第六話 ささくれたときには、さっぱりオムレツ①
今日アリスは通院のためにお休み。
歩は久しぶりに一人で店を切り盛りしていた。
平日でも客の入りは上々。昼までひっきりなしにレジを打つような状況だった。
落ち着いたところで空いた棚に商品を補充する。
「アリスちゃんのありがたみがよく分かるわね」
さっき蜻一が来たが、アリスが休みだと知ると「明日また来る」なんて言い出すくらいだった。
アリスに会いたくて再来店してくれるなんて、アリスが知ったらひっくり返りそうだ。
「歩さん、こんにちは」
そろそろ昼休憩にしようと思っていたら、アリスが入ってきた。右手に調剤薬局の袋をさげている。
「あらアリスちゃん。どうしたの。おやすみなのに」
「通院はもう終わったんです。ただ、その、お店はだいじょうぶかなって……気になって」
「心配して見にきてくれたの? ありがとね」
アリスは口をもごもごさせて、耳まで真っ赤。あまりお礼を言われなれていないのか、わかりやすいくらい照れている。
「そろそろお昼にしようと思っていたの。アリスちゃん、食べていきなさいな」
「え、そんなつもりで来たわけじゃ」
「まあまあ。さっき蜻一おじいちゃんが来たんだけどね、アリスちゃんがいないのは寂しいからまた来るって」
「えええっ? あたしなんか何回も会いに来るような価値なんて」
こんな風に、アリスはよく「あたしなんか」と自分を下げるようなことを言う。それを聞くたび、歩は胸が締め付けられる思いだ。親と仲が良くないという事と関係していると予想できた。
「あたしなんか、なんて言わないでよ。アリスちゃんのこと気に入ってるって証拠なんだから自信持って」
「ううう……だって、ほんとうになんの取り柄もないから」
戸惑うアリスの背中を押して、歩は昼食の準備に入る。
アリス用に購入した前掛けタイプのエプロンを渡すと、アリスは根負けしてエプロンをつける。
「……今日は、何を作るんです」
「オムレツにしましょう。たまごを三個溶いてくれる? アタシは中に入れる具を刻むから」
「わかった」
本日、後半も投稿します
今日のメニューはオムレツですー!





