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第4話:ままごと遊びと一緒だ(1-4)

 文化祭の振替休日などもあり一昨日の無断下校について後藤先生から呼び出しをされ、昼休憩の隙間時間にいつもの空き教室へとやって来た。


 今更、教師に叱られるなんて時間の無駄でめんどくさいと思いつつも建前上の謝罪という武器をポケットに仕舞い込んで中に入る。

 すると「おう!待ってたぞ」とメロンパンを頬張っている後藤先生の姿があり気が抜けた。


「説教するために呼び出したんじゃないんですか?」


「あ?あー、まあ。学年主任からはそうするように言われているが、堅いことは気にするな!」

 ワハハと笑いながら隣に座るよう促されたので大人しく腰を下ろした。


「そういえば、心なしか綺麗になってます?」


「私か?」


「部屋です」


「あー、昨日氷室川が来てな。ウキウキで掃除していったんだ」と肩を落としながら話しているあたりを見ると本当に自分が綺麗なったと勘違いしていたんだろうか。


「あいつ。なんで、こんなことやるんですかね…」


「分からんか?まあ、君には分からんだろうな」

 後藤先生はこちらに一瞥もくれずメロンパンに齧り付いていた。


「後藤先生はさ、あの条件で良いと思ってるわけ?」


「あの条件を出したのは私でも生徒会でもない」


「もっと上ってことか…」


「違うよ。氷室川だ」


「でも、あいつ仕組み話す時スマホ見てましたよ?」


「正確には、彼女のやりたいと言った事をこちらでまとめたら、ああいった形になったんだ。だから、満足気な顔して話していなかったか?」


 そう言われてみると、やけに誇らしげというか嬉々として話しているようにも見えた。それで俺に否定されて少しずつ苛立ちを隠せなくなっていったという感じだったかな。


「俺は分からないんです。奉仕活動がしたいならやればいい。そこにビジネスの真似事を絡める必要なんてないでしょう」


 不本意ながらも昨日もよろず商業部のことが頭から離れず、考えていたけれど本当に分からなかった。


 俺が氷室川に言ったことは何も間違ってはいない。俺が無駄な事をしたくないから金を求める性分なのは置いておいても、仕事をするということは金を受け取る義務も発生するということ。


 金は信頼だ。金は感謝の形だ。


 後藤先生からの言葉を待つように机の木目に視線を落としていると「君は正しい」と話を始めた。


「だが、正しすぎる。逆に考えてほしいんだがな、なぜ奉仕活動にビジネスを絡めてはいけないんだ?」


 言葉の通り逆の質問。


「分からない。正直、絡めたって別にいいと思うっちゃ思う。でも、なんというか腹が立ったんです。労働したものが正当な報酬をもらえない構造に」


「それは氷室川を心配してのことか?」

 俺は首を横に振ってから答えた。


「労働者に報酬が支払われないのならそれはままごと遊びと一緒だ。もし、氷室川がこういう仕事を将来の目標においているとか、これからの時代を見据えて立ち上げたんだとしたら素晴らしいよ。でも、自分に報酬を支払われることで初めて生まれる本物の責任をこの構造じゃ味わえない。それならやっていること自体無意味じゃないですか」


 ふふっと笑みを漏らして後藤先生は俺の肩を軽く小突いく。


「君はそれでいいのかもしれないな。すまん、私のエゴで変なことに巻き込んでしまった。部には入らなくていいぞ。君の仕事のことも気にするな」


 笑っている。けれど、どこか儚さが入り混じるような表情だった。

 そんな顔で謝らせてしまったという事実だけが胸にチクリとした刺し傷を残していった。


「じゃあ、俺は教室戻ります。その、俺は理解できなかったけど頑張ってください」


「ああ、ありがとう」


 消え入るような後藤先生の声が何度も脳裏に響いた。けれど、決して曲げることのできない意志が俺の中にある以上この声のことは忘れるしかないのだと目を瞑る。

「君は正しい。だが、正しすぎる」 後藤先生の顔が少し見え出した話です。

自分の意志を貫いたはずの理人の胸に残ったものは……。


さて、本日の一挙投稿も、次がいよいよ最後。

ラスト、第5話は【20:00】に更新いたします!


バラバラになった「よろ商」と、理人の「俺らしからぬ行動」

今日この物語がどこに着地するのか、ぜひ最後まで見届けてください!


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