表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/74

歩の帰国、おでんでお出迎え②

 一時になる少し前に、歩は帰ってきた。大きなトランクを引いて店の扉を開ける。


「歩さん、おかえりなさい!」

「アリスちゃん、ただいま。お店を守ってくれてありがとうね」


 二週間会わなかっただけなのに、アリスはなんだか泣きそうだった。

 親と何ヶ月も会っていないのはさみしくもなんともないのに、歩の顔を見ることができてこんなにも嬉しい。

 歩はゆっくりとアリスのところに歩いてきて、頭をなでる。


「戻ってくる道すがら、初斗から聞いたわ。すごくがんばってくれていたって。アリスちゃんがとっても頼もしくて、アタシも鼻が高いわ」

「そんな。あたしは歩さんが教えてくれたとおりにやっていただけです」

「謙遜する必要なんてないわよ。これはお礼。気に入ってもらえるかしら」


 すぐに渡せるように持っていたらしい。肩掛け鞄から箱を出して、アリスに手渡す。

 手のひらよりやや大きめで平たい箱。箱からお香のような香りがする。

 上蓋を開けると、真っ白い石が数珠つなぎになっているブレスレットが入っていた。


「きれい……。つけてみていいですか」

「もちろんよ。アリスちゃんのために買ってきたんだから」


 アリスの手首にしっくりとなじむ。アオザイの青と真っ白な石、見た目にも相性がいい。


北投石(ほくとうせき)っていってね。免疫力を高める効果や、自然治癒力が上がる効果、冷え性の改善とか体にいい効果がたくさんあるのよ」

「そんないい物を。ありがとうございます。大切に使いますね」


 アリスの体を気遣って選んでくれた物だと思うと、ありがたさがひとしおだ。

 アクセサリーをもらうのも人生初で、なんだかワクワクする。


「さ、お昼にしましょ。まだ食べていないでしょう」

「はい、歩さんが帰ってきたら一緒に食べようと思っていたので」


 キッチンに移動して、アリスは鍋の蓋を開ける。


「先生が、歩さんは毎回帰国すると日本食を食べたがるって言ってたから、おでんにしてみたんだ」

「あらー、ありがと! 気が利くわねえ。あたしおでん大好きなのよ」


 大根にちくわ、さつまあげ、結び白滝、ゆで卵。歩がどんな具を好むかわからなかったから、シンプルなラインナップにしてみた。

 店を開ける前に煮込んでおいたので、温め直すだけでいい。

 器のふちにカラシを塗って、いただく。


「んー、おいしいわね。ちゃんと皮むきと切り込みもしてあるし、凄腕ねえ」

「ネルからレシピ本を借りたんだ。煮込むだけだと思っていたら、下ごしらえでやることが多くてびっくりしちゃった」

「そうなのよね。自分一人だと、なにかとめんどうでコンビニおでんになっちゃいがちなの。やっぱりおうちのおでんは格別ね」


 大根はおでんに使う場合、皮がついたままだとおいしくないから、きれいにむく。輪切りにして十字の切れ込みを入れた。レシピ本にはかつらむきなんて書いてあったけれど、アリスはそこまで包丁の腕に自信がなかったのでピーラーを活用した。

 負けた気がして悔しいから、いつかかつらむきにリベンジしようとひっそり思っている。


「お口に合ってよかったです。台湾はどうでしたか」

「すごく良かったわ。あのね、まず最初に訪問したところは……」



 アリスは歩の旅話をきいて笑う。歩もアリスが笑顔で聞いてくれるから、いろんなことを話したくなる。

 お昼だけじゃ足りなくて、お店の仕事に戻ってからもたくさん話をした。


「いいなあ。楽しそう。あたしもいつか行ってみたい」

「そうね、そのときはアタシが案内してあげましょうか。せっかく行くなら、屋台グルメを堪能しないと」

「あはは。もう少し食べられるものが増えてからですね。がんばります」


 単なる口約束でなく、いずれ本当に行ってみたい。アリスはちゃんと治療を頑張ろうと決意を新たにした。


おでんは好きですか(/ ・ω・)/にゃー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] おでん!! 私も好きです( ´∀` ) でもって治療……頑張んなきゃなぁアリスさん( ´∀` )
[良い点] おでん好きです~~にゃーーー! ブレスレットの石の意味を知って、歩さんの気遣いが分かります~。 いつか沢山食べれるものが増えたアリスと旅に行けるといいですね(#^^#)
2023/08/01 22:50 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