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異次元世界征服〜ユグドラシルと五つの世界〜  作者: 鶴山こなん
第一章  全ての始まり 『現代編』
28/29

〜第23〜 命の在処

 あれ‥‥?

 私の体が見える。


 私の視界は、スローモーションのようにゆっくりとした世界を映している。私の体は糸が切れた様に地面に仰向けで倒れ、その首から先は無い。兄の方はと言うと、その表情は無邪気で歯を見せ歓声をあげながら、トドメを刺そうと私の心臓目掛けて刃物を突き刺そうとしている。


「ははは!やったぞ!さぁお前のコアはここか!?」


 ‥‥そこじゃない。


「くそ!ならココか!?」


 苛立たしそうに胴体から首に視線を移した兄は、私の側までくると何の躊躇もなくこの額に刃を突き刺した。


 ‥‥ここでもないよ。


「な、ど、どう言うことだ??」


 さぁ大変。


 魔人の急所であるコアがある筈の膵臓、心臓、脳の三箇所を刺したのにも関わらず、問題のコアは何処にもありません。これに兄は大混乱。私を殺せると喜び上がりきっていた口角はみるみるうちに下がっていく。昂っていた感情を容赦無く叩き落とされた兄は、真っ青な顔で冷や汗を流しながら悟った。


 今この場で私を殺すのは不可能である、と。


 コアを壊さなければ、本当の意味で魔人を殺す事はできない。魔人の体内には必ず三箇所の何処かにコアが生成される。勿論、私の体にも心臓にコアが入っていた。しかし、よく考えれば『壊れてさえいなければ』死ぬ事は無いのだ。


 兄は私から目を離すと必死に周囲を見回し始めた。見つかるわけもない。大パニックの兄はもう一度私の元に駆け寄ってくると、縋るように両手で私の頭を持ち上げ、目を見て叫んだ。


「何処だ‥‥お前の命は何処だぁあっ!?」

「言うわけないだろ」


 私が準備した保険、それは最大の弱点であるコアを体内から取り出し、コアを持たせた鳶君を安全な場所へ逃す事。コアさえ無事なら体からどんなに離れた所にあっても死ぬことはない。私の身体をどれだけ傷付けようと、その行動全てが無意味になるのだ。これ以上確実な方法は無いだろう。


「うがぁっ‥‥!」


 兄は首の無い私の体がすぐ後ろまで来ている事に気付かず、私の漆黒の右手は兄の背後から心臓を握り潰した。心臓にコアは無し。胸を貫かれた兄はあまりの激痛にその場に倒れ、胸を押さえて呻き声を上げる。兄が力を抜いた事で「台風(オクルス)の目(・テュポーニス)」も散って消えた。


「うあ”ぁ‥‥」


 私は自分の頭を持ち上げると、首にくっつけ元に戻す。首を斬っても死なないのは分かっているのだから、油断して体から目を離してはいけない。


「なぜだ‥‥」

「ん?」

「なぜ、お前はコアが、無いのに、動けるん‥‥だ」

「無くはないよ、今ここに無いだけ」


 息も絶え絶えに、兄は言葉を搾り出しながらゆっくりと地面に手を付いた。


「そん、な馬鹿な、魔人の体には、必ず何処かに‥‥!」

「うん、そうだね。だから出した。痛みを感じないスキルもあったし」


 それを聞いた兄は目を見張る。


「まさか、自分のコアを、抉り取ったのか!?そ、そんな事が、出来るなんて‥‥狂っている!」

「どの口が言う」


 こういう無駄話をしている間にも兄は少しずつ回復し、立ちあがろうと膝を付いている。もう良い、遺言を聞く気も失せた。さっきの準備も出来たので、そろそろ終わりにしよう。そう思うと同時、私の脳裏にとある文字が浮かび上がる。先程戦闘中に閃いた作戦に、スピリットさんが相応しい技名をつけてくれたのだ。


