ジョン ——生きとし生ける、現代の少年のはなし
それにしても報道というのはまったくもって無機質なものだな、とジョンは思った。この前、町で泥棒騒ぎがあって、帰るとき、家の中から声がした。
「ただいま、入るよ。」
「【ただいま。】と言って、入らないひとでもいるの?」
もやもやするようないやみをいわれながら駆け込むと、テレビだった。キャスターが、神経な面持ちで、
「——ええと、それで?」
と台本をめくっている。やがて、「……ああ、ああ、」と壊れかけたぜんまい仕掛けの人形のような声をだして、
「おとといの、T町の泥棒事件について、速報がはいってきました」
あわただしそうに台本をめくったわけだが、そのときジョンは違和感をおぼえた。
去年初当選した新人の町長は、中島と言って五十代なかばのやせこけた男だったのだが、これがどうにも身勝手だった。
中島は、「古沖町」という、この町のなまえがきらいだとはっきり言った。「Tからはじまる町に変えろ」と何度も叫んだ。
ジョンは、いままで「古沖」という名前だったこの町に引っ越してくる前に、事故でろっ骨を折ったことがあるのだが、そのときの住みかが「タケ」からはじまる町だったのである。
ジョンは、中島のかってな公約をきいたとき、
「中島のやろうは、おれに対するいやがらせがうまいな」
と、いやみをこねた。
このジョンという名前は、中学校のとき、タケ町の長谷くんから、「John」と吠える犬をもらったことに由来する。オサヤ・シュウヘイにもらったのだから、犬のなまえをあだなにするならば、「シュウヘイ」「シュウちゃん」なんかあだ名をつけてもらったほうがよかった。
ところが、「おまえは、ジョンな」と勝手に決めたのは、長谷だったのである。ジョンは、すぐに反対しようとしたのだが、ここで自分がけんかをしに行くと、
「あいつは、けんかしかしないもんな」
と、また嫌われることになるから、よしておいた。
ジョンは、そんなふうに、ひとにきらわれることをわざわざよける自分が嫌いだった。
だけど、今日も信じ続ける。
何だかわからないけれど「信じておけ。」と言われるものを。
あなたは、それを信じますか?




