16転換―――ミーチェの場合
何が私、ミーチェの運命を変えたかと、深く考えてみますと、やはり、彼女との出会いが一番大きかったのだと思います。
私はエルフと人間のハーフの生まれでした。その生まれが珍しかったのかまだ幼かった私は人間の奴隷商に捕まり、売り物として奴隷市に並べられてしまいました。
私は全ての人間を呪う勢いで、私を買おうとする人間に噛み付いたり罵声を吐いたりしていましたわ。
せっかく高値で売れそうなハーフエルフが素行不良で売り物にならないのです店主にしてみればたまったものではありません。
私は売れ残ったことを嘆く店主に鞭打ちされる毎日をおくっていました。
そんな時にあらわれたイリーナお嬢様は、人間だと10歳くらいの年齢だったと記憶しています。
ハーフエルフで成長の遅い自分と比べてもそこまで背丈の変わらないお嬢様に、私は噛み付くのを躊躇いました。
「この子、私が買います」
お嬢様は他の奴隷に見向きもせず、迷いなく私を買うと言ってのけました。
私はこれだけ幼い主人に買われるのなら、逃げ出すことも比較的容易なのではないかと考えました。大人しくしていると厄介払いしたい店主はすぐに私をお嬢様に売ってしまいました。
お嬢様は私を連れてサーシェス辺境伯家に戻る途中でナイショのおまじないだと言って私に魔法?のようなものをかけました。
「あなたには凄い才能があると思ったの」
それから私にはエントの祝福と呼ばれる聖印が右腕に浮かび上がることになったのでした。
お嬢様は私を大切に扱ってくださるから、いつしか逃げ出そうなんて考えもなくなり、今ではお嬢様の一番の侍女として働いていますわ。