ご招待、初田さんちのまかないごはん。肉じゃがとおにぎり②
昼になり、休憩の札を下げて初田家に向かった。
住居部の玄関から訪問すると、ネルが出迎えてくれる。
「いらっしゃいアリスさん。もうすぐできるからあがって」
「おじゃまします」
ダイニングキッチンに入ると、エプロン姿の初斗が会釈する。
「アリスさん座って。いま仕上げをするので」
「先生が作ったの? ていうか先生って料理できたの?」
「ああ、わたし、料理できないと思われていたんですね」
アリスの父は料理をしない人だったので、アリスの中では料理をする男性の方が珍しい。歩が料理できるのはまあ意外ではないとしても、初斗の方は意外だった。
「にいさんの料理はおいしいんだよ。私、高校の時は全然料理できなくて、にいさんに作ってもらっていたから」
「意外」
「練習したから、今はちゃんと料理できるようになったよ」
お弁当箱につめて、いつも歩と来ている公園の広場にシートを広げた。
おにぎりと肉じゃが、紅茶という組み合わせはちょっと不思議。だけど初田さんちではこれが普通だ。
「わたしの料理が口に合うか分かりませんが、どうぞ、アリスさん。肉じゃがです」
「おにぎりもどうぞ」
「あ、ありがとう。いただきます」
じゃがいもは形をきちんと保っているのに、箸で押せばほろりとくずれる。ほどよい味で、かみしめればあまじょっぱさが口の中に広がる。薄切りの牛肉にもしっかり味がしみていて、ごはんによく合う。
例えるならお袋の味を体現したような、そんな優しい味だ。
「おあじのほどは?」
向かいの席に座るネルに聞かれ、アリスは素直に答える。
「すごくおいしい。あたしもこんな風に作れるようになりたいな」
「それはよかった。これはおばあちゃんから母さんに受け継がれてきた、初田家代々の味つけなんですよ」
初斗は顔をほころばせ、自分も肉じゃがを口にする。初斗の母もきっと、息子が味を受け継いでくれて嬉しいだろう。
いつかは初田の子も、この味を受け継ぐんだろうと思える。
「そうなんだ。……うちにもそんな味があったのかな」
実家にいた頃、アリスは長い間食事をとらなくなっていたので、母の料理をまともに味わった記憶が薄い。
冷凍食品もいくらかあっただろうけれど、たぶん作ってくれていた。
もう実家のご飯を食べる機会はこないけれど、これからは誰かが作ってくれるものの味を忘れずにいようと、アリスはひっそり思った。
肉じゃがは家庭によって入れるものが違って良いですよね(*´―`*)





