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終身的ベッドサイド3

「ではでは、お言葉に甘える形で、ご親切に甘えて、ご厚意に甘えて、なす事について、説明させていただきます」

広い空間の、一室。

湖側と、正面側の一室に大きな違いを挙げるとすれば、サイズ感であろう。

これは簡単なことだが、湖側の方が短い弧を描く様に並んでいるため、加えて、水車のあるため、そちら側は少しばかり小さいのである。


湖側の7部屋。

正面側の6部屋(内訳:5部屋荷物部屋、一部屋女将の部屋)プラス玄関。


入るや否や、それが分かると口を大言えるほど、メジャーの様に目が良いわけではない。

が、入った一つの荷物部屋からは確かに、今まで以上の直感的な解放感が感じられる。


「荷物はそれらの大きなもの、機材、木材、鉄板、色々に至るまで、端材の様なものは出していただけたらと思います」

それと、それと、あれと、これと、と一つずつ、ごったに集められた荷物というか、物でもない、物の破片、部品の色々を指差していく。


「そのまま流用しようと思っているのは、ベットと、タンス。それらは動かさなくて結構です。それ以外は気にしなくても大丈夫ですので、ガッツリと運んでください」


「了解しました」「了解しました」

二人組は一斉に言葉を返す。


「彼女の言っていた、働き者の彼女が言っていた、行っている廃品回収場と言うところまでは、一度一緒に行きます」

「それからは各自の速度で行きましょう」

端的、簡潔に命令を出す姿に、女将の、想像していた女将が上手くハマっていく。

出来る上司ってカンジだ。


その甲斐あって、ことは淡々とすすむ。

部屋の中を、覆い尽くさんとするほどにまで、高く積まれた物の山も、次第次第に小さくなっていく。


大人、男二人。

やはり、二人入ったのは大きかった。

大きすぎるものは、一度小さくバラしてから、運び出していた働き者ギャンブラーに対して、二人がかりで運び出すことが出来るのが一番の戦果。


特に、ボディーガードの力強いの何の、僕としては、ほとんどアシスト的な立ち位置を任されていて、若干働き不足さえ、感じたほどだ。


おかげで、風呂の後だったが、大粒の汗もかかずに済んだ。

風呂後の少々の運動。

温まった関節には、軽い軽い。


約1時間か。

それでも、1時間もかかってしまったが。

ようやくにして、中身のほぼ全てを吐き出し切ることに成功した。


「3人とも、ありがとうございました。特に、男の人、お客さん、お二人さん、本当にありがとうございました」

「後は、掃き掃除や。拭き掃除、諸々のアメニティを揃えたり、準備のそれぞれはこちら側で行います」


「何を言いますか。いえ、それも手伝いますよ!」

言ったのは、ボディーガード。


「いえいえ、流石に、運び仕事をしてもらい、さらに汚れ仕事までしてもらうのはいささかやり過ぎの感があります」

「後は、小さな細々ですから。お気になさらずに。こちらを信じて下さい」

丁重な、低調のお辞儀。


「でもでも、もう一端、女将は休んだ方が良いっすよ。ボロボロっす、ヘトヘトっす。どうせ、終わるのは明日になるんでしょうし、私たちも一時休憩ということにしましょう!」

どうっすか、と働き者。

ナイスアシストというか、よく仕事を見ているからこその、上手な言葉を入れる。

その言葉に、少し女将の顔は綻ぶ。


「ありがとう、カエラさん。そうですね、今日のところはこのへんで終わりにしましょうか」

「では改めて、ありがとうございました。浮向さん、永石さん」

また、丁寧なお辞儀。


「いえ、こちらこそです。明日からはここを有効に使わせていただきます」

ありがとうございます、と鏡写しにこちらもお辞儀を返した。


一端、終了。

そのお開きの時点に到達すると、順に人は帰る。

働き者は働き者らしからず。

「何言ってるんすか。働き者の私は働くために、次働かないんすよ」

ふん?

また、分からないな。


「分からなくて良いっすよ。乙女の全てを理解は出来ないんすよ」

では、さらば!と決めポーズ。

ズバババばっと、単純明快働き者。さっと降壇。


「元気な子ですね、浮向さん。若者の若々しさは自分たちも見習わなくては。いくつになろうと男の子、体を使ってなんぼです」

「ですから、自分も働きに行きますよ。流石に、流石です。何時でも、自由という訳にもいきませんから。依頼人の依頼を受けるのが、自分たちの役割ですから。役割に正しく」

こちらは打って変わって、堂々と、それでいて消え入る様に、スポットライトから外れる。


それではどうしようかな。

薄暗い部屋に二人きり。

しがない僕と、抜け目ない女将

女将からは、離れる切り出しはしにくかろうから、僕から話し始めるか。

僕から最後通告か、いや最後通告では無いか。


「ふふふ…」


「ふふふ、いいね。友情。友情というより、人の情。見てて良かった。すごく良かった」

背後からの声の侵入。

ドア枠にもたれかかるその姿が、廊下のオレンジに象られる。


「やっと、良いタイミングが来たよ。あたしの時代がやってきたよ」

と、暗がりの部屋に逆光の顔は映らない。

だが、こんな登場をするような登場人物。

およそ、この建物の中にいる人物に、新たな真犯人とか追加せん限りは、ある一人。


「小鳥、何の様だ?」

大学生。

すごくすごい大学生。


「そんなに嫌そうな顔しないでよ。すごく気が合うなって人と、なんだかんだあって共同作業で親密さアップの時なのかもしれないけれど。ほんの何行で終わったよ。働き後1時間どうぞだよ」

「それに比べて、あたしはどう?何話かに跨って、出てくる喋りの多いあたし。本当の仲良し、イェーイって感じのあたし達の仲じゃん。何も間に無いじゃん。兄弟姉妹では無いけれど、幼馴染じゃん」

ここぞとばかりに、自分のキャラ立ち位置の特別感をアピールするな。

だからって、特別だからって、特殊だからって、確かに兄弟姉妹では無いが、幼馴染でも無い。一回正しい情報先に入れ込んで、それっぽくしてんじゃねえよ。

それっぽく、技ありやめな。


「もう、照れ屋さんだな。全くもー。あたしがなぜここにきたかも知ってるくせに。知っててアレなんでしょう。知らないフリでもしてやろうと思ってたでしょう?」


「あぁ、幼女のことか?」


「違う!君、京介くん。あたしをロリコンと言うのは構わないけれど、あたしをロリコン扱いするのは辞めて」

タチが悪い。

ちょっと手引いてあげてます感を出しているのが、タチ悪い。


「あたしはロリコンという属性は欲しいけど、ロリコンの煩わしさなんて求めてないの。何も言われず、好きなものを好きと言いたい、そう言う世界で良いでしょ!」

いや、まぁ、最後の一文は救いがあるが、それを庇いきれないほど前文が荒れ過ぎだ。前文で全文、インパクト持っていかれてるよ。

イカれてるよ。


「もう、話を逸らさないで。あたしがロリコンであることと、君が段取り悪いのはみんな知ってることなんだから。話を進めようよ、はい、さっきのところから」

仕切り直しは、この大学生から。

無い襟をピシッとすると、一転さっきの崩したポージングに戻る。


「京介くん、あたしが何でここに来たか知ってるんでしょ?」


「…あぁ、知ってる」

「女将だろ。彼女に用があるんだろ。女将に河童の話を聞くんだろ」


「そう言うことよ」

ピースサイン。

にんまりと小鳥は笑う。


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