時間の長さより、気持ちが大事②
アップする話を間違えて十話の②が抜けていたので、あげなおします
ご迷惑おかけしましたm(_ _)m
「九年も一緒にいるふたりに比べたら、あたしはまだまだだな……」
「時間の長さなんて関係ないと思うな。だって、歩さんとも知り合って九年くらい経つけど、アリスさんが働くようになってからの歩さんが一番楽しそうに見えるもの。それまでが退屈そうだったってわけじゃなく、より楽しそうっていうのかな?」
アリスの記憶にある限り、歩はいつも優しく笑っている。
初斗といるときは少年のような顔をするときもあるけれど、だいたい頼れる大人の姿だ。
ふと、仕事の合間に歩が話してくれたことを思い出す。
「アメリカに行ったときモルフォチョウを見たの。バタフライガーデンってところがあってね。ほら、そのときの写真がこれ。羽根を閉じているときは目玉みたいな模様なんだけど、飛んでいるときはこのきれいなブルーが見えるのよ」
空飛ぶ宝石と異名を持つ蝶。写真で見るだけでもすごくきれいだったから、本物はもっときれいなんだろうなと感動した。
棚に並ぶガラス細工の中に、モルフォチョウを模したバレッタがあった。
アリスは惹かれるように手を伸ばす。角度を変えると店内の照明を受けてステンドグラスのようにきらめくう。
「これにする」
アリスは即決で蝶のバレッタを買い、贈答用に包装してもらった。
「初田先生とネルにもお礼をしたいんだけど」
「お礼って、私とにいさんは医者とクリニックのスタッフだもの。患者さんのケアをするのはとうぜんだよー」
「あたしがしたいからそうするの。今日、道案内してくれたことも含めて。受け取ってくれたらそれでいいから」
遠慮するネルに、アリスは茶葉のセットを買って渡す。初斗もネルも紅茶党だから。
ネルは照れ笑いしながら、紅茶ショップの袋を受け取った。
「……えへへ。ありがとう。それじゃ、いただきます。アリスさん、なんだか歩さんみたいなことを言うんだね」
「なにが?」
「歩さんもね。「アタシが勝手にしていることだから、悪いなんて思わず受け取りなさい」ってよく言うから」
知らず知らずのうちに、歩の行動パターンが移ってきているらしい。
アリスはなんだか恥ずかしくなって、視線をそらす。
それを見てネルはクスクス笑った。
次は十一話の①です





