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ふたりで作る、味噌豆乳うどん②

 歩は店の壁に掛けていた時計を見て、指を鳴らす。


「お客様もひいたことだし、ごはんにしましょ」

「作ってもらってばかりじゃ、なんだか申し訳ないような気がする……」

「じゃあ一緒に作りましょ」


 歩がアリスの背中を押して、キッチンに立った。割烹着を渡されて袖を通し、サイズがぶかぶかでロングスカートのようになってしまう。女性のような言葉遣いでも、歩はちゃんと男性なのだ。



 歩が冷蔵庫から紙パックやタッパ、長ネギを取り出し、アリスを見ながら調理器具の棚を指す。


「アリスちゃんはその手鍋にお湯を沸かしてちょうだい。アタシはネギを切っておくから」

「何を作るんです?」

「豆乳うどんよ。お湯が沸いたらこのネギを入れてね」


 流れるように手早くネギを小口切りにして、ネギを入れたザルをアリスにパスする。


 アリスは言われるまま、緊張の面持ちで鍋にネギを落とした。

 ふだんあまり料理をしないのか、動作ひとつひとつが危なっかしい。


「ネギが柔らかくなってきたら味噌を入れて。少しずつ溶かしてね」

「は、はい」


 歩が小皿に必要な分だけ味噌をとりわけて、アリスがスプーンでそぐようにしてお湯の中に溶かし込む。顆粒のカツオだしも少々。


「沸騰すると味噌の香りが飛んじゃうから、ここで火力を弱くする。そろそろ豆乳を入れましょう」


 長年培った勘という名の目分量で、歩は鍋に豆乳を注いだ。


「わ、すごくいい香りがする」

「そうでしょ。ここでうどんを入れて少し煮たら完成よ」


 器に盛り付けたら、仕上げに白すりごまをふりかける。

 テーブルに並べ終え、アリスはまるで一世一代の大仕事を成し遂げたような顔で、深い溜息をついた。


「はーーーー、緊張したぁ……」

「なに言ってんのよ、もう」

「失敗したらどうしようかと思って」

「大げさねえ、アリスちゃんたら」


 うどんを一回焦がしたくらいじゃ、世界は滅亡なんてしやしないのに。歩はついつい笑ってしまう。


 いただきますをして、れんげでスープをすくう。

 アリスは歩のまかないを食べるとき以上に、ゆっくりと口をつけた。


「……おいしい……」

「うふふ。自分で作るとまたひと味違うでしょ」

「そう、ですね」


 少しでもきちんと食事をするようになってきたからか、アリスの顔色は日に日によくなっている。


 初対面の時は、医学素人の歩から見ても分かるくらい、青白く不健康な肌の色をしていた。

 食べてくれると言うことは、少なくとも治りたいという意思があるということ。

 歩はうどんを味わいながら、アリスに笑いかける。


「ちゃんと食べれば髪のつやもよくなるから、乙女としてしっかり豆乳を摂っておきなさいね」

「はい」


 アリスもほんのり笑みを浮かべ、歩の言葉に応えた。

味噌豆乳うどん。

お好みでピリ辛く炒めたひき肉そぼろ入れて、担々麺風に仕上げてもいけると思います。(本作ではアリスがまだお肉を食べれないので入れてません)

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― 新着の感想 ―
[一言] 味噌豆乳うどん。美味しそうです。豆乳のかわりに牛乳は駄目でしょうか? 豆乳が苦手なので。
[一言] 牛乳だと思って豆乳を飲んで以来ちょっと豆乳に苦手意識あるんですが……おいしそうなのです( ´∀` )
[良い点] 毎回、どんな優しい「まかない」が出てくるのか楽しみにしてます(*´▽`*) 今回も美味しそうですね~ おうどんなら胃にも優しいし。 アリスはきっと、これからどんどん魅力的になっていくのだ…
2023/07/10 18:12 退会済み
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