とくべつなふゆやすみ
終業式直前だというのにまさかのインフルエンザに罹患していることが判明した。当然高校は出席停止。期末考査が終わり、授業がそこまでないのが攻めての救いだろうか。ただそれでも部活に行けないのは残念だった。だがそんなことを言っている余裕はない――現在体温は四〇度をついに超えてしまった。意識がもうろうとするどころか手すら自由に動かすことができなくなっている。
手すら動かないということは当然体を起こすことも困難だった。薬は飲んでいるので多少効いていることを願いたいがそれでもこの体調だ。当然何かを口にするというのも厳しい。
看病してくれている親が部屋に経過観察で顔を出してくれる。
「だいじょうぶ?」
当然大丈夫ではないのだが大丈夫ではないといって何かなるわけでもない。だったら親に心配をかけないようにするのがいいだろう。
「うん。大丈夫」
目が回り、頭も全く働かない。寒気もするし体の節々が痛い。だが悟られないように笑顔を作る。
「だったらいいけど。できることとかしてほしいことあったら言ってね」
「うん。ありがと」
やさしさが染みる。
「そういえば体起こせる?汗かいたでしょ?体拭いてあげようか?」
「・・・してほしいけどちょっと今は無理・・・」
手すら思うように動かせないのに体を起こすことは不可能に近かった。全身汗だくなので体を拭いてくれるのであればしてほしいとも思うが、たとえ親とは言え裸をさらすのは抵抗があった。
「そっか。またしてほしかったり大丈夫そうなら言ってね。あ、トイレ大丈夫そう?身体起こせなかったらきついんじゃない?」
全く考えになかった。今尿意がないのもあるとは思う。ただ本当に行きたくなった時に体を動かせるのか、全くわからない」
「・・・今は大丈夫」
「ならいいけど。あ。おむつ買ってきてみようか?」
「え?」
全く考えてなかった提案だった。気が付いたときはおむつが外れ、それ以来今までおむつとは全く縁がない生活を送ってきた。TVCMやドラッグストアで目に入らないわけではなかったが、自分とは全く縁のないものだと思っていた。だがそんな自分をよそに母が続ける。
「だって身体起こせないくらいしんどいんでしょ?だったらトイレもいけないでしょ?熱早く下げるためにもたくさん水分取って出したほうがいいし」
それもそうかもしれないが裸を見られるのですら抵抗があるのに排泄の世話を見てもらうのは耐えられる気がしなかった。だからといって自力でトイレに行ける気もしない。
「恥ずかしいかもしれないけど別にお母さんは早希のおむつ全然気にしないし、早希が赤ちゃんのときは毎日替えてたからね?昔を思い出すようでちょっと懐かしいし、気にしなくていいからね?」
「・・・だけど・・・」
「だって動けないでしょ?おむつにおしっこするより布団濡らしちゃうほうが恥ずかしいし、お母さんも片付け大変だから。お母さんのためにもね?どう?」
そこまで言われてしまうと逆に断りづらい。恥ずかしいことには変わりないが、布団を濡らして着替えさせてもらうよりかは数段マシなような気がした。おむつをしてほしいと口で言う勇気は全くないので母から目を逸らしゆっくりとうなづく。
「じゃあ決定ね。おしっこしたくなる前にちゃちゃっと買ってくるね」
そう言い残すと母は足早に部屋を去っていった。おむつのことを少し後悔しながらももう後戻りはできない。再び孤独に戻る。静寂に包まれ、ただ自分の心音と、時計の秒針の音だけが小さく聞こえていた。
幸いにも母が買い物に行っている間、尿意を催すことはなく、体長は全くよくなっていないが少しずつ楽になっているのかなとは思う。慣れてきただけかもしれないが。
玄関が開く音がし、母親が帰ってくる。そのまま階段を上がる音がしたと思ったら母が部屋に入ってきた。
「どう?トイレ行きたくない?」
「ううん。まだ大丈夫」
その手にはおむつのパッケージが両手に握られていた。一つだけだと思っていたので驚きつつ早速開封される。
「ちょっと寒いかもしれないけど布団外すね」
そういわれると布団をめくられる。暑かったのもあり涼しい風が入ってきて気持ちい。ただ寒いが。
パッケージが開封され、その中からおむつが取り出される。大人用のおむつでシンプルなデザインだった。もう一つはパッドのようだ。一〇回吸収と書かれており、かなりの厚みがある。
「ごめんね、恥ずかしいとは思うけどテープのほうが漏れにくいから。今からつけるね」
テープタイプのおむつの上にパッドが広げられる。そのままズボンとぱんつを下ろされ、おしりの下におむつが敷かれる。ショーツとは全く異なる、ふわふわもこもこな感触。なぜか胸のどきどきが止まらない。
おまた部分を押さえられながらテープが止められ、最後に足回りを指で一周される。もこもこすぎて足が閉じられない。もこもこで温かく、少しおしりが持ち上げられるような感覚がある。おむつを隠すようにパジャマのズボンを上げてもらう。
「たくさんしちゃってもいいように、大容量のにしたから遠慮なく出しちゃっていいからね。あとこれ」
そういい母が取り出したのはスポーツドリンクだった。脱水症状にならないため、おしっこがでるようにできたら飲んでほしいとのこと。体は起こせないのでコップに注いでもらい、それを寝ながらストローで飲ませてもらう。久しぶりに甘えたような気がしてとても落ち着く。
「じゃあ下にいるからしてほしいこととかあったらいってね」
母が部屋から出ていく。少し寂しいが母に移したくないのでそのほうがいいのは間違いないだろう。それと寂しいのはまた別の問題。
少しするとスポーツドリンクのせいなのか、いままで尿意がなかったからかはわからないがトイレに行きたくなる。
(極力おむつにしないほうがいいのかな?変えてもらうの恥ずかしいし・・・)
まだ我慢できないことはないが、限界まで我慢する理由も見つからないような気がした。それよりも
(一気に出して溢れちゃったりしたら嫌だしもうしちゃおうかな?しちゃったらお母さんに変えてもらうときに甘えられるし)
最初は全く使うつもりなかったのに、いつのまにかおむつにおしっこをする理由を探してしまっていた。
(大丈夫だよね漏れないよね?)
