お茶会と、アリスの新たな目標②
コウキが他の参加者のところにお団子を配りに行くのをじっと見て、アリスはぼんやりしている。
「どうしたのアリスちゃん」
「あ、いや。受験なつかしいなって思っただけ」
「もしかして、高校に通いたい? 社会人向けに夜間学校があるから、通いたいなら勤務時間を調整するわよ」
歩はいまさら高卒資格を取ろうとは思わないけれど、アリスはまだ二十二歳。将来の可能性を広げておくのも選択肢の一つだ。
「……ううん、どう、なんだろう。お姉ちゃんと比べられることは、もうないとは思うけれど」
「ああ……あの子と比較されるのは嫌よねえ」
姉妹で同じ学校にいれば否が応でも比べられる。アリスにとってモデルの姉と比較される日々は最大級のトラウマだ。
「でも、高校に通いたいなら応援するわよ。高卒資格を取っておくと役立つことがあるかもしれないし」
「歩さんはとろうと思わないんです?」
「アタシはいいのよ。店を開けないと食べていけないもの」
「それこそ、営業時間を調整して行くとか」
アリスはアリスで、歩が高校に通いたいなら応援したいと思っていた。
二人して、自分は別にいいけどあなたは高校に通ってもいいと思う、と言う。
ようやく難を逃れた初斗が、話に入ってきた。
「午後の部がある高校は厚木と川崎に、あとは横浜にあるね。高卒資格を取りたいならそういう手もある」
「やけに詳しいわね初斗」
「コウキ君がどんな学校に通いたいか、っていう話をしたときに調べたんだ。歩も、いまなら学校を楽しめるかもしれないよ。いい大人が通っているんだから、そうそう人の生き方をからかう人もいないだろうし」
初斗はかつて歩が学校になじめず、中退するときも相談に乗ってくれた。
あのときのクラスメートたちは、女性のような言葉遣いの歩を笑う人ばかりで、居心地はすこぶる悪かった
「あたしはべつに困らないからいいわ。ただ、アリスちゃんは違う。今の日本はまだ学歴社会だから、中卒で雇ってくれるところを探すのは難しい。いつか転職したくなったとき、高卒資格を取っておくと必ず役に立つわ」
「大丈夫。歩さんが店を畳むって言わないかぎり、あたしはワンダーウォーカーで働くから」
アリスはきっぱりと言い切る。もしかしたら他にやりたい仕事が見つかるかも、なんて迷いもしない。
次は③を投稿します。





