第十九話 アリスなりの気遣い。蒸しどりサラダと冷や汁①
東京から戻って十日。ワンダーウォーカーは通常通り営業をしていた。
歩も初斗も追っ手がつくようなこともなく、無事にすごせている。
そこだけが幸いだ。
今日が番組の放送当日。
報道番組に出るという作戦を提案した身として、うまくいってくれないと申し訳ない。
午後七時からの番組だから、今から気をもんだってどうしようもないことはわかっている。わかっているけれど、落ち着かない。
ホームページのおすすめ商品ブログを書いていても、何度も手が止まってしまう。
カーソルはずっと二行目の頭で点滅をしている。そんな歩を心配して、アリスが声をかけてきた。
「歩さん、今日は上の空ですね。やっぱり気になりますか」
「……そうね。集中できないんじゃパソコンに向かっていても仕方ないから、そろそろお昼にしましょうか」
「今日はあたしが一人で作ってみていいですか? ネルからレシピ本を借りたんで、試してみたいんです」
「あらうれしい。任せていいの?」
「はい!」
歩はノートパソコンを待機モードにして閉じた。
アリスは自分用の割烹着に袖を通して、髪を結び直し気合いを入れる。
レシピ本をスタンドに立てて何度も確認する。
「歩さんは座ってお茶飲んでてください。えーと、手順1は……」
鍋にお湯を煮立てて塩を入れ、ササミをゆでる。まな板を出して野菜室を開けてところで、アリスの手が止まった。そのまま数秒停止する。
「なに、アリスちゃん。何か材料が足りなかった?」
「なんでわかるんですか」
「顔に出てるわよ。買ってくるからほかの作業を先に進めちゃいなさいな」
「で、でも。歩さんには休んでいてほしかったのに」
「あらま。おじいちゃんじゃないんだから、買い物くらい行けるわ」
その心配りだけで十分に歩は助かっている。
財布とお買い物袋だけ持って近所の八百屋に行った。
ありがとうございます(。・ω・)ノ゛はぃ!
暑いので夏らしいメニューです





