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ジョン ——生きとし生ける、現代の少年のはなし

掲載日:2025/12/15

 それにしても報道というのはまったくもって無機質なものだな、とジョンは思った。この前、町で泥棒騒ぎがあって、帰るとき、家の中から声がした。

「ただいま、入るよ。」

「【ただいま。】と言って、入らないひとでもいるの?」

もやもやするようないやみをいわれながら駆け込むと、テレビだった。キャスターが、神経な面持ちで、

「——ええと、それで?」

と台本をめくっている。やがて、「……ああ、ああ、」と壊れかけたぜんまい仕掛けの人形のような声をだして、

「おとといの、T町の泥棒事件について、速報がはいってきました」

 あわただしそうに台本をめくったわけだが、そのときジョンは違和感をおぼえた。

 去年初当選した新人の町長は、中島と言って五十代なかばのやせこけた男だったのだが、これがどうにも身勝手だった。

 中島は、「古沖町」という、この町のなまえがきらいだとはっきり言った。「Tからはじまる町に変えろ」と何度も叫んだ。

 ジョンは、いままで「古沖」という名前だったこの町に引っ越してくる前に、事故でろっ骨を折ったことがあるのだが、そのときの住みかが「タケ」からはじまる町だったのである。

 ジョンは、中島のかってな公約をきいたとき、

「中島のやろうは、おれに対するいやがらせがうまいな」

 と、いやみをこねた。


 このジョンという名前は、中学校のとき、タケ町の長谷くんから、「John」と吠える犬をもらったことに由来する。オサヤ・シュウヘイにもらったのだから、犬のなまえをあだなにするならば、「シュウヘイ」「シュウちゃん」なんかあだ名をつけてもらったほうがよかった。

 ところが、「おまえは、ジョンな」と勝手に決めたのは、長谷だったのである。ジョンは、すぐに反対しようとしたのだが、ここで自分がけんかをしに行くと、

「あいつは、けんかしかしないもんな」

と、また嫌われることになるから、よしておいた。


 ジョンは、そんなふうに、ひとにきらわれることをわざわざよける自分が嫌いだった。

 だけど、今日も信じ続ける。

 何だかわからないけれど「信じておけ。」と言われるものを。


 あなたは、それを信じますか?


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