表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
2/18

第2話:無知な僕に教えてください、氷室川様(1-2)


「失礼します」


「おう!早かったな〜。こっちだこっち、入りなさいな」


 後藤先生が呼び出したであろう女子生徒が室内を困惑気味に見回しながら中に入り近づいてきた。


「あの、本当にここが部室なんですか?」


「そうだ。まあ、埃っぽさはあるが机も椅子も黒板もあるし、磨けば光る的な?」

 あっはっはー、と大笑いをかましている後藤先生を横目に彼女と視線がぶつかる。


「後藤先生。彼が入部希望者の?」


「そうだ!空木理人、君と同じ一学年だが目立たないので知らないだろう」


「はい。顔だけなら見かけたことあるかもと想定していたんですが…不登校ですか?」


 可愛い顔して小首を傾げながらとんでもないこと言ってくる奴だな。

 もし仮にね、俺が不登校だったとしてそんなストレートに不登校ですか?と聞かれたら社会恨んでニートになった挙句、深夜のコンビニ帰りにトラックに轢かれて異世界転生とかされてしまうだろ。


「俺は不登校じゃないし入部希望もしてねぇ」


「そうなんですね。忍者の家系とかだったりします?」


「いや、ごく普通の家系だと思うが?」

 なんの確認だよ、と呆気に取られていると不敵な笑みを向けられた。


「あまりに影が薄いので忍者の末裔かと思っただけです」


「俺が忍者の末裔でなくてよかったな。忍術とか習ってたら今ここでぶっ放してたわ」


「へー、興味深いですね。ちなみ何の術を選択しますか?」


「クナイで頭部一閃」


「気が合いますね」

「何のだよ」

 無意味な会話に乗せられていると横でうんうんと頷きながら後藤先生が会話を遮った。


「この感じなら安心して部活出来そうだな。今後の活動については二人で話し合ってくれ、活動する上での仕組みとかルールは部長の氷室川から話してやってくれ」


 そう言って、教室を出ようとするので「仕事は?」と聞いてみると「もう終わった〜」と言って笑顔で手を振って出ていった。


「あの人、仕事だけはできるよな」


「それ故に押し付けられる業務も多いみたいですね」


 へー。こいつは意外と周りが見えているタイプの生徒なんだな。どうりで後藤先生に気に入られているわけだ…。


 よし、俺も帰ろう。


 そう思って席を立った瞬間、悪寒が走るような視線を目の前の彼女から感じた。


「まさか、今帰ろうとしました?」

 口元がにっこりしてるのに目が笑ってない。こ、怖すぎる。てか…。


「まずさ、名前なんて言うの?」


「えっ」

 何故だか目を丸くして驚いた表情をしていたのでどこかで自己紹介されたっけ?と思いつつも絶対にされていないので「自己紹介してないだろ」と言葉を付け足した。


「あ、そうですね。その、私こう見えても結構表に出てるので名前くらいは知られていると思ってたんで」


「へー?」


「じゃあ、改めて、氷室川雪音です。定期テストでは今のところ一位をキープしてます。一年一組のクラス委員を前期は務めてましたが、この文化祭を境に任期が終わるので部活を勧められ設立に至りました」


「あー、なるほどね」

 定期テストでの順位に加え学年を代表するような優秀な生徒であるという外装を話してくるあたり、かなり無駄な学園生活を送っているんだなと思い嘲笑してしまった。

 すると、氷室川は口をへの字にして不満げな顔を見せて対抗してきた。


「何か不満があるんですか?」


「自分が今どんな顔してるのか鏡見てこい」


「もういいです。部の説明をします」


「だから、入部しないっての」


「だから、もう入部されてるんですって」


「じゃあ退部するわ」


「無理ですよ。後藤先生に弱み握られてるんでしょう?男なら潔く活動したらどうですか?」


 男ならとかそういう当たり前で押し付けられることに抵抗はない派だったんだが、ため息まじりに言われると同年代に説教されてるみたいで癪に触る。

 さらに入部したくない理由が増えていくのだが停学や退学になることは避けたい。

 孫が不良になってしまったとばあちゃんに寝込まれても困るし、幽霊部員としてやり過ごす方が得策か。


「分かった。部には入る。説明を頼む」

 話を進めると氷室川は相変わらずの不満気な表情で俺を見下ろして少しの間を空けてから呟く。


「偉そう…」


 クソめんどくせぇな。


「大変申し訳ございませんでした。部活動について教えてください」


 不本意だが、ここで口論している時間が何よりも無駄に感じる性分の俺は謝罪の弁を述べるてみたのだが。

 どうやら、またも納得のいかないことがあるようで彼女は不満気な表情を継続しつつ冷たく言葉にした。


「無知な僕によろず商業部の活動について教えてください、氷室川様。でしょ?」


 悪魔の連れてくる女は悪魔だ。

第2話もお読みいただきありがとうございました。

「氷室川様」……理人の受難はここからが本番です(笑)


本日の一挙更新、まだまだ続きます!

次回、第3話は【19:00】に更新予定です。


理人の持つ「プロとしての矜持」と、雪音の「理想」が真っ向からぶつかる第3話。

引き続きお付き合いいただければ幸いです!


ブックマークや評価での応援も、ぜひよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