「さよなら‥‥『破片(フラグメントゥム)発芽(ゲルミナティオ)』」

「杏っ‥‥!」


 私は指をパチンと鳴らした。指を鳴らしたのを合図に、兄の体内に入った私の純力の粉末は脳、心臓、膵臓の三箇所で固まり、それは鋭い結晶となってそれぞれの臓器を貫き、体外まで突き破った。


 そして私の耳には、兄の額からコアが割れる微かな音が聞こえた。何とか膝を突くところまで上がっていた兄の体は糸が切れた様に地に伏し、血の海に沈む。赤く光っていた兄の右目も濁り、二度とその目に光を宿す事は無い。


 ついに数年に渡る長い魔人同士の闘いは、この瞬間をもって終わりを告げたのである。





 戦闘中は兄の純力によって回復の阻害を受けていたが、兄が死亡したと共に毒となって身体を蝕んでいた彼の毒素はスッと消え去り、私の身体はあっという間に回復した。


「‥‥‥ちゃん!」


 あぁ、そうだ。

 そういえば居たね、まだあの子が。


 実は兄との戦闘中もずっと聞こえていたのだ。戦線離脱して壁に張り付けられていた女の叫び声が。まだ死んでいなかったとは、ゴキブリ並みの生命力だ。


 私は壁に張り付けられている杏奈の左肩に刺さっている出刃包丁に向かって指を刺すと、フッと横に振る。すると包丁は杏奈の左肩から抜け、ブーメランのように弧を描いて私の手に戻って来た。あの包丁は私の純力で作った物なので、当然空中に浮かせたり操作する事もできる。


「きゃっ」


 肩に刺さっていた包丁が突然抜けたことに驚いた杏奈は、支えを失い地面に落下。


 さてと‥‥。


 壁にもたれ掛かり、顔色悪く傷口を抑えながら苦しそうに息をする杏奈の側まで近づいた私は、彼女を見下ろしながら声を掛けた。


「大事に守ってくれていたお兄さんは死んだけど、あなたはどうする?」


 勿論生かすと言う選択肢は無い。兄の援護も力も無く、ただの人間に戻った杏奈にほぼ完全回復している魔人の私を何とかできるとは思えない。だが彼女は兄の手によって眷属にされ、その挙句悪魔となって暴走していた。兄が死亡した今、頭の冷えた彼女は一体何を言うのだろうか?


「どうして、どうして私たちの邪魔をするの!‥‥自由まで後ちょっとだったのに!」


 口から血を飛ばし、目に涙を溜めながら彼女は声を張り上げる。


「私達には夢があった。異世界に行って、自分たちの力だけで楽しく生きる。毎日笑えるような、そんな幸せな日々を過ごす、ただそれだけだったのに!」


 それだけだと‥‥?


「ふざけんな、それだけじゃ無いでしょ?さっき異世界の生き物をこっちに連れて来て売るとか言ってたろ。そんな事したらこの世界にどんな影響が出るのか、最悪どれだけの人が死ぬか、少し考えれば分かる筈」

「こんな世界壊れてしまえば良いのよ!こんな腐りきった世界なんて‥‥まっさらにしてから作り変える事くらい、お兄ちゃんなら出来たわ!」


 そう叫び体を力ませた瞬間、杏奈の首から頬に掛けてビシッとひびが走った。兄の眷属にされていた彼女の体は、彼の死亡に伴い崩壊を始めたのだ。杏奈は喉がヒリつくのも気に留めず、私にガラスの破片を投げ付ける。それは私の頬に当たるが傷つけるには至らない。


「どうしてこうなるのよ、私は‥‥死にたくない」

「それをお前が望む資格はない。お前らが殺したお母さんは、お父さんが死んでから女でひとつで私をここまで育ててくれた。あんな酷い死に方をして良い人じゃなかった」


 自分の体が崩れている事にようやく気付いた杏奈は、ヒビだらけの手を見て沈痛に顔を歪める。だが今更後悔しても遅い。時間が巻き戻ることはないのだから。


「そして、私はそんなお母さんに親孝行が出来るところだったんだ。ところが、それをする前にお母さんは殺された。‥‥お前らに」

「い‥‥イヤだ、ヤダぁあっ!」


 小さい頃、私はこの子がリコーダーを教えてくれたことを覚えている。あの時私に向けてくれた優しさは一体どこに消えてしまったのか。考えたところで全く意味のない事なのは分かっている‥‥ただただ、残念だ。


