!生きて、世界樹に持っていかなくてもいいようにしなくちゃ!!駄目なんだよ!!」


大粒の涙がこぼれる。


「行きなさい、ナティーシャ。

世界樹に届けて…私の想いを…

そして、歴代の巫女ができなかった…音楽の復活を果たして…

出来るのは…貴女、だけだから…」


言葉が次第に途切れていく。

それはもう残された時間が少ないことを表していた。


「あいして、いるわ…」


「母様…?………母様ぁー!!」


少女の悲痛な叫びが響いた。

泣いて、泣いて、涙が枯れ果てるまで泣いて、顔を上げたナティーシャの顔には弱々しい少女の面影はなかった。


「ねぇ、母様。私はやりとげて見せるよ。

願いを叶えて見せる」


使命に燃えた瞳は誰よりも強かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