19転換―――ユミエルの場合
何が僕、ユミエルの運命を変えたかと、深く考えてみると、いや考えるまでもなく、彼女との出会いが一番大きかったのだと思う。
「イリーナお嬢様、不審死の事件が気になるみたい」
パティが言う。
「シェンもさいきんずうっとおじょーさまについてるよね。おじょーさまが見えるっていうオーラ関係の事件かもしれないんでしょう?ぼくたちにお手伝いできるかなぁ」
ヒナツは真面目に。お手伝いする気があるらしい。
「とりあえずこの間のクリスって奴、何処にいるかとかつきとめたほうがいいか」
リーガルがそう言ってはりきる。
「そうですわね。それにそのほかの不審死事件のデータもあれば完璧ですわ。そういうのどこかで調べられませんの?」
ミーチェがそう言って話を振ってくる。
この手の問題にぶち当たると大抵白羽の矢が立つのが僕ユミエルだ。
「新聞に乗っている事件だけなら僕が覚えてますけど、それ以上の細かいデータとなってくるとエディ様に力添えしてもらわないと無理ですね」
コソコソひそひそと小柄な少年少女達が集まって話し合いを行う姿は傍から見れば愛らしいのだろうか。
ユミエルはごく普通の一般家庭の産まれだった。昔から物覚えがよく賢い子だと言われ続けて来た。サーシェス辺境伯寮の初等部の学校に通っていたのだが、僕にとっては退屈な授業ばかりだった。
僕の唯一の楽しみは初等部に併設されていた図書室だ。
本は良い。
煩わしいことなんかなんにもなく黙って知識を与えてくれる。
もっと沢山の本が読みたかったが、ユミエルの家庭環境ではこれが精一杯の贅沢だった。
そんな中に現れたのがイリーナ様だ。彼女は僕のパトロンになると言ってくれた。どうも僕にはセプの聖印というものが現われており、それがイリーナ様のお気に召したらしい。
僕は考えることなく頷いた。
お嬢様は僕に静かに沢山の本を読める環境を提供してくれるというのだから。
そんなこんなで僕はお嬢様の従僕見習いになった。両親も兄弟も健在なので僕はここで得た収入を少し仕送りしている。
「エディ様」
「ユミエルか。どうしたんだい?」
「少しお願いしたい事があって」
お嬢様のためにとみんなにせっつかれて、結局僕は調べられることは調べておくことにしたのだった。