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東雲 渚沙の最期

高校3年生、進路選択が迫られる現在

部活動は忙しく、地区大会、県大会、支部大会、全国大会に向けて忙しくしていた。

高校3年生の進路変更はつきものと先生たちは言う。

しかし、やりたいことが変化し、結局何がしたいのか分からない始末…


そして、10月…定期演奏会を目前にし、僕(♀︎)東雲しののめ 渚沙なぎさは命を絶とうと思う。


高校生活3年間を苦楽を共にしてきた吹奏楽部の同級生メンバー12人と同じパートの後輩4人、お世話になった顧問を含む学校の先生たち、仲良くしてくれた友だちに向けて手紙を書いた。やはり学校生活では明るいキャラを貫いてきたからには最期までなにか仕掛けたいもの…吹部の同級生たちにはそれぞれの楽器ケースの中にこっそり隠し(勝手にごめんよ)、後輩は部室のロッカーの奥にイラストと共に貼り付け、学校の先生たちには1番仲のいい先生に頼んでデスクの引き出しに入れてもらった。友だちは机の裏に手紙を貼った。


実行日までの1ヶ月間、好きなゲーム実況者の動画を見まくり、好きなアニメ・漫画を読み漁り、好きな曲を聴きまくった。


そして、当日の夜…部活終わりの音楽室は雑談をしたり自主練習をしている部員たちがいた。

とても楽しそうに…死ぬのを躊躇った。すごく…。

「渚沙〜!」

僕の名前を呼ぶ同級生

「なにー?」とこの後自殺するとは思えないほど呑気な返事をした

「この後さ…フッ軽ラーメン行かね?」

と誘う同級生たち

「うーん、どうしよっかな〜」

と行く気もないくせに答えた

「ねぇ、渚沙…」

「どした?」

「っ…死なないで」

「…急にどした?w」

突然の言葉に逆に驚いた

「定期演奏会…一緒に…一緒に最後までやるって約束した…!」「卒業したあとも飲みに行ったり、遊びに行ったりしよって言ってたじゃん…」

友人たちの言葉に少しの動揺

躊躇った…


(今日実行しようと思ったのにな…)


「分かったよ、自殺はしない」

「ほんと…!?言ったね…!」

「はいはい」クスッ

「よし!じゃあフッ軽ラーメン行こー!」

「えぇ…マジで行くの?w」

「今日は3年全員で行くぞー」

「男共も!」

「えっ?!俺らも…!?」

「まぁいいけどさ」

「てか13人も入れるラーメン屋近くある?w」

「あ!じゃあ焼肉行こ!」

「急だな〜」

「いいじゃん!コンクールと依頼演奏、吹奏楽祭…あ!あとクラスマッチの打ち上げ分!」

「定演後でも良くない?」

「僕その前にいなくなるかもよ?」

「ちょ!それはダメ!」

「うちが全力で止めるわ」

「あははっ、冗談」


その日、僕はみんなで焼肉に行った


(あぁ…やっぱりまだやめようかな…)


「めっちゃ食べた」

「てか僕みんなに遺書的なのもう書いちゃったんだけど?」

「え?!まじ?」

「まじwみんなの楽器ケースの中に入れたよ。奈々のは僕が大好きなティンパニのカバーの下に」

「気づかなかった」

「でもまぁ、しばらくは必要ないかな」


「おーい、早くしないと電車組やばいかもよ~」


「まぁまだ大丈夫っしょ」

「信号そろそろ青になるな」

「ここの信号赤に変わるの早いから結構急がないとかも」

「そうなん?じゃあ急ぐか」

「ねぇ、あのトラックなんかおかしくない?」

「どれ?」

「ほら、あれ」

「え…なんかめっちゃ猛スピードでこっち向かってるトラック…?」

「そう」

「ちょっと待って、あれじゃ…」

「あすかが…」

サッ…

体が勝手に動いた

なぜかわからないけど恐怖はなかった

ただただ、目の前にいる友人を助けなければいけない…そう思った


「あすかーーー!!!!」

「え、渚沙—————」


どんっ


「っ…死なせないよ」

僕はそっと微笑んだ

そして鈍い音が夜の街に響いた

トラックを運転していた人は逃げた


「たけ!救急車!」

「おっけ!」

「誰かあのトラックの写真撮った?!」

「俺撮った…!」

「血…早く止血しないと…!」

「っ…」

「渚沙…!」

「あすか…よかった…生きてる」

「喋んな…!今救急車が来る…!」

「今、止血もしてるし即死じゃないからまだ生きれる!」

「ねぇ…定演の……3年からの言葉で…僕からの言葉を…だれか代弁してほしい…」

「なんで今そんなこと…」

「仮に奇跡的に生きれたとして……この体で…定演にみんなと一緒に出れないよ…」

「そんなこと————」

「お願い…最期の言葉になるかもしれないから…聞いてほしい…」

「っ、、分かった…」

「メモ、準備できてる」

「録音…しとくよ」

「…僕は…この13人で…3年間一緒に部活ができてよかった…楽しかった…とても…確かに大変だったけど…逃げた時もあったけど…繋ぎ止めてくれて本当にありがとう」

「っ…」ポロッ…

「ぅ…ひっく…」

「3年生最後の定期演奏会に来てくださった皆様、応援…ありがとうございました…今日、最後の演奏会に参加できないこと…すごく…悲しいし…悔しいけど……絶対…見に来てます…意識不明でも…おばけになっても…w…最後まで…定期演奏会を……我々3年生13名の最後のステージを……お楽しみください」

すっ…


救急車のサイレンが近くまで来たところで

泣く友人たちを最期に


意識を手放した


————————————————

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