To Be Continued①.忍び寄る影
後日談の第一弾です。少しだけ長めなので二分割しています。長すぎると飽きられちゃうかなー的なインスピレーションが発動しましてw
本日中に、と言うかすぐに②を投稿します。
悪役令嬢の活躍はもう少しだけ続きますので、お付き合い頂ければ幸いです。
キョロキョロと周りを見回してみる。
私は緊張していた。そして「はあ」と令嬢らしからぬため息を吐いて廊下で足を止める、ふと右に視線を向けると庭園が目に入った。
私がいる場所は王宮で、視線に映ったものはその庭園、国王陛下はこの場所に王妃のための花壇を作ることになるのだ。その時期は五年後、何故それが私に分かるのかと言えばゲームをプレイしたからと言えばそれまで。
ヒロインが王宮に召し抱えられた時の第一王子ことフランク・ボナパルトは15歳だった。つまり今現時点の彼の年齢を考えるとそうなるのだ。そして私も彼と同い年の10歳、だからこそ一度は婚約者として白羽の矢が立った訳だけど。
今はその役割も解かれて自由の身だ。
ふと足を止めてソッと己の手を胸に当ててみる。
凹むわー。
前世の私よりも明らかにスペックの高いアイシア・ブラトニーに転生した私、本来ならば両手をあげて喜ぶべきなのだが、私は凹んでいた。だって10歳のアイシアは前世の私よりも胸が大きんだもん。
10歳の私が15歳の私よりもスタイルが良いとか嫌がらせですか? 前世の私って神様にこんな嫌がらせをされる程に悪行を働きましたっけ? 私は王宮の廊下で黄昏てしまった。
と言うかアレかな? アイシアの外見もゲームの世界観も西洋風だからそう言うものなのかな? 遺伝レベルでベースが違う、そう言うことなのかな? そう思うと前世で生粋の日本人だった己に同情して涙交じりに思わず呟いてしまった。
「はあ、……欧米か。しょぼんちょ」
「お嬢様? どっ、どうされたのですか!? 涙など流されて、またしてもあのクソ王子に何か不埒なことをされたのですか!?」
そう私が呟くと王宮について来てくれたメイドが血相を変えて私に問いかけてくる。雇い主の娘に対してこれでもかと力一杯に肩を揺すってくるのだ。
実はフランクが私への仕打ちの数々を自らの口で私の父と彼の父親、つまり国王陛下に自白してしまったのだ。彼が言うには「自分なりのケジメ」だそうで、フランクは融通が効かない性格だったのだ。
そしてその話をウチのメイドが聞き耳を立てており、私はこんな風に常に心配をされることになった。それでも一介のメイドが国家の王族に向かって「クソ王子」は無いでしょうに。
まあ、私はアイシアが作り上げた上辺もあってメイド受けはとても良い。フランクの言う通り、本当に裏で聖女と呼ばれていたらしくメイドからは嫌われていない。寧ろとっても可愛がって貰ってます。
いや、表現が間違っているかな?
正確には遊ばれてます。
ブラトニー公爵家のメイドたちは私をアイドルか何かかと勘違いしているようで、とにかくスキンシップを図って来ようとする。入浴すれば全員が私の世話につきっきりになって、就寝となれば私が吐息を立てるまでベッドを取り囲んで凝視してくる。
怖いわ!!
アンタらはストーカーか何かですか!? どうして雇い主の父や母を差し置いて私のお世話に命をかけようとするの!? 朝食も私だけ大盛りにせんで良いわ!! 太っちゃうから止めて下さい!!
と心の中だけで盛大にボヤいてみる。と言うのも父であるブラトニー公爵の教えがあるからで、私はメイドや執事に建前を貫こうとしている訳だ。父は素晴らしい人物でこの国の政治の中枢を一手に担う大人物。
私も本心から尊敬しているし、ゲームの世界でも割と好きなキャラクターだったからその考え方をすんなりと受け止めることが出来た。屋敷の人間全員が父を尊敬しており、真なる忠誠を誓っている。
であれば娘の私も見習おうとしているわけで、私は必死になってメイドたちと距離を置く。それでもメイドらは必死になって抵抗を続けて私に擦り寄ってくるのだ。
こう言う時こそ主人の言うことに従ってよ、とつい本音で愚痴を溢すもメイドから「無給で良いのでお嬢様のお側に!!」とか土下座されたから私は口から霊体的な何かを吐き出しながら本音を押し殺すことにした。
その傍らで父が腕を組んで「ウンウン、ウチにアイシアは可愛いからねー」と言うものだからタチが悪い。
とまあ、これまでの経緯はこれくらいで良いとして、まずは王宮に呼ばれた要件を済ませなくてはと思い、私は顔を上げて目的の場所に視線を戻した。その場所とは謁見の間だ。
つまり私は国王に呼ばれて王宮に来た訳だ。
10歳の少女が国王と顔を合わせる、これはもの凄い事件なのだ。国王はとにかく公務で多忙、そんな中で如何に公爵家の令嬢とて謁見などできる筈はない。更に言えば私は第一王子のフランクとの婚約を破棄したのだから客観的に考えても異例と言える。
当然周囲は驚き、聖女と言う私の上辺もあって一つの噂は走る。
まさか国王は10歳の少女をご子息から寝とって後妻に!? 5歳じゃなくて10歳なのに!?
「アホらし」
「お嬢様、どうなさったのですか?」
私は脳裏に浮かんだ噂話をヤレヤレと言ったジェスチャーをしながら一蹴した。するとそんな私を心配してメイドが心配そうに顔を覗き込んでくる。私は彼女に「なんでも無いわ」と返した。
そんなやり取りをしていると私は謁見の間に到着しており、ドアの前に待機していた騎士によって部屋の中へと招かれた。部屋の中は国王の権威を象徴するような豪華さと煌びやかさで充満しており、私は文字通りに魅入ってしまった。
そして部屋の奥には中年の男性が椅子に腰をかけている。言わずもがな、国王陛下その人だ。フランクの父にしてこの国の最高権力者、私の父とは盟友と言う立場の人が威厳を撒き散らして佇んでいた。
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