おそるおそる尿道を緩め、膀胱に力を入れる。寝ながらおしっこをすることはないため最初はなかなか思うように出なかったが一度出始めると止まることなくスムーズにおしっこが出る。
しゅいーとおむつにおしっこが当たる音がする。おしりのほうが暖かくなる。熱があるせいか、かなり温かい。順調におむつが膨らんでいく。おしっこを出し終え、おしりを触る。
(よかった。漏れてないみたい)
思っていたよりもおむつは優秀なようだった。おしっこで温かく膨らんだおむつを触る。きもちいいと感じてしまう。
(熱下げるためにももっと水分取ったほうがいいよね?)
適当に理由をつけ、コップに注いでもらっていたスポーツドリンクを再度飲み、ゆっくり休むことにする。おむつの感触を味わいながら。
♢
トイレに行きたくなり、トイレに駆け込み、ズボンとぱんつを下げ、おしっこを開放する。
(あーきもちいい)
トイレが異常に広く感じる。天井が高い。そういえば平衡感覚もない気がする。なんでだろう?
(・・・?)
ゆっくりと目が開く。下半身の違和感に気づく。そうだった。お母さんにおむつをつけてもらったんだった。そして――おしっこしちゃったんだった。・・・おしっこしちゃった?
あわてておまたの部分を触る。先ほどより明らかに膨らんでいるような気がする。寝て多少の時間が過ぎているにも関わらずおむつが暖かい。夢でおしっこしちゃっていたのは覚えているがまさか現実でもしてしまっていたとは。おねしょしてしまったとは信じたくないが状況証拠がしてしまったことを証明している。
(まあ・・・インフルで夢と現実の区別つかなくなってるし・・・インフルが悪いから・・・)
自分の中でこじつけで理由を作る。そう。オンフルがすべて悪いのだ。熱があるとき特有の夢、あれがわるいのだ。大容量のおむつのおかげで膨らみ方はすごいが溢れてはいない。母の判断は正しかったようだ。
部屋を急にノックされる。一瞬びくっとなるが母だ。返事する間もなく母が部屋に入ってくる。
「どう?あ。ちょっと顔色よくなったね」
母に促され体温を測ってみる。熱は三八度まで下がっており、意識していなかったが体が少し楽な気がする。
「おむつはどう?おしっこできた?」
さすがに口に出す勇気はなく、ゆっくりと首を縦に振る。
「・・・そっか。じゃあおむつ替えよっか」
再度うなづくと母に布団とパジャマをめくられる。そこにはぷっくりと膨らんだおむつがあった。つけてもらった時よりも明らかに膨らんでいる。二回分のおしっこを吸収してくれたので当然といえば当然だが。
テープをめくられ、おむつが外される。もこもこが少し名残惜しく感じる。
「・・・いっぱいおしっこ出たねー」
やはり濡れたおむつを見られるのは恥ずかしかった。
おむつは薄く黄色に染まっていた。パッドのほうはそこそこ全体が濡れていたがおむつ本体までは濡れていないようだった。そのためパッドのみを交換することになった。濡れていた部分を温かい濡れタオルで優しくふいてもらう。あたたかくて気持ちいい。
新しいパッドを敷き、再びおむつをつけてもらう。濡れてもこもこになったおむつもいいが、濡れてないふわふわおむつもまた別ですきだと感じた。
「じゃまた見に来るね」
濡れたパッドをもって母が部屋を出ていく。もこもこの濡れてないおむつ。いつのまにかまたおむつを濡らすことばかり考えるようになっていた。どきどきを隠せないまま何度目かのスポーツドリンクに手を伸ばす――
♢
数日が経ち、インフルエンザも完治した。もう調子悪いところはない。当然おむつも卒業し、今は普通にトイレを使っている。それでもあの時の、おむつの感触は強く記憶に残っていた。
あのあとおむつについて母が触れることはなく、数枚使用したおむつはその残りが部屋に放置されていた。
(・・・今後使う予定もないし、使っちゃってもいいよね・・・?)
そしておむつに手を伸ばす――。冬休みに突入したのもあり、しばらくおむつを楽しむことができる。これはおむつの沼に足を踏み入れたとある少女のお話――
Fin




