夏祭り
三題噺もどき―きゅうひゃくにじゅうご。
風がごうごうと吹いている。
今日は一段と強く吹いている印象がある。
これだけ強いと、スカートなんて意味も持たない。
「……」
ただでさえ自転車を漕いで風を受けるような形なのに。
その上で風がこれだけ吹いているのだ。
いくら抑えようと限界というものは何にでもある。
すれ違った猫は、風で毛が逆立っていた。
「……」
今月に入って風が強くなかった日なんて、そうなかった気もするけれど。
だからその対策には慣れつつあるが、この風の強さは少々難ありという印象だ。
……まぁ、家の中に居るので関係ないのだけど。
「……」
窓の外から入り込む光は、あまりにも眩しすぎて直視できない。
反射して天井でキラキラと揺れている。
扇風機を回しているから、レースカーテンが動くんだろう。
「……」
徐々に曇り始めたのか、その光は少しずつなくなっていく。
夕方辺りから雨の予報が出ていたけど、降るんだろうか。
最近は降っても一瞬小雨が降る程度だから、たいしたことはないんだろうけど。
「……」
ソファに寝転がって、ぼうっとテレビを見ていた。
頭だけをテレビに向けて、身体は仰向けだ。
首が痛くなってくるけれど、その時は少し天井を見上げれば問題はない。
「……」
昼間のこの中途半端な時間にしているテレビなんて。
あまり面白みはないのだけど。
これを見ているなら動画を眺めていた方がいくらかマシに思える。
「……」
けれど、そんな気分にもなれないから。
意味もなくこうしてゴロゴロしてテレビを流しているのだ。
今は、全国のお祭り特集とやらをしている。いつかの再放送だろう。
この8月の末にしたところで意味のない内容ばかりだから。
「……」
どれもこれも、開催が終わっているものばかりだ。
小さな祭りから全国的にも有名な祭りまで。
この国はお祭り好きだよなぁと、この時期になると思う。
「……」
かく言う私も、夏祭りには行くので何とも言えないのだけど。
初めてあの子と行った今年の夏祭りはとても楽しかった。
お互い、浴衣や甚平じゃないあたりらしいなと思ったが。
「……」
人が混み出す前の、賑やかになりだす前の、ほんの少しの時間だったけど。
真っ白なワンピースに、長い髪をポニーテールにまとめて。
いつか見せてくれた向日葵のイヤリングもつけていた。
「……」
歩き易さを重視して、高さのないサンダルを履いて。
それでも私より身長は高い。……私はチビな方なので。
ラフと言えばラフな格好なのに、綺麗で清楚で夏の青空に映えるのだから、不思議でならなかった。
「……」
その恰好で、たこ焼きをアツアツと食べたり。
かき氷の冷たさに頭を抱えたり。
キャラクターのお面を頭につけたりするから。
「……」
唇の端にソースがついて、それを舐めたり。
シロップで青く染まった舌を、ちろりと見せたり。
一口、と口を開けて待ったり。
「……」
その後も学校で普通に会っているのに、なんか不思議な時間だった。
それまであまり遊んだりはしなかったのもあるんだろうけど。
間違いなく、夏の一番の思い出になった。
「……」
「……」
暑さで頭が働いていないのか、ぼうっとしすぎた。
さすがに耐えきれないので、部屋に戻って冷房を付けて勉強でもしよう。
そろそろ妹たちも帰ってくる時間だし。
「……」
テレビから、賑やかな掛け声が聞こえてくる。
お題:雨・猫・お祭り




