表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

第1章:プチハードの朝(才能点28点)


---


### 第1章:プチハードの朝(才能点28点)


小学一年生、春の朝。

桜の花びらが風に舞い、校庭の土の匂いと新しい教科書の香りが混ざる季節。私は制服の袖をまくりながら、教室の扉を押し開けた。朝日が机の角に当たり、わずかに光を反射する。そこには、予想通り、私の通知表が置かれていた。


――28点。


数字を見た瞬間、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。28点――才能初期値は、明らかに低すぎる。クラスメイトの何人かは、すでに70点前後の点数を誇っている。彼らは笑顔で友達と話し、次の授業の話題に盛り上がっている。私はその輪の外に座り、机の上の紙をじっと見つめる。


「もっと頑張ってよ」


憧れのクラスメイトの声が頭をよぎる。あの子は明るく、成績も優秀で、笑うたびに周囲の空気が変わるタイプだ。普通の子なら、ここで諦めるかもしれない。才能点28点――十分に「無理だ」と言える数字だ。しかし、私は違った。数字を冷静に、丁寧に、まるで計算式のように読み解く。


* 才能初期値:28

* 努力倍率:×3

* 社会的階級補正:低

* 女性要求補正:×1.2


単純計算では、普通の人比で**約4倍の努力負荷**になる。しかし私は、そこに恐怖を感じるよりも、「戦略」を見出す楽しさを覚えていた。脳内でシミュレーションが始まる――1日2時間の学習時間を確保し、放課後は友人と勉強会を開く。体力管理も忘れずに。小さな進歩を積み重ねれば、28点という数字も、必ず超えられる。


放課後、私は机に向かい、ノートを開いた。ペンを握ると、冷たく硬い感触が手に伝わり、頭が自然に集中モードに入る。まずは漢字の反復練習。次に算数の文章題。問題を一つ一つ解き、間違えたところは色分けして記録する。失敗も無駄ではない――それも計算のうちだ。


ノートの端に、努力計画を書き込む。


* 朝:読書15分

* 放課後:友人と勉強会+宿題

* 夜:復習+計算ドリル30分

* 週末:社会・理科の特訓


計画表を眺めながら、私はふと、自分の手の小ささに気づいた。まだ一年生の手だ。文字を書くときに力加減が不十分で、鉛筆の跡が薄くなる。しかし、そこも計算済みだ。最初は不完全でも、量をこなせば確実に力になる。私は数字を紙の上で泳がせる感覚を楽しんだ。


次の日も同じ光景が繰り返される。28点の通知表は変わらないが、心の中の地図は少しずつ広がっていた。教室の窓際、日差しが私のノートを照らす。桜の花びらがまた一枚、風に舞い、机の上に落ちる。私はそれを指先でそっと動かしながら、次の問題を解く準備を整える。


「努力って、数字に現れるのかな」


小さな独り言が口からこぼれた。声は小さいけれど、確かに自分の心に届く。才能点28――低いけれど、これからの伸びしろは計算上、無限に近い。私は未来の自分を少しだけ想像する。数年後、努力の積み重ねによって、あのクラスメイトと同じ土俵に立っている自分。想像するだけで、胸が熱くなる。


そして私は、再びペンを握る。


一文字、一文字、慎重に書き込む。小さな努力が、未来の自分の武器になる。28点という数字は、もう恐怖ではない。挑戦の始まりの合図だ。


春風は校庭の砂を揺らし、桜の花はまだ舞い続ける。私はその光景を目に焼き付けながら、静かに、しかし確実に歩き始めた――プチハードな戦いの、最初の一歩として。


---



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