 そう思う私は、彼女が散りとなって崩れ死ぬ所を静かに見届けた。


「‥‥‥終わった」


 命を狙われる日々、近くで魔人が暴れて影に隠れる日々、死ぬかも知れないと肝を冷やす日々。それもこれも全て、今この瞬間に幕を閉じたのだ。もうこの世界に生き残っている魔人は私ただ一人。もはや魔人の私を殺せる者など存在しない。魔人を取り巻く全ての事から解放された私は、全身の力を抜いて脱力し、その場にへたり込んだ。


「長かった‥‥本当に」

(遂に成し遂げられたのですね。本当に、お疲れ様でございます)


 スピリットさんも力を抜いたゆったりとした声で労ってくれた。しかし、私はその労いの言葉を素直に受け取ることができなかった。私の精神を支えていた最も大事な主柱。それが消えた今、私には全くと言って良いほど活力が湧かない。これから一体どうしたら良いのか。


 そんな風に項垂れていると、何処からか甲高いサイレンの音が聞こえて来た。どうやらこの騒ぎを聞きつけた一般人が通報でもしたのだろう。見つかったら面倒な事になりそうなので、私は「認識阻害」をオンにすると静かにこの場から飛び去った。


 何とか無事に今滞在しているホテルに帰還。飛んでいる途中で凄まじい眠気と倦怠感が押し寄せて来たので、危うく墜落しそうだった。おそらく毎度お馴染み、敵を倒した際に現れる進化前の症状だろう。


 私は部屋の扉の鍵を閉めるや否や、倒れるように寝床に横になる。回復して傷や痛みは消えても、過去最大と言って良いレベルの激しい戦闘を終えた今の私の体には、かなりの疲労が溜まっている。戦闘でダメになった服を着替える暇もなく、私の意識は闇へと落ちていった。





 夢を見た。


 何故か私はピアノを弾いていて、少し視線を上げるとそこにはニコニコと楽しそうに私を見つめながらヴァイオリンを弾く、小さい杏奈。


 コレは‥‥倒した兄の記憶か。


 兄とその妹の杏奈はずっと小さい頃からとても仲が良かったらしい。視界に映る光景を見るに、財閥の一族というだけあってとても裕福な環境に見える。目の前にあるピアノなんて学校に置いてあるものより高そうだ。そしてようやく音楽の練習が終わったかと思うと、今度は流れる様な手つきで目の前の机に沢山の教材が並べられていく。


 この視点は兄のものなので、この難しくて分厚い問題集も兄はサラサラ解き進めていくが、兄の記憶を見始めてからずっと何かしらの勉学に励んでいる。それは隣にいる杏奈も同様。


 霧が掛かって場面は変わる。


 目を開くと目の前には威厳を感じさせる男性と、上品で色気のある女性がいた。何となく杏奈と兄に雰囲気が似ているので、二人の両親なのだろう。そう理解したところで兄は一枚の紙を男性にスッと手渡した。チラッと見えたがコレは算数のテストだ。


 ここで私は、問題用紙を見て初めて兄の名が『(あきら)』であると知った。


 兄から解答用紙を受け取った男性はサラリと目を通すと、満足そうに頷いて隣に座っている女性に渡した。良い成績だったらしい。それに続いて男性が杏奈に視線を向けると、どこか顔色の悪い彼女は恐る恐る紙を男性に手渡す。しかし、先ほどの兄の時と打って変わって、男性はその眉間に深く皺を寄せていく。あまり良い点数ではなかったらしい。


 すると突如男性は立ち上がると、杏奈に詰め寄り手を挙げた。


「なぜこんな簡単な問題も解けないんだ!」

「ご、ごめんなさいお父様っ。次は必ずッ」


 パシン!

