10:あなたのお願い叶えます 悪魔コールセンター
ええと、新聞部さん、で、いいんですよね。はい。ちょっと、相談があって。その、ここならどんな話でも信じてもらえるって聞いたんですけど……はい、そうです。おかしなことが、この前あって。
友達と電話してたんです。夜中の、まだ十二時になる前だったかな。かけてきたのは向こうからで、だらだら喋ってたんです、どうでもいい話をたくさん。そしたら突然。
「こちらは、悪魔コールセンターです」
……って。何の脈絡もなく、突然そんな声が電話越しに聞こえてきたんです。最初は友達のいたずらかなって。けどどう考えても声は違うし、おまけに何回声をかけても友達は出なくて。
……気味が悪いし、もう切ろうかなって思ったんですけど、なんだか気になっちゃって。
え、気になるじゃないですか。何なんだろうこれ、って。
「こちらは、悪魔コールセンターです。貴方のご要望に合わせて、こちらから悪魔をお送りします。初回はお試し料金での利用となります。利用される方は、1を、利用されない方は、電話をお切りください」
……そう言われて、興味本位で1を押してみたんです。
「利用される、でよろしいですね? 承りました。ピーという音の後に、お名前とご住所、それから貴方様のお願いをお願いします」
そのすぐ後に、ピーって、電子音が聞こえたんです。だからわたし、言われた通りに自分の名前と、住所と、それから願い事を……へ? 代金についてですか? それが、ええと、代金についてはこの後話します。
それで、願い事を言ったんですけど、わたし、自分が何を願ったのか全く覚えていなくて。本当です。本当に、何を言ったのかわからなくて。
だから、その、叶ったのかどうかもわからなくて……いえ、それはいいんです。
「承知いたしました。今から悪魔をそちらにお送りします。代金は、初回限定ということで、貴方の寿命を一年いただきます。お試し価格になりますので、効果をご実感いただけない場合があります。その場合はぜひ、正規価格でのご利用をお勧めします」
……って。
だから、その、わたしの願い事が叶ってない……というよりは、何を願ったのかわからない……のは、適切な寿命を払わなかったからなのかな、って。
えと、相談内容ですか?
そうだ、これが本題じゃないんですよ。
その、この電話が終わって次の日学校に行ったら、電話してた友達がいなくなってたんです。行方不明とかじゃなくて、最初からいなかったことになってて。
誰に聞いても、家を訪ねてもいないんです。誰も何も知らないし、そんな子はいなかったって。
……これ、どういうことですか? もしかして、その子がわたしを、その、騙した、じゃないですけど。ええと、悪魔なんとかセンターに繋げたのは、もしかしてその子の仕業なんじゃないか、って、思って。
……え? どんな子か、って。ええと、髪が綺麗で、顔も整ってて、いつも可愛い服を着てて。そうそう、よく男子たちに噂されてたっていうか、気にされてたっていうか。告白してくる人が後を立たない、みたいなことは言ってたかな。私の友達もその子に告白したみたいで、結局付き合ったんですよね、友達とその子は。……まあ、もうその子はもういないから関係ないですけど。
他ですか? 家も裕福で、よくこれ買ってもらったんだー、って自慢してきたりとか。誕生日プレゼントとかも、日頃から良いものを貰ってるせいなんでしょうね、安いものをあげても喜んでくれなかったり。
なんていうか、子供っぽい子だったんです。でもなぜかみんなに好かれてて、陰口叩かれてるところ見たことないし、なんだかんだみんなその子といるのが楽しそうでしたね。
……え、わたしですか? 別に、普通ですよ。ただの友達です。でも夜中に突然電話してくるのとか、誕生日プレゼント喜んでもらえないのとか、その、好きな子のこととか、色々、全く不満がなかったわけじゃないですけど……でも、もう終わったことですし。気にしても仕方ないっていうか。
──って、これ、なんの関係があるんですか? え?
コールセンター? いえ、もう利用するつもりはないですよ。確かに自分が何を願ったのかは気になりますけど、でも次お願い事をしたら何を取られるか分かりませんもん。
それで、結局あの子は……もう帰ってくることはない? そう、そうですか。じゃあ、本当に最初からいない子だったんですね。なぁんだ、よかった。
いえ、なんでも。
相談に乗っていただいてありがとうございました。ええと、二千円? はい、これで。
はい、はい、それでは、失礼します。ありがとうございました。
◇
……あれ、無意識ですかね。それとも、わざと? 演技だとしたら詰めが甘い、けど、ううん、微妙なところですね。
どうあれ、彼女の望みは叶っているのでしょう。悪魔はお代さえ貰えれば、その分の仕事はきっちりとこなす。言ったことは守る。なんなら天使よりも義理堅い──というよりは、信用できる存在かもしれませんね。
……あ、それってまるで、僕たちみたいじゃないですか?




