第二十七話 お茶会と、アリスの新たな目標①
お茶会当日。
ワンダーウォーカーは休業にして、歩とアリスは初斗主催のお茶会に参加した。
初斗とネル双方の母と、ネルの主治医、クリニックの患者、などなどけっこうな大所帯だ。
みんな気を利かせてお菓子や飲み物を持ち寄ったので、キャンプテーブルは隙間がないくらいびっしり食べ物が並んでビュッフェになっていた。
初斗とネルが結婚を決めたきっかけはなんだったのか、みんなが気になる話題なので迫ったら、逃げられてしまった。
さんざん初斗をいじって楽しんだあと、歩はテーブルの中からレーズンサンドを見つけ、小皿に取り分ける。
「あら、レーズンサンドだわ。誰が持ってきたのかしら」
「ワタシだ。コーヒーによく合うだろう」
ブランデーの空き瓶片手にどや顔したのは、ネルの主治医白兎女史だ。
その後ろで初斗が死にそうな顔をしている。手に押しつけられているのはコーヒー。
実は初斗の一番嫌いな飲み物がコーヒー、次点が酒だったりする。
「先輩はコーヒーを無理矢理飲ませようとするから嫌いです。しかもなんでリキュールなんて入れているんですか。わたしを殺す気ですか」
「はっはっはっ。後輩は先輩のいうことをよく聞くもんだぞ、初田くん」
医大の先輩後輩にあたる二人。卒業から十年以上経った今でも、初斗は白兎に頭が上がらない。
アリスは小ぶりのおにぎりを食べながら、振り回される初斗を見やる。
「初田先生でも苦手な相手がいるんだ」
「白兎さんはすごく真面目な先生みたいなんだけどね、酒が入るとああなるの」
「哀れ……」
初斗をからかうのに飽きた白兎が、今度は虎門という青年に絡み出した。
「知り合いにいい女性がいるから紹介してやろう」なんて言っていて、虎門は苦笑いしながら後ずさりしている。
「店長、アリス。これ、俺が作ったんだ。食べてみて」
「コウキがつくったおだんご、おいしいよ!」
コウキと、コウキの友達である少年が、フルーツピックに刺した白玉団子を持ってきた。
少年はたまにお姉さんらしい女性とワンダーウォーカーに来ていたが、どうやらお姉さんが患者らしい。
お姉さんはいま、女性陣の輪の中で好きなファッションの話に花を咲かせている。
「それじゃあ一ついただくわ」
「あたしも」
お団子は一口で食べやすいサイズで、少々いびつだけど、ほどよい甘みと弾力でとてもおいしい。
「おいしいわね。あんた才能あるじゃない」
「へへへ、先生もそう言ってくれたんだ。俺、この冬に調理師の資格を取れる高校を受験するんだ」
「受かるといいわね」
コウキはなにか事情があって高校に行っていない。歩も高校をやめたくちなので、詳しく聞くことはしなかった。
お茶会は③まであります(`・ω・´)