 あっ‥‥。


「父様!?」


 兄は動揺した声を上げ、体の小さい杏奈は大男の平手打ちを受けて床を転がる。杏奈は叩かれた頬を抑えて痛そうにその場で蹲り、それを見た兄はすぐさま妹のそばに駆け寄ると、キッと父親を睨み付けた。


「父様!これは流石に酷すぎます!杏奈はまだ五歳ですよ!?」

「もう五歳なんだ。こんな簡単な問題すらできない娘など、叩かれても仕方がないだろう。来年には学校にも通わせなければならなくなる。銀城の一族としてこんな成績では恥ずかしくて何処にも出せんよ」

「で、でも!」


 当時十歳の兄、輝は、自分より体の大きな男を前にして必死に妹を庇う、そんな日々を過ごしていたのだ。


 霧が掛かって場面は変わる。


「ぐす、うぅ‥‥」

「大丈夫だ杏奈、僕がついてるからな」


 場所は変わってここは杏奈の部屋。ぬいぐるみや白いレースのカーテンなど、如何にも女の子らしい部屋に二人はいた。


「う、ごめんねぇ、お兄ちゃん」

「杏奈が謝ることないさ、父様が意地悪なんだ」


 二人はベットに並んで座り、杏奈は叩かれて赤く腫れた頬を冷やしながら兄に寄りかかる。そんな妹に快く寄りかからせている兄は、先程父親に見せていた杏奈の算数のテストを見ていた。


「私、頭悪いのかも‥‥」

「そんな事ないよ、ほら、ここは合ってるじゃないか」

「でもぉ‥‥」


 へぇ、杏奈の小さい頃のテストか。

 どれどれ‥‥は、八十八点!?

 嘘だろ、高くない‥‥?

 私の時は余裕で二十点とってたぞ!?


 驚愕の点数に私は目を見張った。

 見たところこのテストは本来小学四年生で習う内容で、まだ小学校にも入学していない五歳児にやらせるにはあまりにも難しすぎる。この年でこれだけ出来るとは、私は素直にこの子を天才だと思った。


 良い点数なのに叩かれるなんて‥‥。


 自由奔放に育てられて来た私には想像も出来ない光景だった。なるほど。こんな幼少期から親の重圧をかけられ続ければ、両親を殺して自由になりたいとも思い至るかも知れない。私は彼らが語っていた事の意味を一つ理解した。


 霧が掛かる。


 時は経過して、ついにその時が来る。兄は学校の花壇に埋まっていた無色透明な宝石の様な物体に触れ、魔人となった。そこからの兄は思ったよりも活発に動き始めた。学校のある日は私同様いつも通り大人しく過ごし、夜中皆が寝静まる頃に動き始める。


 私と違って積極的に他の魔人に戦闘を仕掛けていく彼は楽しそうで、相手が日頃のストレスを吐き出すためのサンドバックの様に使われていた。


 ‥‥天悪戦争の時だね。

 もはや相手の天使さんが可哀想な事になってるよ。


 魔人になってすぐにこれだ、私以上に戦い慣れていた事にも納得がいく。昼はイケメンの優等生で物凄く優しそうな顔をしているのに、夜になると鬼の様に豹変。何という事でしょう、ギャップが凄すぎる。


 霧が掛かる。


 彼は意外と器用だったようで、夜中に抜け出している事がバレずに約一年の時間が経過した。この時兄は十六歳で、妹の杏奈は十二歳。


 そんなとある夜、兄と杏奈で音楽のレッスンを受けている時、兄が妹に異変を感じた。我が愛する妹に何かあったに違いない。そう確信した兄は就寝前に妹の様子を伺いに彼女の部屋に立ち寄った。兄が部屋の扉を軽くノック。少し間を置いて杏奈が扉を開けた。


