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結局王命が出ることはなかった。ジークベルトが王命を出す前にイリーナとエンディオの婚約が成立したからだ。王も王妃もおめでとうとたくさんの祝いの品を贈ってくれた。
今日はイリーナがレイトン公爵家に入る日だ。馬車2台分の荷物も、ヒナツの転移魔法であっという間にレイトン公爵家へと運び込まれる。
「いつもいつもリーガルの修行についてこれていたのは彼のおかげだったのだな」
エンディオはどこか納得顔でヒナツを見やる。
ヒナツは褒められたと思ったのかえへへとニコニコと笑っていた。
「ええ。ヒナツの転移魔法には助けられてばかりですわ」
そういえばエンディオにもうちの子たちを正式に紹介しないととイリーナは思う。そして、イリーナの特殊な立場についてもエンディオには知っていて貰わねばならない。
いつ言い出そうかとイリーナは頭を悩ませる。
「エンディオ様、今夜お時間頂けませんか?大切なお話があるのです」
「あぁ。構わない……」
エンディオはイリーナの方を見るとどこか不満気に視線を逸らす。
「私達は夫婦になるのだ。様はいらない。エンディオと、そう呼んでくれ……イリーナ」
イリーナが首を傾げていると、エンディオはそのような事を言ってきた。その姿が何故か可愛らしく思えてイリーナは飛び上がりそうだった。
「は、はい!エンディオ!嬉しい、貴方とこんなふうに呼び合えるなって思ってませんでした」
素直にそう伝えればまたエンディオは顔を赤らめながら「そ、そうか」と視線を逸らす。
「この間から思っていたのですが、エンディオはどうされちゃったのですか?いつもの尊大な態度はどうしちゃったんです」
「尊大な態度とは失礼な奴だな」
ムッとエンディオは眉間に皺を寄せた。
「だってそうじゃないですか!いつも自信満々に私の事見下してくるのに!」
「君は私の事をそんな男だと思っていたのだな」
「嫌ですわ。そんな所も素敵だと思っていますとも」
エンディオははぁあと深いため息を1つ吐くと。イリーナと向き合う。
「いいか、一度しか言わないからよく聞け」
「?はい」
「私は、思っていたより君の事が気に入っている、ことに気づいたのだ、君が可愛らしいのがいけない」
「?はいぃ???」
エンディオが真っ赤になりながらそんな事を言うのでつられてイリーナも頬を染める。
「好きなんだイリーナ。君とこれから歩める事実が嬉しくてたまらない」
エンディオの攻撃は止まらない。エンディオからでたとは思えない言葉達にイリーナは目を白黒させるしかなかった。
「君も同じように思っていてくれたら嬉しいと、そう願う」
エンディオはイリーナの顔を両手で挟み、コツンと額を合わせてくる。頬に感じる熱にイリーナはいっそ目を回していた。
「イリーナ?」
間近にあるエンディオのルビーの瞳にイリーナは限界だった。
スウッと力が抜け後方に倒れこんでしまう。慌てたエンディオが彼女を支えたがイリーナは気を失っていた。
「イ、イリーナ!?」
「あぁ〜おじょーさま倒れちゃった」
「あら、お嬢様には刺激が強すぎたみたいですわね」
「見て見ぬ振りも大変だってのによ〜」
「ほら皆さんこういうのは情緒が大事なんですから、ぶち壊すような事を言ってはいけませんよ」
「イリーナ様お幸せそうで良かったね〜」
イリーナの日常は終わらない。明日も明後日も貴方と続いていく。
その晩、イリーナの正体と、従者達の能力をきいてエンディオが頭を抱えることになるのはまた別の話である。
これにて本編は一度完結とさせていただきます。
イリーナの日常をお楽しみいただきありがとうございました!




