終わりに
その後も、異世界ダンジョンと部屋を行ったり来たりする二重生活は続いた。
俺のレベル上げは諦めたものの、ポチがとうとうレベル99に到達してしまったので、ダンジョン探索はあらかたポチに丸投げしてしまった。
俺の役割と言えば、郵送魔法を使ってポチの集めたクリスタルを換金したり、アマゾンで新しい装備を買ってあげたり、装備にスキルを付与してあげたり。
美少女と会えるのはダンジョンの中だけ、あとは普段通りの犬と人の生活。
こんなんじゃなかったよなぁ、と思いながら、ネットを調べてみると、面白い記事を見つけた。
「なになに、ダンジョン・マスターのダンジョン生活術……へー、召喚士って、こんな人がいるのか」
その召喚士の人は、ダンジョンの奥を改装して自宅を作ってしまい、召喚魔法を使って悠々自適の生活を送っているというのである。
ダンジョンの奥を改装して、自宅に……。
俺は、こっちの世界にくるとチワワに戻ってしまうポチを、じーっと見つめて、そして、はたと思いいたった。
「そうだ……アパートの部屋をダンジョン側まで拡張すれば、美少女化したポチと一緒に住めるんじゃないか……!」
まさに夢のような生活。
そのためには、召喚士のスキルを上げる必要がある。
目標到達は、召喚士レベル40か。遠い道のりだ。
「ポチ! 散歩に行くぞ!」
「ふえっ!?」
「散歩だ! 散歩!」
「しゃんぽぉぉぉぉ! いく! いく! しゃんぽ! しゃんぽ! 首輪つけて! つけて! はやく! ふわわわわ! ふわわわわ!(じょろじょろじょろ)」
あまりに興奮しすぎて、貴重なマーキング剤を床にもらしてしまうポチさん。
美少女との生活は、たぶん、理想とは程遠いかもしれないけれど。
俺は、すっかり忘れ去られてホコリをかぶっていた防弾チョッキを身に着け、まだまだ元気に唸るドラゴンキラーを装備し、ポチのリードと散歩グッズをもって、ダンジョン探索へと繰り出したのだった。