 杏奈の顔はいつにも増して暗い。


「どうしたんだ?今日の杏奈はいつにも増してイライラしているじゃないか。さっきのヴァイオリンのレッスンも荒々しかったし、学校で何かあったのか?」


 兄は思い出した。以前にもこういう事が一度だけあった。それは杏奈が小学四年生の頃、彼女は日頃家でたまったストレスを学校で晴らしているらしいのだが、その時に学校で怖い目に遭った、と言って震えて帰って来た時があった。その時は確か‥‥優蘭の癖に生意気な!と、しきりに言っていた気がする。この様子だと恐らく学校で何かあったのだろう。


 兄がその様なことを考え問うと、予想は的中していたらしく杏奈は兄の顔を見るや否や泣き出してしまった。


「う、お兄ちゃん、グスッ」

「お、落ち着いて、座って落ち着いてから話を聞くよ、温かいお茶も用意させよう。な?」


 こう泣き出してしまっては落ち着いて話もできない。兄は温かいお茶をメイドに準備してもらうと、杏奈をベットに座らせ、彼女の頭を撫でながらお茶で体を温めさせた。


 ‥‥さすが杏奈のお兄さん。

 妹の扱いに慣れてらっしゃる。


 杏奈が落ち着いたのを確認した兄が改めて口を開く。


「学校で何かあったんだな、どうした?いつもの様に学校でストレス発散出来たんじゃないのか?」


 すると、お茶を飲んでホッと一息ついた杏奈は話し始める。内容は学校で優蘭に威圧されて怖かった、という感じだ。


「優蘭を怖いと思ったのは過去に一度あったけれど、あの時以来ずっとあの子は大人しくしていた。それなのに、いきなりあんな風に変わるなんて、絶対普通じゃないわっ!」


 ‥‥四年生の頃?

 あ、私が椅子でクラスメイトをぶん殴った時の事かな?


 一通り話を聞いて、兄はフムと考えた。

 思えば、杏奈が今ちょっかいをかけている相手は優蘭という名のクラスメイトで、小学校の頃からずっと杏奈からのいじめを受け続けている。杏奈から長い間ちょっかいをかけられているというのに、不登校になったりせずに耐え続けている、というのは中々に辛いはず。


「それって過去にあった彼女の怒り爆発が再来しただけの話じゃないのか?あの頃からだいぶ時間も空いているし、また爆発してもおかしくは無いだろう?」


 これを聞いた杏奈は一度視線を落とした。しかし兄の答えは間違っていたのか、杏奈は首を横に振って震えた声を発した。


「優蘭が私を見た時、瞳が水色に変わったの」

「なんだって?」

「目の色が変わって睨まれた瞬間、怖くなって、苦しくなって、それが記憶に焼き付いて‥‥」


 あ、あの時瞳の色が変わったことに気付いてたのか‥‥。

 

 兄は質問を返した。


「その子は海外の子なのか?白人とかであれば瞳の色が水色だって珍しくはない」

「あの子は日本人よ、それなのに目が獣みたいに光ったりするかしら?」


 それを聞いて兄は杏奈の状況を察して表情を曇らせた。杏奈が今近寄っている相手は、兄と同じ魔人である可能性が高い。もし彼女が天使であれば、イジメという罪を繰り返す杏奈は、正義の名の下に!と言いながら真っ先に殺されているはず。反対にもし彼女が悪魔であっても、彼女にとって不愉快な存在である杏奈は殺される。


 しかし、いま杏奈はこうして五体満足な状態でここにいる。杏奈が思い出すだけで震えるこの様子を見るに、軽く威圧でも受けたのだろう。水色の瞳ならば、魔人としてはまだ雑魚。しかしそんな雑魚の威圧でも人間には十分な効果がある。


 ‥‥様々な遠ざけ方を選べる魔人が、殺すでもなく、傷付けるでもなく、わざわざ威圧を選んだ。このことから考えると優蘭()は、第三者である可能性が極めて高い。

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