第三話 ふたりで作る、味噌豆乳うどん①
翌日の昼下がり。
アリスが入荷したばかりの水タバコフレーバーを並べていると、猫背の老人が入ってきた。
「おうい、歩さんや。いつものたのむ」
「いらっしゃいませ。あの、いつものって?」
おじいさんはアリスを見て、丸眼鏡をくいと押し上げる。
「おやおやおやおや……初めて見る顔じゃのう。歩さんに妹さんなんておったんかい」
「いえ、あたしはただの従業員。数日前からお世話になっているアリスです」
アリスはワンダーウォーカーの商品であるアオザイを着ていて、胸元には紐付き名札をさげている。
名札を見せると、おじいさんはアリスに手のひらを出す。
「そうかい、アリスちゃんていうのかい。いつものたのむよ」
「いや、だから、いつものって? いくらおじいちゃんが常連でもね、あたしとは今日初めて会ったでしょう。なにを買いたいのか、言ってくれないとわからないよ」
「あんたが手に持っているそれだよ」
「これ?」
それ、というのは、今の今までアリスが並べていた水タバコのフレーバーだ。
スイカのイラストがついている。
このメーカーのものは果物で作られたノンニコチン&ノンタールだから、体に害がなくて人気なのだと歩から教わった。
「そうさね。ワンダーウォーカーのしいしゃは、わしの一番の楽しみなんだ」
なぜかスイカフレーバーだけ他のフレーバーの三倍くらい数があるから不思議に思っていたら、このおじいさんが定期的に購入しているかららしい。
レジを売っていると、店の奥で作業していた歩が顔を出した。
「あら蜻一おじいちゃん。いらっしゃい。今日もシーシャを買いに来たのね」
「おうともさ」
会計を済ませてすぐ、蜻一はワンダーウォーカーの斜向かいにあるペットショップに向かった。
ペットショップの店先にはキノコを模した椅子とテーブルが置いてあり、ほどよく日陰になっている。
慣れた手つきで水タバコの本体をセッティングして、さっそく吸い始めた。
「あのおじいちゃん、ご近所さんだったんだ」
「そうよ-。あたしがここで店を始めたときからずっとお世話になっているのよ」
「それって何年前ですか?」
「四年前。それまではいろんな国を渡って、現地でバイトしながら暮らしていたの。いつかは自分の店を持ちたくて。で、初斗に「クリニックの向かいに空き店舗があるからどう?」って誘われて、この店を開いたの」
シーシャフレーバーはフルーツ系スパイス系色々あるので、お好みのを探してみてくださいませ〜。