その男とある少女の話1
3話目です。まったり読んでください!
雇い主の家の庭の昼下がりの木陰にて、ヴァイジャンは優雅にティー・ブレイクをとっていた。
ヴァイジャンは1人の「家庭教師」にすぎなかった。
家庭教師の「職」に就いた者は大概が金持ちの家に雇われていた。
ヴァンジャンの雇い主はとある豪商の家で、そこの子息を指導していた。
当然、給与として与えられる財は多かった。
子息は家を継ぐために、「商人」になりたがっていた。
しかし、ヴァイジャンは何となくつまらなさを感じていた。憂鬱そうなため息をつく。
「はぁ・・」
その感情は「家庭教師」という「職」についた「才能」をもってしても、理解できないものだった。
誰かが向こうで自分を呼んでいる。自分の教え子である子息は今日18歳となる。
おそらく、彼が就く「職」が伝えられたのだろう。
結果は聞かなくても分かる。「商人」なんて「職」たいしたことないのだから。
そんなふうにして、その家での家庭教師としての役目を終えた。金をたんまり貰い、次に自分を雇うであろう金持ちの元へ行くことにした。
移動中、なぜか引き付けられるように市場に入っていった。ヴァイジャン自身もなぜかわからなかった。
なにか、自分の生活を180度変えてくれるような、そんな何かとの出会いを欲していたのかもしれない。
その市場に息づく人々の生活は自分より遥かに楽しそうに見えた。
その市場を駆け抜けてくる少女が一人、ヴァイジャンにぶつかってきた。
「いった――い!」
一瞬こちらを見て、何かを思いついたようだ。わざとらしい大声で彼女は言う。
「あ、兄さん頼まれたの持ってきたよ!」
最初、彼女が誰にその言葉をかけたのか分からなかったが、彼女を追ってきた人と彼女の持っているもので自分がこの目の前の少女に、はめられたのだと気づいた。
「ああ、ダメだよ、お金も払わずに持ってきたら。」
ヴァイジャンは話を合わせることにした。幸い、お金は持っていた。
少女は話を合わせてくれると思っていなかったのか、驚いた顔でこちらを見ていた。