一匹狼、デレる
【シズク視点】
チャイムの音が、授業の始まりを知らせた。
5時限目の今、隣の席のユウは、眠そうに外を眺めていた。
ユウと俺の席は、一番左の列の一番後ろ…つまり、窓側の後ろの席だ。
日当たりもよく、風も入ってきて、さらに寝ていてもバレにくい。確かに眠気を誘われる。そんなベストポジションにユウが、その右隣に俺の席がある。
「眠そうだな」
眠そうなユウに言う。そういう俺は、午後の授業は眠くならないタチだから、どこの列でも、どこの席でも関係ない。
……それに、どこの席でもまともに授業聞かねぇし。
「ねむい…とてつもなく」
ユウ、本格的に寝そうだな。
相当キテるのか、しゃべり方が幾分、幼く感じる。
俺はユウの頭に手を乗せ、二回ほどポンポンと頭を撫でる。
「なに…」
ユウはまたしても眠そうに言う。
「寝ろ」
俺は短くそう言った。
するとユウが、
「ノートとらなきゃ……わかんなくなる」
と言った。
─────まったく、コイツは…
真面目なのか不真面目なのか、たまに分からなくなる。
そう言いながらも、ルーズリーフを取り出し、シャーペンを持った俺も人のコトは言えないが。
「俺にこんなことさせられンのは、お前くらいだぜ?」
俺は少し笑いながら、既に寝てしまったマイペースなコイツのために、板書を写し始めた。
ちょっと甘くしてみました。
シズクはユウのこと、なんだかんだ言って大切に思ってます。