改変の時
前略ーー人々は神を信仰しなくなった。
理由? そんな事わざわざ言わなくても自分の胸に手を当てて考えれば分かるだろう?
そして、信仰されなくなった神は激怒した。竜巻を起こし、雷雨を降らせ、疫病を蔓延させた。
しかし人々は何かと理由を付けて自然のせいにし、対策をした。
怒り狂った神は、遂に禁忌を犯した。
己の世界を出て、人間の世界に入ってきたのだ。
神の世界は人間の世界よりも遥かにランクが高い。中に住んでる生物のランクも同様だ。
生物としてのランクが高いとどうなるか? 身体能力から寿命まで、全てにおいて優れているという事だ。
更に神には特殊な能力がある。先述したような天変地異を引き起こす、所謂「魔法」と呼ばれるような能力だ。
もちろん、ある程度の制限はあるが。
ーー話を戻そう。
人間の世界へ入った神はまず、人々に向けて神である事を言った。
人々はどうしたか? 突然「神を自称する白い羽背負った人」が現れたんだ。そりゃ、現代人は写真撮ってSNSに投稿するわ、痛い人見た様な迷惑そうな顔して離れるわ、ヒソヒソと笑いながら遠巻きに眺めてるわ。とにかく神を信じずに笑いものにした。
顔を真っ赤にして怒り狂った神は、当時「日本」と呼ばれていた島国の首都に高い塔を出現させた。
そして人々に向かって宣言したのだ。
「今より貴様らの世界で言う100年の間にこの塔の頂上に到達せよ。出来なければこの世界を消滅させる」
ってね。
もちろん、人々は半信半疑だった。そりゃ突然首都のど真ん中にでっかい塔が出てきたらちょっとは信じるだろ。
そして神は塔に入っていった。神が見えなくなると代わりに魔物が塔から出てきた。
どんな見た目かって? そこまでは記録が残ってないよ。でも、塔の一回層なんだから「下級」だろうね。
とにかく、今まで戦うどころか喧嘩すらろくにしないような人々の前に魔物が現れたんだ。当然、辺りはパニックになった。
今でこそ、そこら辺の農民でも退治出来る程度だが当時はそうもいかない。
人々は逃げ惑い、その数を減らしていった。
だが、人々もいつまでも逃げ回っていない。車で轢いてみたり、手頃な棒とかで殴ってみたり、抵抗し始めた。
結果として、当時「本州」と呼ばれていた場所は全て魔物の生息域となってしまった。だが、人々は壁を作り魔物の侵入を防いで生活するようになった。この頃からだったかな? 自分の身体能力や経験が数値として見える、ゲームの様な世界になったのは。
そこから10年程、何事も無く流れていった。
その間に襲撃したりされたり色々あって、残る集落は5つまで減ってしまったが、その5ヶ所は安定した自給自足が出来るまで回復していた。
そしてある日、次は黒い羽を持つ者が現れた。
その者は自分を「悪魔だ」と名乗った。
人々はどうしたかって? もちろん追い払おうとしたさ。これ以上自分たちの世界を荒らさないでくれ、って言いながらね。
でも、「自称悪魔」は言ったんだ。
「自分たちは神と敵対している。だから、お前らに力を貸してやる」
ってね。
でも、人々はあまり乗り気じゃ無かった。なぜなら悪魔と言えば悪い者の代名詞だったからね。代わりに魂とか大切なモノとか盗られたらどうしよう〜ってね。
だから悪魔は言ったんだ。
「15歳になった人間の願いを1つ叶えてやる。それは他人に影響するものでない事が条件だ。その代わり、神を殺して欲しい」
と。
ついでに言うと、この時点で15を過ぎていた人間の願いも叶えてくれたみたいだね。
どちらにしても100年以内に塔を攻略しないといけなかった人々は、この条件を快諾した。というか、他に選択肢が無かった。
初めは人々は信用しておらず、特に歳を取っている者は当たり障りない事を願った。
「この道具を修理して欲しい」「あれが欲しい」「大金が欲しい」「死なない様にして欲しい」
そんな願いばかりだった。
そして悪魔はそれらを叶えた。
道具を、金を、それ以上老化する事も成長する事も無く傷も付かない肉体を与えた。
そして人々は悪魔の言葉を信じた。
そして悪魔が出した条件の「他人に影響がない」の基準を探すことにした。
人々は願った。
「彼女と付き合いたい」「炎を操りたい」「魔物を倒したら寿命が伸びる様にして欲しい」「大金が欲しい」「子供を宿したい」
たくさんの人が、たくさんの願いを言った。
結果「他人に影響しない使い方が出来る能力は叶えられる」という事が分かった。
「モノが欲しい」「操りたい」「創り出したい」
といった願いは叶えられ、
「付き合いたい」「子供が欲しい」「アイツを殺して欲しい」
といった願いは無視された。
また、願いが無視された人の願いは再度叶えられる、様な事は無かった。
それからまた50年、合計で75年経った今、全体に関係がある叶った願いは
「魔物を1体討伐する毎に24時間老化が止まる」
だけだ。
そのお陰で5人、長い事攻略組に居る人物が居る。知っているとは思うが、まぁそれは別のお話で。
そして君たち5人は今月に15歳になる。毎月の最終日に願いを叶えられる為、明日になると悪魔が君たちの前に現れるだろう。
さぁ、君たちは何を願い、何になる?
豊作を願い、農家となるかい?戦力を願い、攻略者となるかい?それとも僕のように世界を変えようとして失敗し、無能者になるかい?
全ては君たち次第、君たちの未来は明日の自分に掛かってる。今日はもう家に帰って、ゆっくり未来を考えなさい。