勉強会の休憩は、ローズヒップティーのハイビスカスブレンドで②
コウキはちょくちょくワンダーウォーカーでハーブティーや雑貨を買っていく。一応まだ十代半ばだし、お小遣いがものすごく多いという訳ではないと思う。店としてはありがたいけれど心配になる。
「買ってくれるのは嬉しいけど、お金は大事に使いなさいね」
「だいじょうぶ。元父親が養育費だけはたんまりくれたから」
にっこり満面の笑みを浮かべているのに、目が笑っていない。兄の話をするときの初斗と同じ属性を感じとり、背筋が寒くなった。
「コウキはすごく頭良いんだね。あたしぜんぜんわかんない」
「べつに、頭良いわけじゃない。俺は去年の春まで高校行ってたから、ブランクがないだけ。アリスも受験するなら一緒に勉強しようよ」
コウキは笑顔で提案する。
「それ良いじゃない。アリスちゃん、教えてもらいなさいよ。仲間がいれば、一人でやるより絶対集中してやれるわよ」
「うーん、あたし教わってばかりで足手まといになるだけなんじゃ。コウキにメリットある?」
姉に下げられて生きてきた期間が長いせいで、まだまだ自己評価が低い。
コウキはアリスの後ろ向きな発言を耳にして、不思議そうに歩に聞いてくる。
「俺、足手まといだなんて言ってないよね?」
「そうね。言ってないわ。……ふふっ。あんた本当に初斗に似てるわね。将来初斗みたいになるかも」
「どこが?」
「初斗もこういうこと言われたとき、「迷惑だと言った覚えはないんだけど」って返すから」
初斗の発言も、いつも言葉以上の意味がない。勝手にへこまれたりマイナスに受け取られると困惑するのだ。
「そうかな。なら嬉しいかも。俺、先生みたいになりたいな。先生が父親なら良かったのになって思うもん」
初斗には、気に食わないと思う話題を無視するような、悪い癖も多々ある。
「似ているところがあるなら嬉しい」なんてこんなにも楽しそうに言われてしまっては、似ない方がいいなんて言えなくなる。
「コウキ。あんたはあんたのままでいいところがあんだから、初斗を目指さなくても大丈夫よ」
「……ええと、ありがとう?」
コウキは首をかしげながら、お茶の残りを飲んだ。





