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それからイリーナ達は何人かの灰色のオーラを持つ人を探して、バンデラの花と関係がないか調べることにした。
灰色のオーラを持つ人物を探し、接触し、バンデラの花について知っているか聞いて回ったが、収穫はゼロだった。
「うーんー。やっぱりどの人もエントのオーラが混じってるように見えるから予想は当たってると思うんだけどな〜」
「そうなのね。じゃあ1歩前進したと言っていいと思うわ。そうなるとみんながどこでバンデラの花を口にしてしまったのかが鍵になってくるわね」
「こんなところで何をしている」
シェン達と今後の捜索方針を話し合っていると聞き覚えのある声がかかった。
「!?」
「あれ?師匠?なんでここに?」
リーガルが声をかけた先にはエンディオがナテラを連れて立っていた。
「私だって買い物くらいする」
若干不満気なエンディオはイリーナを見据える。
「お前はいつもこの子達しか連れていないのか?護衛はどうした」
「あー……リーガルがいるから護衛は大丈夫なのですよ」
オホホと笑いながらリーガルをさす。
実際サーシェス辺境伯家において、イリーナには護衛というものはつけられたことがなかった。
それにはシェンの契約者であるということが大きく関わっている。シェンがいない時はいつもヒナツを連れていた。ヒナツ1人でも群を抜いて強力な戦闘能力があるのだ護衛なんて必要もない。
最近ではリーガルもいる。リーガルでも充分護衛の役割はになえているだろう。
「確かに戦闘能力については申し分ないだろうが、護衛となると話は別だ」
「まぁ。心配してくださるのですか」
「勘違いするな。弟子の不手際は全て私の不手際になるからだ」
「ひっでー!護衛なんて俺で十分じゃん」
きゃんきゃんとエンディオに突っかかるリーガルはまるで親犬にじゃれつく子犬のようだといつも思う。
「あといくつか歳を重ねていればそれでも良かっただろうが、今のお前は彼女を抱えて逃げることも出来んだろう」
「できるよお嬢様くらい」
「ひゃ!」
この細い体のどこにそんな力があるのか、リーガルは軽々とイリーナを俵のように担ぎあげてしまう。まぁドラゴンの聖印もちなら余裕なのだろうが。
「ほら」
「ほらじゃない!女性を軽々しく担ぎあげるな」
「ひゃあ!」
そういうとエンディオはイリーナを物のようにリーガルから取り上げると片手でひっくり返し、いわゆるお姫様抱っこの状態になってしまった。すぐ近くにあるエンディオの顔を眺める形になったイリーナは顔が真っ赤になってしまう。
「これくらいできるようにならんと護衛など勤まらん!」
エンディオはイリーナのことを気にする素振りもなくリーガルへの説教を続ける。
「で、できるしそれくらい!」
(なんだか今のやり取りドキドキしてしまうわ。グッジョブよリーガル。あなたはやっぱり私のキューピットだったのね!!)
降ろされたイリーナは心の中でそんなことを思うのだった。